子ども編 賢人の悩み


 『ビーヘイバー』が終わって10月になり、小中学生たちは鎌倉の砂浜でゴミ拾いをしていた。温泉小4年生の高原賢人は温水に34歳の男と自分の43歳の母が付き合っていることを話していた。

 「お母さんは職場のコンビニエンスストアで店長さんから渡される8万円を、僕に暴言を吐く男に渡しているんです」賢人は集め終えた弁当の容器やストローなどのゴミをビニール袋に袋に入れ、温水に渡す。

「亮介先生のバンド仲間で、『子ども食堂 キンモクセイ』で和食を作る男性に話すのはどうだ?」賢人は「はい」と嬉しそうに答えた。


            

 賢人は入り口の机にキンモクセイの花が置かれている『子ども食堂 キンモクセイ』でエビの天ぷらや豆腐とネギ入りのみそ汁などを食べながら、茶色の短髪で初対面の相手には「聡明の聡だ」と言う30歳の倉田聡に「僕が4歳の時から母と付き合っている34歳の男に『家から出ていけ‼』と言われるので、家に帰るのが怖いんです」と言った。

 

 聡は豆腐とネギ入りのみそ汁を入れたお椀を賢人の前に置き、「鎌倉警察署の秋次郎さんや男性警察官からも、男のことを聞いた。

 男は銭湯高校を卒業後、雑貨屋やCDショップなどで働いていたが激高すると客を

蹴ろうとすることが多く、24歳で無職になった。

 2週間前には温泉小の野球部で20個のボールを打ち終えたマオの足に軽傷を負わせ、校門前で怒鳴っていた」とため息をつく。

 「家には帰らず、夜は鎌倉警察署の2階で過ごしたほうがいい。秋次郎さんや俺、明人たちも見回りをする」聡は賢人の肩をたたいて言った。

 「ありがとうございます」賢人は豆腐とネギ入りのみそ汁とエビの天ぷらを食べ終え、机と食器を拭いてから『子ども食堂 キンモクセイ』を出た。

 


 「(温水先生と聡さんに相談して良かった)」寝間着に着替えた賢人は鎌倉警察署の2階でリュックサックから出した小説を読み終え、ベッドで寝息を立て始める。

 夜10時。聡の「待て!」という怒鳴り声と男が走る音に飛び起き、窓の外を見ると聡が男を失神させるのが見えた。


 

 ―――翌朝。鎌倉警察署の1階で短髪を緑色に染め、黒い長袖シャツと灰色のジーンズを着た美容師の男性が「賢人、こんにちは。僕は温泉さん。温泉好きだからそう呼ばれるよ」と言いながら賢人を椅子に座らせ、髪をハサミで短く切り始めた。


 「肩まで伸びてるね」「髪切ってもらったことがなくて」賢人が小声で答えると、温泉さんは「ふーん」と言いながら賢人の髪をシャンプーで洗い、緑色のタオルで拭いた。

 「切り終わったよ」温泉さんは賢人の首から紺色のタオルを外す。「ありがとうございます」

 賢人は5センチの長さになった短髪を指で触りながら、「シャンプーされてる時、寝てました」と恥ずかしそうに言った。

 



 

 


 

 


 

 




 


 







 


 

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