星降る夜に輝く詩

鈴響聖夜

プロローグ

 橙に染まった木々の軽やかな旋律が耳を撫でる。まるで、「ここでは自由でいいんだよ」と囁くように。

 波の割れる音が微かに聞こえるこの岬で天を仰いで、移り変わる空の色を眺める。紫が濃くなった空には星が瞬き始める。

 僕と君の二人きりの眺望は、どうしようもなく愛おしくて。この時が永遠だったなら、なんて考えてしまうほどで。

 でも僕は詩うよ。先の見えない君の旅路を。

 さぁ、出発の時だ。鞄には、君を照らし出すこの詩を詰めていけばいい。

 そしていつか、思い出して欲しい。

 君を想い続ける僕がいることを。




「なんてうたはどうかな?」


 僕は詩人かのようにおどけてみせる。


「いいじゃん。奏大そうたらしくて」


 唯希ゆきはそう言って微笑んでくれる。僕にしか見せないその顔に、心が弾む。


「じゃあ次はこんな詩はどう?」


 調子に乗った僕が奏でようとする音に、君は耳を傾ける。その耳の奥にある君の心に向けて詩を放つ。




 これは僕らが主役の小夜曲こいものがたりだ。

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