違法の冷蔵庫

 その違法に改造された冷蔵庫の性能はすさまじかった。


 4つの巨大な車輪に水平対向エンジンとジェットエンジンを搭載し、空気抵抗を極限まで減らすように設計された空力ボディーは戦闘機を連想させるデザインで、その加速性能は時速100kmに達するまで5秒、最高時速は500kmに至るほどだった。


 男は週末になってはそのマシンに搭乗し、高速道路を轟音とともに走り抜けていた。当然スピード違反であったが、警察のパトカーが追いつけるはずもなく、毎度のように逃げ去っていた。


 しかし、ある日ついに捕まってしまった。ガス欠だった。


「くそ」と男は自分の失態に悪態をつく。


「なぜ、冷蔵庫にこんな改造をしたんだ?」と警官。


「お前は生ぬるいビールなんて飲みたいか?」


「は?」


「ドライブした後にキンキンに冷えたビールを飲むのが最高なんだよ!」



 その後、男は留置場で頭を冷やすことになった。


 ガス欠になった冷蔵庫の中のビールはとうに生ぬるくなっていた。

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