はぐれ半魔とツンデレエルフ ~勇者が異世界に帰ってしまったので、犬猿の仲だったパーティーメンバー二人が冒険の旅にでることになりました~
szk
アレックスくんとノエルちゃん
むかーし昔、いいえ、そんなに昔のお話ではないかもしれません。
そこは異世界から来た勇者の活躍によって、魔王のいなくなった平和な世界です。
「ありゃりゃ? こっちでいいと思ったんだけどな……」
「ちょっと! 本当に大丈夫なの? あんたが道知ってるって言うから、ついて来たのに!」
あるところに、世界中を旅している男の子と女の子がいました。
二人は陽もそろそろ落ちようとしている頃、とある地方の峠道にさしかかっていたのですが……。
「あん? 仕方ねーだろ、知ってる道だと思ったけど、違ってたんだよ!」
この目つきの悪いブロンドの男の子は、アレックスくん。
魔族の父親と人間の母親のあいのこで、歳はおそらく十六〜七、半人半魔のちょっと乱暴な剣士です。
「はぁー? 本当にあっきれた! どうしてあんたは、いつもいつもそう馬鹿なのよ!」
長いブロンドの髪と綺麗な青い瞳、長く尖がった耳がチャームポイントの可愛い女の子は、エルフのノエルちゃん。
まだ十七歳ですが、聖都にある大学を卒業して、博士号を持っているとっても賢い魔法学者さんです。
「んだと? このクソエルフ! この俺様を馬鹿って言いやがったな!? もういっぺん言ってみろ!!」
二人は勇者と魔王のいなくなった世界で、行方をくらましている魔王を復活させた悪い悪魔をさがし、今日も仲良く冒険を……。
「馬鹿だから馬鹿って言ったんでしょ? このチンピラ剣士! あんたのせいで、今日は野宿じゃない!!」
今日も仲良く……。
「二……二度も馬鹿って言ったな!? もう勘弁ならねー! 今日という今日は、そのエラそうに尖った耳をへし折ってやるぜ!!」
仲良く冒険を……。
「ふん! できるもんなら、やってみなさいよ! あんたなんか、私の魔法でケチョンケチョンにしてやるんだから!!」
「へん! てめーの魔法なんか、かすりもしねーんだよ!! このへっぽこ魔法学者!」
今日も仲良くののしり合いながら冒険していました。
調度そんなときでした。
薄暗くなった山道でいがみ合っている二人を尻目に、茂みの奥からガサガサと音がしてきました。
「へっへっへ……いい獲物を見つけたぜ!」
「高そうな剣を持ったガキと、上玉のエルフ女じゃねーか!」
「こりゃついてるぜ、難民の奴らは小汚いガキ連れてるだけで、金目のもんなんかロクに持ってやしねーからな」
「おい! ガキ! その剣とあり金全部、それとエルフの女をおいてきな! さもないと……」
突然現れたのは、筋骨隆々、ヒゲも体毛ももじゃもじゃで、品性の欠けらもない如何にもな感じの盗賊たちでした。
盗賊たちは持っている斧や剣を振りかざし、仲良くののしり合っている二人に迫ります。
「……さもないと!」
「はん! 言ったわね、もう謝っても許してあげないんだから! 私の極大呪文をおみまいして、塵も残さず消し去ってあげる!」
「そんなすっトロい呪文なんざな、出る前にその目障りな耳をちょん切ってやるぜ!」
「えーと、さもないと……」
大変です。アレックスとノエルは言い争いに夢中で、間近に迫る盗賊の危機に気が付こうともしていません。
さすがに痺れを切らした盗賊たちは、声を荒げて更に二人を脅かします。
「このクソガキども!! 俺たちを馬鹿にすんのもいい加減にしやがれ!! ぶち殺すぞ!!!」
「……あん? んだよ、おっさんたち? こっちは今、このクソエルフと取り込み中なんだよ!」
「うっとうしいから、後にしてもらえる? 今はこのチンピラ剣士を懲らしめなきゃいけないの!」
「え……ええー?」
それでも、自分たちを無視してケンカに夢中の二人。
人相最悪なその盗賊たちの中でも、一番凶悪そうな顔をした盗賊の親分は、怒りに震えながら名乗りを上げます。
「ガキども、どうやらこの俺が誰だかわからんようだな! 街道一の盗賊団、パラノイアのジャーヴィス様とはこの俺のことなのだ!!」
「……盗賊!?」
「……嘘!?」
親分が恥ずかし気もなく名乗りを上げてくれたおかげで、アレックスとノエルはやっと身に迫っていた危機に気付いたのです。
先程までいがみ合っていた二人は、名乗りを上げて自信満々の親分を、晴れやかに微笑みながら見上げました。
「なんだおっさんたち、俺たちを襲うつもりだったのか? そうならそうと、最初から言ってくれりゃ良かったのに!」
「……へ?」
「調度よかったわ! これで今日は野宿しないですみそうね!」
「あ……え?」
二人はかつて、異世界から来た勇者と一緒に魔王から世界を救った仲間たちです。
アレックスくんは勇者の師でもある剣神ジャスティーンから剣術を学び、伝説のドラゴンを倒すほどの腕前です。
そして、ノエルちゃんはあらゆる種類の魔法に精通し、伝説の魔法を使って魔王を封印するのに大活躍しました。
ポカンとする盗賊の親分を嬉しそうに見つめる二人、もう大ピンチです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます