消しゴムサイン
「ちゃんと練習しなさい!」
それが娘の
小学3年生になった娘にはピアノを習わせていた。しかし、飽きっぽい性格なのか練習をすぐにサボってしまう。
しかし、それよりも私の悩ませていたのは字の汚さだった。
娘の字は同年代の子供に比べて極端に悪筆で、ピアノと同様、丁寧に書く努力をしないのが原因だと認識していた。
*
その日のことだった。
「もっと字を丁寧に書きなさい!」
いつものように私が怒鳴ると、娘は「キライ!」と叫んで走り出し、そのまま玄関を飛び出してしまった。
さすがに怒鳴りすぎたかもしれない。そう反省しながら娘の散らかった部屋を整理していると丸められた1枚の紙が見つかった。
それには消しゴムで何度も消された跡があった。
*
夕方に帰ってきた娘に私は泣きながら謝罪した。
「ごめんね美樹……母の日、祝おうとしてくれてたんだね」
努力すべきだったのは私の方だった。娘をもっと理解するという努力を。
410字な物語 戸画美角 @togabikaku
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