223:新学期の始まり!

 四月に入り、とうとう僕は高校三年生。

 今年は大学受験なんかもあったりして、今まで以上に忙しい一年になりそうな気がする。


 でも、普段からコツコツやってきたからそこまで大きな心配はしていないけど、模試の結果次第では気合を入れないとダメだよね。

 気を抜かないようにしないと!


 そして僕は、新学期になってクラス替えが行われたので新しい教室へ入ると、そこには二年生の時と同じような顔ぶれが揃っていた。


「今年も裕翔と一緒だね!」

「本当俺ら別のクラスになった事ないよな⋯⋯」

「あはは⋯⋯そうだねぇ」

 裕翔は苦笑しながらそう言うと、僕も同意して一緒に笑った。


「優希くん、今年もよろしくね!」

「今年も⋯⋯一緒、嬉しい」

「やほやほー、今年もよろしくねー」

「あっ、天音さんと花園さん、香月さんも一緒だったんだね!」

 見知った顔が多くて安心した僕は、そのまま席に着くと、先生が丁度教室に入って来た。


 先生が教室に入ってきたのを見たクラスメイト達は即座に自分の席へと座り、それからは教科書の購入などをして今日は解散。


 いざ帰ろうかなーと考えていると、ふと先生に声をかけられた。


「姫村君、ちょっと良いかな?」

「あっ、先生どうしたんですか?」

 声をかけてきたのは僕が先輩と一緒に入っていた部活である文芸部の顧問の先生だった。


「あのね姫村君、もし良かったら今年の文芸部の部長になって貰えないかな?

 なって貰えたら成績なんかにも少し色を付けられるし、悪い話じゃないと思うんだけど⋯⋯」

「あっ、そう言えば去年は遥先輩が部長でしたもんね⋯⋯」

 完全に頭から抜けていたけれど、文芸部の部室を使ってたのが遥先輩と僕だけだっただけにこう言う話が来てもおかしくはないもんね。


「正直普段から活発的に動く部活じゃないから、大きな問題は無いと思うんだけど、入学式の日に部活紹介だけやって欲しいの。

 お願い出来ないかな⋯⋯?」

「⋯⋯それ以降は部活絶対出るって確証は無いですよ?」

 僕もVtuberとしての活動や、大学入試に向けた試験勉強もしたりしないといけないからね。


「それは大丈夫。

 実質的な帰宅部って事は暗黙の了解みたいな所あるから。

 どうしても出ないといけない日があればそれはちゃんと連絡するからね」

「それなら、良いですよ!」

 それくらいで済むならやっても⋯⋯いいかな?


「本当!? ありがとう!」

「それ以外も何か聞いておいた方がいい話とかありますか?」

「うーん、特にないから帰って貰っても大丈夫だよ」

「分かりました!」

「それじゃ気を付けてね」

「はい!」

 僕は先生と分かれると家へと向かいつつ、入学式の日の部活紹介のネタを考えることにした。



 そしてすぐに入学式はやって来て、僕は今部活紹介をする為に新入生全員の前に立っている。


「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 文芸部部長をしている姫村優希です。

 文芸部では、週に数回ほど部室へ集まり本を読んだりしています。

 活字に触れる事が出来る部活になっているので興味がある方は是非よろしくお願いします」

 僕は無難に部活紹介を終えると、周りがざわざわとし始めた。


 僕、舌でも噛んだっけ!?


 内心焦りながら入学式の会場を後にすると、緊張感が抜けてきた。


「ただいまぁ⋯⋯」

「優希、お疲れさん」

 教室へ戻ると、裕翔が僕に労いの言葉をかけてくれる。


「裕翔ありがと⋯⋯流石に緊張したよ⋯⋯」

「てっきり慣れたかと思ったけどなぁ」

「そんな事無いよ⋯⋯今でも恥ずかしいからね?」

「そんなもんなんだな」

「簡単に図太くなれたら苦労しないよ⋯⋯」

 僕はそう言いながら席へと戻った。


♢(川嶋繋視点)

 

 ボクの名前は月野(つきの)恵(めぐみ)、いまなんじで十期生の川嶋繋として活動させてもらっている十五歳だね。


 今日は高校の入学式があり、今はちょっとした空き時間。


「ふふっ、やっぱり優希先輩は可愛い」

 そんな空き時間に入学式の時に部活紹介をしている優希先輩をこっそり撮影した動画を見て、思わずボクはそう呟いていた。


「いやぁ、本当この学校にして良かった」

「⋯⋯どうかしたの恵ちゃん、そんなニヤニヤして」

 動画を見て一人ニヤニヤしているボクの下に、幼馴染の女の子がやって来た。


「あの先輩がいるこの学校に来て正解だったなぁって」

「急に受ける学校変えたのそれが理由だったりしないよね?」

「な、何の事かな?」

「はぁ⋯⋯本当恵ちゃんっていつもそうだよね」

 呆れたような顔をしてそう言った彼女はそんな事を言いつつもボクと一緒にここを受ける辺り、良い子だよな、なんて思っていたり。


「⋯⋯まぁ、恵ちゃんが何処へ行こうとも私は着いていくんだけど」

 ⋯⋯ただ少しばかり愛が重い気がするけれど、それもご愛嬌ってやつだね。


「あはは、でもボクは今この先輩にゾッコンだから、気持ちには応えられないよ?」

「⋯⋯大丈夫、最悪かんき、ううん、何でもない」

「そう?」

 一瞬不穏な単語が聞こえた気がするけど、本人が何でもないと言うんだから気のせいだったんだろうね。


「はぁ、早く優希先輩をリアルで愛でたいな⋯⋯」

「⋯⋯女の子の事をよく知ってるのは女の子だって事、恵ちゃんに教え込まないと」

 やっぱりボクの気のせいじゃない気がするけど、突っ込んだらきっと負けだろうね。

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