138:冬コミ二日目!(後編)
「はーいみなさん、こんふわりんー」
「こ、こんふわりんー」
僕と華さんは配信開始の挨拶を言うとコメント欄が早速賑わい始めた。
:こんふわりーん!
:こんふわりんー
:こんばんはー
:コミケ終わったのとほぼ同時に配信は草
:あれ?声が二人分聞こえてきたんだけど
:そう言われると確かに
:まさかオフコラボ?
:スマホ配信なのもそれが理由?
「みなさん気付くのが早いですねー
今日はなんと!あの白姫ゆかちゃんと再びオフコラボをする事が出来ましたー」
:ゆかちゃん逃げてえええええ
:ふわちゃん、それ本当にオフコラボだよね?
:これは、嘘を付いている味だぜ?
:やったね、ふわちゃん!
:唐突なオフコラボは草
:予告も無いのか...
「誘拐犯のような扱いは心外ですねー」
「ぼ、ボクも誘拐された訳じゃ無いから安心して欲しいな!」
僕は出来る限り白姫ゆかに心からなりきらないように気を付けながら声を出す。
「ほら!ゆかちゃんもこう言ってますよー」
華さんがちょっとプンプンとした様子でリスナーさん達にそう言った。
:言わされてる訳じゃない?大丈夫?
:ふわちゃんなら言わせてそう
:だ、大丈夫そうだね(遠い目
:うん、大丈夫だ()
「信頼されてなさすぎじゃない? ふわりお姉ちゃん」
「本当ですねー、私はこんなにも健全なのにおかしいですねー?」
華さんがそう言うとコメント欄ではまた沢山の人が反応していた。
:健全...?
:健全とは一体
:歩くショタコン、ロリコンの間違いでは?
:これほど健全の似合わない女はいないぞ
:いや見た目は清楚だから(震え声
:ゆかちゃんまだ何もされてないなら健全
:ゆかちゃん優しいから黙ってくれてるに一票
:誰もふわちゃん信用してないのほんと草
「みんな酷すぎませんかー? ゆかちゃんみんなが酷いので慰めてくださいー」
「もう既に十分だと思うんだけどなー」
僕がそう言うと、リスナーさん達がまたコメントを沢山してくれた。
:既に?
:なんか意味深なワードが
:やっぱ何かやってんじゃねーか!
:ふわちゃん警察に行こう今ならまだ間に合う
:犯罪者扱いされてて草
そんなコメントで目に付いた物に返事をしながら話をしていると華さんの服のポケットが震え始めた。
そしてポケットからスマホを取り出すとメッセージを読み始めた。
というか、さらっとスマホ2台持ちなんだね⋯⋯。
「あっ、マネージャーさんからメッセージ来ましたねー、今白姫ゆかちゃんとオフコラボしてるんですよー見てますかー?」
「ボクが白姫ゆかだよ!」
:今日の事マネージャーさんに言ったの?
:ふわちゃんだし言ってなさそう
:鬼メッセージ来てるの想像したら草
:マネージャーさんの反応めっちゃ気になるw
「マネージャーさん?」
僕が疑問に思って口に出すと——
「前になのちゃんと会った時のあの人ですよー」
「あっ、あの時の!」
華さんに耳打ちされてマネージャーさんの顔を僕は思い出した。
「それにしても今日のゆかちゃん本当に可愛いですねー、カメラの事も気にしなくていいからやり放題ですねー」
「さ、流石にカメラに映ってないとは言っても恥ずかしいよ⋯⋯」
僕がそう言うと、華さんは更に僕を抱きしめる力を強くした。
「絶対に離しませんよー?」
「あ、あの、凄く、恥ずかしいんだけど!?」
:ふぅ...
:ゆかちゃん顔真っ赤にしてるとこ想像出来る
:強制的にてぇてぇさせられてるの草
:まさかこれがだいしゅきホールドですか
:絶対違う()
:何がどうなってるのか死ぬほど気になります
「あっ、またマネージャーさんからメッセージ来ましたねー、えっと、何しでかすか分からないからどこで配信してるのか教えてください⋯⋯あの、私信用なさすぎませんかー?」
「うん、仕方ないと思うな⋯⋯」
「ゆ、ゆかちゃんまで!?」
:自分の行動を振り返るがよい...
:そらそうよ
:当たり前なんだよなぁ
:むしろなぜ信用されると思ったのか
:マネージャーさんナイスか?
:ふわちゃんを犯罪者にするわけにはいかないしね!!!!
「⋯⋯なるほど?」
華さんがそう呟いた瞬間僕の体に寒気が走った。
:何か、嫌な予感が
:奇遇だな、俺もだ
:早まってはダメです!
:おいやめろ!!
僕の背中から感じていた圧力がふと消え、これで動けると思ったその瞬間——
ガバッと音がしたと思ったら、僕は正面から抱きつかれていた。
どうやら向きを反転させられたみたい。
「むぐっ!?」
「えへへへへ⋯⋯」
:ゆかちゃんの霊圧が消えた...?
:おい!ふわちゃん!ゆかちゃんをどこへやった!!!!
:コイツまさか、また胸に埋めたのか?
:あれ?前回それでトランス状態になったとかじゃなかったっけ?
:俺、その配信見てたけど同じ状況だったぞ
:喰われる、ゆかちゃん喰われる!!
:ふわりちゃん落ち着いて!!
そしてコメントを放置した状態で華さんは僕の頭を撫で始めた。
僕は華さんの胸に顔を埋める体勢になってしまい、華さんを見上げながらやめるように目で訴えた。
「ああああああああ、ゆかちゃんが私の事を見上げてるの可愛いすぎますー!!!!」
完全に逆効果だった。
:頑張って!ゆかちゃん!
:ふわちゃん大暴走中
:これは止められない...
:飛んで火に入る夏の虫とはこの事か
:冬だけどな
:だめだストッパーが誰もいねぇ!!!!
:見上げてるって事はやっぱり胸に埋めてるじゃねーか!!!!
「よーしよしよしよしよし⋯⋯」
どこかで聞いたことがあるような言い方で僕の頭を撫で続ける華さん。
少し経つと流石に息が出来なくなってくる。
「ふわり、お姉ちゃん、ボク、流石に怒るよ?」
息も切れ切れに華さんに僕はそう言った。
これくらい言えば流石に冷静になると思うんだけど⋯⋯
「あっ⋯⋯ごめんねゆかちゃん、嫌だった?」
ハッとした様子で少し泣きそうな目をしながら僕に謝る華さん。
正直、嫌かと言われると嫌ではない、けど。
「流石に、この年でそれは恥ずかしいからやめて欲しいな⋯⋯」
:ん?
あれ?
:そこまで嫌がってない?
:これは?
:きま...?きまし...?
「じゃあ、どうやって可愛がればいいんですか!!!!」
「えっ!?」
そ、そんなこと言われても僕が困るよ!?
:ゆかちゃん困惑してて草
:そりゃ困惑するわw
「マネージャーさんからも困惑のメッセージが届いてますねー」
:草
:マネージャーさんェ...
:そりゃ困惑するわな
:当然よ
そして、こんな状態で部屋に10分前のコールが鳴り響いた。
「ちっ⋯⋯もう時間ですかー」
「今舌打ちした!絶対舌打ちしたよね!?」
僕が思わずツッコミを入れると何のことやらとインターホンを取りにいってしまった。
「はい、はい」
そして残り10分と聞かされ相槌を打つ華さん。
話が終わるとこっちに戻ってきた。
「と、いう訳でこれで配信は終わりになりますねー、流石に数十分は一瞬でしたねー」
:おまっ!
:ゆかちゃんにげてえええええええ
いまなんじマネージャー:ちょっとふわりちゃんまだ場所きいてな
「おつふわりんー」
「お、お疲れ様!お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
:おつふわりんー
:おつかれさまー
そして挨拶も早々に切り上げて、華さんは配信を終了させた。
------この配信は終了しました------
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