ひかりのこども
晴れ時々雨
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最初に身篭ってから3ヶ月で産んだのは毛の生えた双子の足だった。それから3ヶ月おきに、すんなりと伸びた双子の腕、膨らんだ乳房と性の象徴を下げた胴体を切迫早産しかけて出産し、超難産だった頭部を産んだ。これで終いかと、きょうだいたちを繋ぎ合わせたがなかなか上手くいかず、手間取るうちにまた私のお腹は膨らみ始めた。
陣痛がきてひと月たつ頃、組み立てて作り上げた子どもが、眠る私の首を絞めた。
息苦しさに喘いで隣に眠るはずの夫をみると、夫は口から血を流して寝台の下に倒れていた。
何事にも覚束ないはずの不格好な子どもの力は想像より遥かに強く、私は母でありながら抵抗僅かにその行動を受け入れ始めていた。
ぐねぐねと激しく胎動する子宮を感じながら、これから何かに訪れる死を予感した。
体中の血液が頭に遡って止まる。その反動がいきみに繋がり、腹部が破裂したのを感じると何かが膣を通り抜けた。
瞬間、目の前を圧する輝きが室内を照らした。
気がつくと、子どもが何かを抱えていた。闇を取り戻した寝室は、子どもの抱える物体の燐光で仄かに照らされ、夫の亡骸にかかる影を濃くしていた。
私は力尽き、子どもの様子をただ眺めることしかできない。自分の腕の中で光る物体を凝視する子どもがおもむろにそれを食べた。
すると子どもの体の隙間という隙間から光が洩れ輝き、炎のように全身を包んで燃やした。
私は自分の予感したものを想像した。
子どもが急に泣きだした。初めて上げた産声だった。私は声にならないとわかりつつ、よしよしと空気を吐く。
「かあさん」
私の体の脇に両膝をつき涙を流す子どもの瞳に、あの燐光と同じ光が宿っていた。
ひかりのこども 晴れ時々雨 @rio11ruiagent
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