13:2000人突破記念配信(後編)

「皆さん、こんふわりんー」

 白姫ゆかとコラボを始めた浮雲ふわりが恒例の挨拶をする。


:こんふわりんー

:こんふわ!

:こんふわりんー!


『あわわわ、ボクがいいよって言った手前あれだけど本当にコラボ出来るなんて⋯⋯』


:ゆかちゃん嬉しそう

:ゆかちゃんが嬉しそうで何より

:結構凄いことが起きてるのにそっちに集中出来ない件

:ふわちゃんとコラボとかやばいよなー

:快挙なのでは?


「うふふ、本当に可愛いですねー、お姉ちゃんって呼んでくれませんか?」

『ま、まぁそれくらいならいい、かな?』


:あぁ、絶対死んだわ

:何だったら巻き込みで何人か死ぬぞこれ

:俺は既に死んでると言ってもいい

:お姉ちゃんはわたしに刺さる

柿崎ゆる:わ、わた⋯⋯しも⋯⋯

:ゆるママ切実で草


『ふわりおねーちゃん♪』


柿崎ゆる:


「にゃあああああああああ!!!!」


:!?

:ふわちゃん!?

:とんでもない声出したぞwww

:さらっとゆるママも死んでる・・・

:こいついつも死んでるな・・・


「無理ぃ⋯⋯こんなの耐えれるわけないよぉ⋯⋯」


:わかる

:俺なら死んでた

:私も死んでた

:わたしも死んでたと思う

柿崎ゆる:私もコラボしてもらえるときに言ってもらうもん!!!!!

:ゆるママ⋯⋯

:クール女子とは⋯⋯?


『そ、それじゃあふわりお姉ちゃんは置いておいてヒゲオカート、始めるよ?』


:結構な鬼で草

:ド畜生かな?

:絶対まともに出来ないぞふわちゃんwww

:負けられない闘いがここにはある

:わたしもお姉ちゃんって言ってもらうんだ!

:皆煩悩に塗れてるなぁ

:しゃーない


「うぅ⋯⋯他にも言って欲しい事あるから頑張りますー」


:復活した

:えらいけどライバルだから負けられない

:よっしゃ頑張るぞー

:私あんまり上手じゃないけど頑張るわ


『それじゃあこのサーバーに接続してね!

同時に四十八人までだからROMしてる人も気軽に参加してくれると嬉しいな!』

『次にルール説明だけど、四十八人で四つのブロックを作って各ブロックの三位までの人でレースをやってその時の一位が勝ちだからね!』


:わかった

:結構実力差が出そう

:よし準備出来た

:私も準備OK

:わたしも準備できた


『メンバーも揃ったみたいだね!それじゃあ始めるよ!』

 開始の宣言をした彼女の画面が切り替わり、ゲームの画面が映し出された。


 一ブロック目は柿崎ゆるとリス兄とリス姉達の対戦だった。


♢(柿崎ゆる視点)


「うわぁ、よりにもよってこのステージなんだ⋯⋯」

 そう言った彼女の前にはヒゲオJrサーキットの文字が浮かんでいた。


「完全に実力が試されているコース⋯⋯やるしかない、よね」

 気合を入れた彼女はスタートの瞬間を待っていた。


3...2...1...

「ここ!」

 そう言ってボタンを押した彼女は上手くスタートダッシュを決めた。


「よし!」

 他にも三人ほど綺麗にスタートダッシュを決めていたが、彼女はそれを気にせず三位以内を目指してひたすら走っていた。


「いいペース⋯⋯間違いなく今までで一番いい走りを見せてる気がする⋯⋯」

 実際にかなりの集中力でライバル達の放った甲羅などを回避していっていた。


 そして最終周でアイテムを持っていなかった彼女に赤い甲羅が襲いかかる。


「まずい!アイテムブロック間に合って!」

 誰もがぶつかったと思った瞬間奇跡が起きた。

「(緑甲羅!?後ろに出すしかない!)」

 起死回生の一手となったのは1秒程度の猶予しかなかった緑甲羅獲得からぶつかるまでの間に入力を完了した事だった。


「やった!」

 そして彼女はギリギリの回避に成功し三位入賞に成功した。


 そして次はリスナー同士の争いだったが運ゲーマップのせいで大いに荒れた。

 ヒゲカーガチ勢を名乗っていた人もあれは無理と言ってたのだとか。


♢(浮雲ふわり視点)

 次の対戦は浮雲ふわりvsリス兄&リス姉の構図となった。


「ふふふ、負けませんよー?」

 スタートダッシュを決めるのは当然と言わんばかりに決めていく。


:やっぱ上手いよなふわちゃん

:それな

:ふわ民はガチ勢多いから...

:俺不安になってきた

:わたしもかなりガチ勢だったと思ったんだけど胃の中の蛙とはこの事なのかしら

:食われてて草

:食われてるw

:み、ミスっただけよ!?


 そしてレースも中盤になってきたところで動きがあった。


:おい!?下位勢の所持アイテム頭おかしいだろ!?

:なんだこれwww

:カオスすぎるwww

:草

:思わず草


 九位以下の下位勢の所持アイテムが全て一発逆転アイテムになったのだ。


 トゲ甲羅に雷、キ○ー。


 そして浮雲ふわりの順位は一位。


「まずっ!?」


:これは終わったな

:これは無理


「なんてねっ!」

 トゲ甲羅が当たる瞬間に彼女はスピードきのこを使用しトゲ甲羅を見事に抜けた。


 その後に雷が来たが、もう彼女を止める事は出来なかった。


「よしっ1位!」


:ふわちゃんおめでとー

:流石ふわちゃん練習せずに成功率1%あるかどうかって言われてる高等テクニック一発成功とかやばい

:最後のあれは痺れた

:神プレイだわ


♢(白姫ゆか視点)

『よくよく考えたらボクが一位になったらどうなるんだろ?』


:確かに

:考えていなかった

:でも参加しないのはなんか違うよね

:いっそのことふわちゃんに言ってもらいたい事言ってもらったら?

:そんな事しなくても言ってくれそうなんだけど


「もちろん、どんなことでも言ってあげますよー?お姉ちゃんですし?」


柿崎ゆる:ぎるてぃ

:はいギルティ

:ダウトォォォォォォォォ!

:ゆかちゃんのお兄ちゃんとお姉ちゃんは俺たち全員だぞいいか?全員だぞ?

:お前⋯⋯ノーベル平和賞受賞だわ⋯⋯

:そうか皆お兄ちゃんでありお姉ちゃんなのか⋯⋯

:なんか哲学的


『あはは、それじゃボクが一位取ったら何頼もうかなっ!』


「ゆかちゃん頑張ってくださいねー」


:がんばえー!

:頑張れー!

:ふぁいとー!


『よし、じゃあ予選ラスト行くよ!』

 コースはこれまた実力が浮き彫りになるヒゲオサーキットだった。

 ヒゲオJrサーキットと違い距離が長めで3周になっている。

 このコースはカーブの数がそれなりに多くカーブを制す者が勝負を制すと言っても過言ではないくらいカーブが大事なのだ。


「スタートダッシュは余裕だねっ!」

 白姫ゆかも好スタートを切り先頭集団の中に入っていった。


 三位の位置にずっと居た彼女は2位との距離を維持したまま最終周へと入っていた。


 そして、もうすぐゴールという所で後ろからゴールドスピードきのこを使い一気に追い上げて来るライバルがやってきた。


『(ここが使いどきかな?)」

 彼女はスピードきのこを持っていないと通ることの出来ない難易度の高いショートカットへ入っていった。


『ここの段差をジャンプして最高高度の瞬間にきのこを使って⋯⋯!届いてぇぇぇぇ!』


:まじかよ

:ここで難しいショートカットで勝負に来たか

:いやこれは

:いける!いけるぞ!


『やった!』

 そしてその勢いをそのままに彼女は一位すらも抜き去り一位で勝利した。


:あの思い切りの良さに痺れるし憧れる

:かっこよかったよゆかちゃん!

:はしゃいでるところもくぁいいぜ...

:ほんまそれ

:初見、なんでふわちゃんがコラボやってるの同事務所の人じゃないの(困惑)

:おっ初見さんいらっしゃい

:ふわちゃんがいるワケ?主を見れば分かる

:主?⋯⋯あっ(察し


『ふっふーん!ボクだって捨てたものじゃないよ!』


:捨てられたら爆速で拾われそうだけどな

柿崎ゆる:どこにいけばひろえますか

:ゆるママ落ち着いて

:気持ちはわかる

:なんだこの配信(困惑)


「あれを決めていくのはなかなかですねー」

『すっごく緊張したんだけどね、成功してよかったよ!』

『でも正直ふわりお姉ちゃんのトゲ甲羅避けは鳥肌が立ったよ⋯⋯?』

「褒めてもらえて嬉しいなぁー」


:いいな

:裏山

:羨ましい

:お姉ちゃんすごいねーって言われながらよしよしされたい

:想像しただけで幸福感に包まれた

:これは偉大な発明


『それじゃ時間も迫ってきたし、最終戦いくよ!リス兄もリス姉もふわりお姉ちゃんもゆるママも準備は大丈夫?』


柿崎ゆる:いつでもいいよ

:ばっちこーい

:私が勝!!!!!!

:わたしも負けない!

:いくぜえええええ!!!!!

:ガチ勢として負けられない

:問題はステージなんだけどな...

:流石にそこまで変なステージは来ないだろ

:おいやめろフラグを立てるな


『えぇ⋯⋯』

「あちゃぁー」


 最終戦に選ばれたのはコース落下率がかなり高い虹の上を走るコース、レインボウロードだった。


:あー...

:これは....

:落ちたな(確信

:いっぱい落ちるんだろうなぁ


『ま、まぁ気を取り直して、レースはもう始まるからね!』

「そうですねー頑張りましょうー」


 そして最終戦が始まった。

 スタートダッシュはなんと全員成功だった。


:全員スタートダッシュ成功wwww

:うめぇwww

:レベルたけぇよwww


 そして第一の関門壁の無い急カーブに入った。 外側や内側でカートがぶつかり合い落下していく人も現れた。


『うわぁ!?危なかった!』


「一位は譲りませんよー」


 全員がぶつかる寸前だったりぶつかって落ちかけたりといった状態になり、気付けば先頭は五人になっていた。


『ぐぅ、ボクが四位かぁ⋯⋯』


「このままいけば⋯⋯ふふっ」


 そして最終周へと入り、ジャンプ台で五人が飛んだ瞬間待っていたと言わんばかりのタイミングで雷が落ちてきた。


『あっ』

「あっ」


:あっ

:これは⋯⋯

:落ちたな...


 五人全員仲良く奈落の底へと向かっていった。 復帰したときには二人に抜かれてしまい、急いで追いかける。


 途中スピードきのこを引きいざという時の保険も手に入れた。


 そして最終周も半ばになった時にゆるママとふわりお姉ちゃんの二人が一気に勝負に出た。


「負けてたまるかぁぁぁぁぁ!!!」


 成功確率というよりも、落下判定の隙間を縫うように走らないといけない究極のショートカット。


 本番ではまず使えないと言われているネタショートカットの一つを二人が同時に攻めていった。


 二人はゴールのある位置目掛け一直線に飛んでいく。


:いや流石に成功しないだろ

:これ成功したらガチの伝説だぞ

:流石に途中で復帰させられるのがオチだって

:ふわちゃんがんばえー!

:ゆるママいけぇー!


 そして二人は綺麗に揃ってゴールラインを踏んだ。


 システムの都合上同着は存在しないが、秒数がコンマ以下まで同じだった。


:マジかよwwwwwww

:ありえねぇwwwwww

:ファーwwwwwwww

:え?何この配信頭おかしいの?

:omg

:すっげぇwwwww

:情報量が多すぎて整理できない

:wtf

:海外ニキまでいたのか?


『えぇ!!!!????』

「嘘、成功した⋯⋯?人生初なんだけど⋯⋯?」


柿崎ゆる:これは、完全な同着だね。

:しかも同着とか、やばいって

:システムの都合上一位、二位ってなってるけどこれはマジの同着と言っていい

:ゆかちゃんこのパターンは予想してなかっただろうなぁ


『うーん、どうしよう、二人とも何か言って欲しい事はあるかな?』


柿崎ゆる:お姉ちゃん大好きって言って

「私もそれで⋯⋯」


:ほんまに欲望に忠実よな

:だが、それがいい。

:流れ弾確実に当たる奴が二人はいる件について

:やだ私まだ死にたくない

:わたし多分死ぬ


『あっ!そうだ!良いものがあったの忘れてたよ!ちょっと待っててね!』


:ん?

:なんだなんだ?

:マイク切れた?

:っぽいね

:なんだろ?

:柿崎ゆる:どうしたんだろ?


「私も、わからないですねー」


 するとがさごそとマイク音が復活した。

 そしてそれは右耳から音が聴こえてきた。


:おいまさか

:やめろそれは死人が出る

:なんで持ってるのこの子⋯⋯

:いや確かに最近安くなってきたとは言え結構するぞこれ


『おねぇちゃん♪』


「ひゃぅ!?」


柿崎ゆる:ふわぁぁぁぁぁぁ


「み、みみがぁ、ふわぁぁぁぁ」


柿崎ゆる:こ、これは、だめっ!やばいよぉ!


『おねぇちゃん、ボクと今日は遊んでくれてありがと♪大好き♪』


「ぁぁぁぁぁぁっ!ぁぁぁぁぁぁぁっ!」


柿崎ゆる:ぁ...ぁ....


:し、死ぬかと思った⋯⋯

:バイノーラルマイクはずるいって⋯⋯

:耳がぞわぞわした

:はにゃああああああ

:これは⋯⋯無理ね⋯⋯皆、今までありがとう⋯⋯

:お前たち、死ぬのか?


『あ、あれ?』


:ゆかちゃんは悪くない

:悪くないけど悪い

:あれに耐えられるお姉ちゃんはいるのだろうか


『今回のは二人ともだったからお姉ちゃんにしたんだけど⋯⋯え、えっとじゃあ次は収益化が通ったら記念枠で土曜日の夜にまた配信するからね!通らなくても土曜日に配信するけどね!』


『それじゃリス兄、リス姉おやすみなさい!』


:お疲れ様ー

:おつふわりんー

:おつかれー

:おつふわぁ!


 そうして第二回配信は終了した。

 少なくとも四人の犠牲者を出しながら。

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