72:始業式とLHR

 IVの撮影も終わり夏休みももう終わりを迎えた八月三十一日。


 今日は始業式があるので学校へ登校する。

 久しぶりに裕翔やクラスメイト達に会えるのでちょっと楽しみ。


 筋肉痛も大分良くなってきたのもあって、僕の体に問題は無いし、準備も出来たから学校へと向かう事にした。


 いつもの様にバスに乗り学校へと向かう。


 そして学校に着いた僕は、教室へと向かい登校日以来会えていなかった皆と話す事にした。


 教室へ入ってみると普段そこまで登校してる人がいない時間にも関わらずクラスメイトの多くがもう教室にいた。


 皆、友達に会うのが楽しみで登校してきたのかな。


 僕も人の事言えないけど楽しみにしすぎだよ!?


 そして裕翔を見つけたので声をかけに行った。

「裕翔おはよー、あれ?裕翔なんかめっちゃ焼けてない?」

「おう、優希おはよう。

 あれだわ部活でずっと外から居たからもう焼けまくりよ」

 裕翔は苦笑いしながらそう言った。


「こんな時期に外で運動なんて大変だね」

「まぁ、俺はもう慣れたけどな。

 ただ日焼けで肌が痛いんだよなぁ⋯⋯」

「僕なんて外でやった事コスプレと撮影があったくらいだよ?」

「撮影ってなんだよ、聞いてないぞそんなの」

「あれ?」

「優希くんおはよう!今話聞いたよ!撮影って何かな!?」

 撮影の単語に引き寄せられるかのようにクラスメイトの女の子三人組がこっちにやってきた。


「私も、気になる」

「撮影とは、一体どんな衣装を着たのか聞かせてもらおうかなぁ!」

 天音さんと香月さんと花園さんの三人は一気に僕に詰め寄る。


「えっ?えっと、説明し辛いけど、秋物って聞いたよ?」

「えらくアバウトだね」

「秋物って女性向け?男性向け?」

「写真は、無いの?」

「えっと、一応女性服だよ?」

「よっしゃぁ!!!」

「写真⋯⋯」

「可愛いんだろうなぁ⋯⋯」


「欲望隠さないのは相変わらずだなお前ら⋯⋯」

 裕翔は呆れるように呟いた。


「こんなに可愛い子が男の服を着て良い訳が無いんだよ!?人類の損失だよ!?」

「そこまで言うの!?」

 香月さんがとんでもない事を口走っているけど、人類の損失は言いすぎじゃないかな。


「否定、できない」

「私も可愛い格好してるところ見てみたいから⋯⋯」

「ダメだ味方が裕翔しかいないよ!」

「すまん優希、俺も優希は女装似合うって実は思ってた」

「裕翔おおおおおおおおお!!!???」

 味方なんていなかった。


「でも無理強いはしないけどね」

「うん、嫌な気分にさせてまで着て欲しいわけじゃないから」

「着てみて欲しいのは本音だけどねー」

「うぅ⋯⋯」

 今の僕は女装に抵抗が無くなってきていたとは言え、流石に普段から会うクラスメイトに見せるのはちょっと抵抗感があるよね。


「それにしても優希、なんか雰囲気変わったか?」

「確かに、なんか可愛らしさに磨きがかかった気がする!」

「何というか、肌が綺麗?」

「ぷにぷにもちもちしてそう⋯⋯」

「えっ?あっ、もしかして」

「思い浮かぶ事があるんだね!!」

「え、えっと、その」

「さぁさぁ!吐け!吐くんだー!」

「うぬぬぬぬ⋯⋯」

「私にも、教えて?」

「分かったよ⋯⋯実はスキンケアを始めたんだ⋯⋯」

 実を言うとメイクの伊藤さんに今後もメイクをする可能性があるなら肌は綺麗にしておいた方がいいって言われてスキンケアを始めたんだ。

 まだ数日だけど、お肌に効果があったみたいだね。


「女の子かよ」

「女の子じゃん」

「ようこそ女の子の世界へ」

「スキンケア結構大変だよねー」

「でもさ、ちょっと違うんだよね」

「うん、スキンケアじゃないよ原因は」

「なんだろう、説明し辛いんだよね」

「あぁ、確かに俺もスキンケアは違うと思うわ」

「えっ?」

 どう言う事?


「なんか、ちょっと女の子っぽくなってきたって言うか⋯⋯」

「あぁー!そうそう!そんな感じ!」

「前なら普通に感じたんだけどね」

「あー、そういうことなのか?」

「裕翔もなんで納得してるのさ⋯⋯それに僕は男なんだけど!?

 自分で言っておいて何だけど⋯⋯僕、ちゃんと男だよね?


 そして話で盛り上がっていると先生が教室へやってきた。

 今から体育館へ向かうとの事だったのでクラスメイト達は整列して体育館へと向かい校長のながーーーい話を聞きに行った。


 そして戻って来た僕達を待っていたのはロングホームルーム。

 課題の提出などは授業毎に個別で渡すらしいので今日は別の事をやるんだとか。


「それじゃ、今日はこのクラスの文化祭の出し物を決めて貰おうと思います」

 そう、文化祭の出し物だった。

 定番だとお化け屋敷だったり、謎のアート展っぽいのだったりが有力かな?


「はい!!!」

 そして勢い良く香月さんが手を挙げ意見を出した。


「コスプレ喫茶が良いと思います!!!」

 あぁ⋯⋯これも定番だったね、忘れていたよ。


「コスプレ喫茶、と」

 先生は黙々と黒板にコスプレ喫茶と書いていく。


 するとクラスの女子からコスプレはちょっと⋯⋯とか女子なのにそれ言うの?など余り受け入れられていないようだった。


 男子からは俺が言おうと思ってたのに、とか言っていたからもう男子の脳内ではコスプレ喫茶で頭が一杯になっているようだった。


「先生、ちょっとだけ良いですか?」

 またもや香月さんが手を挙げた。

「どうかしましたか?」


「その、ちょっと女子からの受けが良く無いので少しだけ話をさせてもらえませんか?」

「うーん、じゃあ五分だけですよ?」

「ありがとうございます!」

 そう言うと香月さんはクラスの女子達を教室の端っこへ集めるとボソボソと話を始めた。


 ん?なんか寒気が⋯⋯気のせいかな?


 すると五分後にクラスの女子が全員コスプレ喫茶で良いと満場一致で言い始めた。

 男子は嬉しさで舞い上がっていた。


 えっ?何があったの?


 そして今年の文化祭はコスプレ喫茶をする事になった。

 他の意見が全く出ないというのは先生も今まで一度も経験した事がなかったとか。


♢(クラスの女子サイド)


「それで、女子なのにコスプレを言い出した訳を教えてもらいましょうか」

 私、香月こうづき美由紀みゆきは今クラスの女子全員の前にいる。


「それじゃ、言い出しっぺの私が説明するね」

 私はクラスのいつもの三人を除いた全員から嫌そうな目を向けられていた。

 気持ちはわかるよ、でもこれしか私が生で拝む機会が無いんだから頑張るんだ。


「うちのクラスに姫村優希くんっているよね」

「あぁ、あのちょっと可愛らしい雰囲気の子ね」

「可愛いよね姫村くん」

「じー⋯⋯そう言われると確かに可愛いかも」

 掴みは良さそう。

 あとは心を掴むだけ。


「あの子、女装させたくない?」

「「「「「ッ!!!!!!」」」」」

 皆が全員衝撃を受けたような顔をしている。


「私達が少し、ほんの少しコスプレを我慢すれば普段ならまず女装しない可愛い男の子が女装できる姿を拝めるかもしれないんだよ?」

「た、確かに⋯⋯」

「香月さん、貴女天才なのでは!?」

「私、やる!私やるよ!」

「見たい!!!我慢すれば見られるんでしょ!!!」

「ただ一つ言っておくと、絶対では無い、とだけ言っておくよ?」

「本人がどうしても嫌と言えば仕方ないからね」

「説得は任せてもいい、って事なのよね?」

「勿論!私に任せて!」

「だったら言う事は無いわ」

「私も」

「仕方ないなぁ、にへへ」


 そんな事もあり、満場一致でコスプレ喫茶をやる事になった。

 私は優希くんの女装を見るために、頑張るんだ!

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