メンフクロウのムートと知子の古本屋
僕は小町通りの古本屋で女性店主の町原知子と一緒に暮らすメンフクロウのムート。僕が「(児童書を持った小学生の男子が来てるよ‼)」と机の上に積まれた40冊の本を読んでいる知子に向かって鳴くと、顔を上げ男の子に笑みを見せた。
「300円です。ありがとうございます」男の子は300円を知子に渡し、14歳の姉と
一緒に鎌倉駅に向かった。
知子は『本がないと落ち着かない』と言って、毎日40冊の本を買い古本屋内で読んでいる。読み始めると本を買いに来たお客さんが来ていても気づきにくく、僕が
硬貨や1000円、5000円札などをレジに入れることも多い。
本屋が閉まっていた時は自宅にあった200冊の本を読みふけっていたらしい。外に行くことが減って本を読む人が増え、この店にも小中学生や高校生たちが多く来るようになっている。
ネモフィラやイチゴ大福の形のしおりを机の上に置いていると、児童書を買ってくれた男の子が店内に入って来て木でできたコースターを僕に渡し「ムートが渡してくれる本、買った後に読みふけってるよ!」と満面の笑みを浮かべて言い、手を振りながらアイスクリーム屋の前にいた姉のところに戻っていった。
丸い机の上に止まってあくびをしていると、亮介さんと直美ちゃんが店内に入って来た。読書好きで、学校だけでなく自宅でも本を読んでいる。
「『ビーヘイバー』で、美月に髪留めを渡した」亮介さんが知子の淹れた紅茶を飲みながら言う。直美が父の肩をたたいて笑みを見せると、亮介は照れくさそうに塩せんべいを食べる。
「温泉小のカウンセラー、ジル先生が落ち込むと豪雨、雷雨、大雨が降ると言われている。
今年の5月に相談に来た小6の男子から、『前向きな先生が大嫌い!』って泣かれた後に雷雨が降り始め、ジル先生はカウンセリングルームに4週間来ていなかった。
その子は自宅で父親に『帰ってくるな!』と言われながら殴られ、同級生から
バケツに入った泥水を顔や服にかけられていたと彼女に話し、謝った。
ジル先生は話を聞き終えた後に泣きながら、『大嫌いって言われて悲しかった。
カウンセリングルームに来られない』ってタオルで顔を拭きながら言った。豪雨が降り始め、俺や美月、キャスィー先生たちは温泉小に泊まった」
「ジル先生は7月になるまで職員室にも姿を見せず、自宅にも戻らなかった。俺は美月とジュード先生や野球部のマオたち、源泉中のカウンセラー温水先生と鎌倉駅の周りを2週間歩き回った。
小町通りの雑貨屋で椅子に座っていた彼女にジュード先生が駆け寄り、号泣した」
亮介さんが話し終えた時、ジル先生が店内に入って来た。僕は首を回した後、イチゴ大福を食べ満面の笑みを見せる彼女に抹茶アイスの形のしおりを2枚渡した。
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