運命の薬指に口付けを

雪片月灯

第1話 悪魔

 悪魔として生まれた僕の、これは持論だけれども。

 祈りとは呪いに変わりやすいものだと思うんだよね?

 少なくとも今まで生きてきた長いような短いような時の中で、どの人間を見てもそう変わりはなかったからこそ言える言葉だと思っている。

 どんなに清廉潔白な人間も、最初は綺麗な言葉を吐いて並べ立て、神にその身を捧げながら生きていると宣って、神を信じていれば救われると本気で祈っていた人間なんかも。

 己に不利益が生じたり、いざ己が理不尽な死を遂げようとなった時。

 絶望と憎しみを身の内で業火のように燃やしながら、命の一滴を失うその時まで、何もしてはくれない神に救いを乞い、伸ばした手が決して取られないと分かった瞬間。

 愚かな人間は己が勝手に信じて、己を救ってくれなかった神を呪いながら絶望の中、死んでいく。

 そんな人間は地獄に堕ちるに決まっているのにね?


 人間というものはそういう身勝手で疎かで、浅ましい、そんな生き物。

 そういう憐れなまでに可愛い生き物が、神が創った人間という『欠陥品』。


 そう。僕にとっての『運命』の刻が来るまでは、確かに思っていた。


 これは僕という悪魔が、いとしい魔女に出逢う為だけに用意された血生臭い物語。

 愛を知った悪魔の、慣れの果て。

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