強一と土産
『ビーヘイバー』最終日の9月30日。ワインレッドのブックカバーを持ったメンフクロウが描かれたエプロンを着た強一は土産屋で紙袋に入れた水色の手ぬぐいと髪留めを50代の男性とその妻に渡し終え、店主の男性に電卓で売り上げを見せていた。
「売り上げは12万。手ぬぐいと髪留めを買う人が多かった」男性は売り上げをノートに書くと、強一に現金4万円が入った封筒とようかん10本が入った箱を渡す。
「ありがとうございました。明日も来ます!」と言う強一に、男性は「明日は休日」と笑みを見せた。
夕方5時に帰宅すると、父方の祖父で75歳の箋蔵と22歳の兄慎一が黒髪をツユクサの形の髪留めで結んだ温泉小2年1組の北見海子、その養父母とイチゴ大福を食べていた。
「ようかん、じょうぎ。ただいま」強一になでられた2匹は「ワン!」「ニャ」と
鳴き体を伸ばす。
不安そうに強一や箋蔵たちを見ている海子のひたいに、メスの黒柴ようかんが「(こんにちは)」と匂いをかいで鼻をつける。
強一は海子に笑みを見せる。「はじめまして海子ちゃん、俺は強一。オス猫のじょうぎをなでてみてくれ」
海子に首をなでられ、じょうぎはあくびをしながら彼女のひざに足を乗せた。満面の笑みを見せ、じょうぎのあごや背中もなでる海子。それを見た養父母が「海子がうれしそうな顔してるぞ」「猫が好きなのね」と小声で言う。
養父が濃い茶色のソファーの上で寝息を立てるじょうぎの首をなでた後、太いしっぽを持つオス猫とメンフクロウの羽が描かれた便箋と封筒を持って妻と一緒にレジの前に並ぶ。
「ありがとうございます。またのご来店、お待ちしています」強一は二人に1000円札2枚と100円玉3枚を渡し、頭を下げる。
海子は満面の笑みを浮かべてじょうぎとようかんに手を振り、両親と一緒に駅に向かって行った。
テントや本などをリュックサックにしまい終え、帰宅した亮介たちが田原家の居間に入る。
居間で掃除機をかけていた明人が「聡と勇樹が台所できんぴらごぼうとサンマの塩焼き作ってる」と言った。
「アントニオは鎌倉警察署を出た後、俺や他の人たちと一緒に和食店で働くと言っていた」と言いながら、聡がたい焼き屋で買った抹茶の餡入りたい焼きを亮介に渡す。
「美月に銀の三日月の髪留めは渡したか?」「ああ。温泉小や『紫いもタルト』のライブハウスでも、あれで背中まである髪を結んでる」
亮介が答えると、聡はきんぴらごぼうとサンマの塩焼きを食べながら「美月は『ビーヘイバー』が終わった後、驚いていた」と笑みを見せた。
「髪留めを買った日の夕方、わたくしと直美にバレそうになったんです」「タルト‼」亮介が顔を赤くしながら小声で言うと、掃除機をかけ終えた明人と真が噴き出した。
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