205:なのさんとオフコラボ!①

 春休みも始まってもうすぐ一週間が経とうとしている今日、なのさんこと綾乃さんから僕にDMダイレクトメッセージが届いた。


【もし、優希くんが大丈夫だったら今週の平日の何処かでオフコラボをしたいと思うの。

 もし都合の悪い日があったら教えて欲しいの】


 そう、前にマイクを買った時、綾乃さんに色々と教えて貰ったお礼に⋯⋯と言う感じで決まったあのオフコラボの件でのDMだった。


「うーん、正直いつでも大丈夫と言えば大丈夫⋯⋯なんだよね」


 なんだかんだで未だに続いてるバイトの事もあるから午前中は厳しいけれど、お昼からだったら間違い無くいつでも空いてるから、そうやって綾乃さんにメッセージを返しておく事にした。


「よし、送信完了⋯⋯っと」

 そしてメッセージを送って僅か数分の間にメッセージが返ってきた。


「綾乃さん返信するの早い!?

 えっと、木曜日⋯⋯か。

 うん、予定も無さそうだし、大丈夫だね!」

 僕は了承するメッセージを送ると、今週の木曜日のお昼から綾乃さんとオフコラボする事が決定した。


「うぅ⋯⋯ちょっと緊張してきたかも⋯⋯」

 何と言っても相手はあの華さんよりも登録者数の多い超人気Vtuberなんだから⋯⋯


「うん、覚悟を決めよう」



 そしてとうとうやってきてしまった木曜日。


「緊張してきた⋯⋯すー、はー」

「⋯⋯うん、ちょっと落ち着いたかな」

 僕は待ち合わせの場所で息を整えながら綾乃さんが来るのを待っていた。


「あっ、優希くん見つけたの」

「あ、あやのしゃんこんにちは!」

「⋯⋯噛んでるの」

「うぅ⋯⋯ごめんなさい⋯⋯」

「違うの、可愛くて思わず呟いちゃっただけなの」

「それはそれで複雑な気分です⋯⋯」

「それじゃ、早速移動開始なの」

「えっと、今日はどこへ行くんですか?」

「あー、そういえば言ってなかったの。

 んー、ここだと人目もあるから、人が減ってきたら教えてあげるの」

「は、はい⋯⋯」

「それじゃごーなの」

 そして待ち合わせをしていた名古屋駅を出ると、綾乃さんは即座にタクシー乗り場へ向かって行った。


「えっ、タクシーですか!?」

「へいたくしーなの!」

「⋯⋯なんだか勿体無いような」

「近くだからそんなに高くないし、それくらいはぼくが出してあげるから安心するの」

 そう言うと適当なタクシーを拾い、僕達は座席に座った。


「今日はどちらまで?」

「ここまでお願い出来ますか?」

「はい、では登録するので少々お待ちを」

「(あ、綾乃さんが普通に喋ってる!?)」

「それでは発車いたします」

「よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします!」

 それから少し車に揺られていると見た覚えのある建物が見えてきた。


「ここで大丈夫です」

「はい、ありがとうございます。

 お会計こちらになります」

「それじゃあカードでお願いします」

「はい、お預かりしますね」

「はい、カードのお返しになります」

「ありがとうございます」

「それじゃ優希くん、行こうか」

「は、はい!」

 タクシーを降りると目の前にあるのはいまなんじの建物だった。


「はふぅ⋯⋯いつもの喋り方出来ないの肩が凝りそうになるの」

「いきなり口調が変わったから凄くびっくりしましたよ!?」

「ああいう口調でバレたら流石に嫌なの⋯⋯だからタクシーとか乗る時は気を付けてるの」

「なるほど⋯⋯」

「と、言うわけで今日はここ、いまなんじのスタジオで配信をしようと思うの」

「久しぶりに来ましたね⋯⋯ここ」

「そう言えばぼくが優希くんに初めて会ったのもここだったの」

 そんな少し前の事を思い出しながら感傷に浸り、事務所を見上げながら僕は言った。


「それで今日は何をするんですか?」

「それは後でのお楽しみなの」

「と言うわけでついてくるの!」

 綾乃さんに案内されるがままにいまなんじの事務所に入った僕は、誰かが綾乃さんを待っているのが目に入った。


「あっ、なのちゃん、その子があの噂の子?」

「そうなの。 この子が“あの”白姫ゆかちゃんの中の人をやってる姫村優希くんなの」

「えっと、姫村優希です、今日はよろしくお願いします!」

「わざわざありがとう。

 なのちゃんに変な事とかされてない?

 大丈夫?」

「変な事、ですか?」

「あぁ、大丈夫そうね。 安心したわ」

「ぼくの事を何だと思ってるの?

 スタッフの皆ってばいつもそうなの」

「普段の言動を考えたら当然よ⋯⋯それで今日は聞いてた通りの流れで良かったのよね?」

「それでお願いするの」

「了解したわ。 それじゃスタジオの方はいつでも出来るようになっているから優希くんの準備が出来たら始めて貰って大丈夫よ」

「ありがとうなの、それじゃ優希くん行くの」

「あっ、はい!」

 そして僕は綾乃さんと二人でスタジオに入っていった。



 準備をサクッと終わらせると、配信開始の時間が迫って来ていた。


 告知を出していた時間までもう少しと思うと緊張感が凄い。


 深呼吸をして、いつものように白姫ゆかになりきると、どこか落ち着いて来たような感じがする。


「五秒後、始めるの」

『うん!』


「こんにちはなの!

 みんな、この日をずっと待ち続けていたの!」


「今日はあの、白姫ゆかちゃんとのオフコラボの日なの!」

『えっと、白姫ゆか⋯⋯です!

 よろしくお願いします!』

「ゆかちゃん硬いの、ここのリスナーはロリやショタには甘いからいつも通りに話してくれればいいの!」

『う、うん! ありがとう!なのお姉ちゃん!』

「ごぷっ」

『な、なのお姉ちゃああああああん!?』


:始まったと思ったら終わった

:なのちゃん死亡RTA最速じゃね?

:こんにちは、死ね!と言わんばかりの勢い

:これは酷い

:絶対今の吐血しただろ


「危うく、死にかけたの。

 今日やる事だけど、実はマネージャーに手伝って貰いながらTRPGをやって行こうと思うの」

『TRPG、ってあのTRPG?

 ボクやった事無いよ?』

「それは大丈夫なの、今回は簡単なシナリオとキャラシの作り方なんかも一緒に教えていくつもりだから安心して欲しいの」

『ボクも興味はあったから嬉しいな!』

「それじゃ早速キャラシを作っていくの!

 今回はCoC系じゃないファンタジー系のシナリオをやっていく予定なの。

 だからそれに合わせた自分のやってみたいキャラ名とかを決めてこの中に書いてある職業から選ぶといいの。

 ステータスに関してはこのソフトのランダムボタンを押して決定してくれればいいの」

『うんうん、それじゃこんな感じ⋯⋯でいいのかな?』

「おっけーなの」

 そんな調子でキャラシ、キャラクターシートを作成すると、ボクが今回使うキャラが完成した。


「殴れる回復魔法使いってマニアックすぎるの⋯⋯」

『えっそうなの? ボク、強いと思ったんだけど⋯⋯』

「強いには強いの。 ただ⋯⋯魔法使いだから杖術しか近接戦闘スキルが無いの⋯⋯」

『ボク、初心者だからそれが強いのかわからないよ⋯⋯?』

「魔法使いにはMPとINTに補正が入るの。

 でもSTRやDEXを参照する杖術とかには補正が乗らないの」

『このステータスだと何が相性良かったのかな?』

「タンク系や前線張れるやつ⋯⋯だと思うの。

 でもなのもそこまで詳しく無いし、ステータスにおいては完全に運なの」

『なるほど⋯⋯?』

「でもSTRが恐ろしく高いから自衛出来る魔法使いと考えたらかなり強いの。 DEXの低さに目を瞑れば⋯⋯なの」


:生存能力高そう

:まぁ、万能なのか⋯⋯?

:NOUKIN★

:やってみないとわかんないやつだこれ

:でも二人でやるの?

:GMはマネージャーでしょ


「おっ? 皆良いところに気が付いたの」

「実はTRPGをやるにあたってゲストを呼んでいるの」

『えっ!? そうだったの!?』

「黙ってて悪かったの、でも安心して欲しいの」


:安心要素が無い

:誰が来るんだ?

:まぁ、ヤツだよな

:だろうね

:確定演出ktkr


「それじゃ入ってくるの!」

「あああああああ!待ち遠しかったですよー!」

『ふ、ふわりお姉ちゃん!?』

「待つにゃ! うちもいるにゃん!!」

『この声、まさかさくらちゃん!?』

「覚えててくれて嬉しいにゃぁー!」


:ゆかちゃん好き三銃士が集まってしまった

:もうカオスになる絵面しか想像できねぇ

:ゆかちゃん逃げてええええええ

:これはやばそうw


「と言う事で今回はこの四人でソードナイトをプレイして行こうと思うの」

 こうしてカオスなTRPGが始まる事になった。

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