第38話 妖精木

 「王都に屋敷用の土地を貰ったんだ。そうだ未だ秘密だけれどハイド男爵が子爵に、エスコンティ伯爵が侯爵にそれぞれ陞爵したんだよ。で俺は伯爵に授爵で王都に土地を貰って年金貴族って事にされてしまったんだよ」

 

 「それはおめでとう御座います」

 

 「俺の事は貴族扱いしなくて良い今まで通りで頼むよ。未だ連絡が来てないと思うから黙ってて、侯爵様と子爵様にはお祝いを当日に渡したから改めては必要ないよ」


 ノイエマンが図面を持って来るまでヤーナにお茶を貰って先ほどノイエマンに伝えた事をヤーナにも説明した。

 

 「ヤーナ今メイド達は何人居る、俺のやり方に慣れた者を何人か王都の新しい家に来て貰いたいんだ。取り合えずは宰相陛下に頼んで人を世話して貰うから何とかなると思うし」

 

 「新に五人程雇っていますがもう少し増やしておきますね」

 

 「それとハイド子爵がアラモナの領主に為ったんだが、元の領主が取り潰しになっていて屋敷は最低限の人数で維持されている。だから人手が必要になるかも知れないから多めに雇っておいてね。侯爵様も人手を出すと言っているけど多分足りないと思う、領地と王都の二カ所の屋敷だからねー。陛下の野郎面倒事を押し付けやがって、糞!」

 

 ヤーナは賢明にも最後の言葉は聞かなかった事にする

 ノイエマンの差し出す図面を受け取ると夜の闇に紛れて王都に向けて飛び立った。

 帰りは慣れて二日で帰り着いた。

 

 「ウーニャただいまー、上手くやってる」

 

 「アルお帰り。宰相陛下からの使いが来たが戻り次第連絡すると伝えておいたよ」

 

 「あぁ王都の事情に詳しい執事が欲しいとお願いしておいたんだ。貴族風を吹かさない気さくな人をね。明日行ってみるよ」

 

 宰相閣下の紹介してくれた執事はエドルマンと名乗り、虎人族とエルフ族とのハーフで2メートル以上の隆々とした体格だった。

 見掛けは虎人族だがエルフの血のせいで結構な歳らしいが壮年に見える、歳は教えてくれなかった。

 翌日貰った土地に来て貰いウーニャ達を紹介した後家の図面を見せ意見を聞く。

 伯爵としての体面は必要無い無視しろ、小金持ち程度の内装で簡素で実用優先な造りにしたいのだと説明する。

 図面を見ていたエドルマンは建物の左右を一部屋づつ増やし部屋と廊下を少し広げれば王都で通用する屋敷になりますと答える。

 

 エドルマンに正門の位置を決めさせて60センチ程の門柱を土魔法で造る、塀が5メートルなので門柱は8メートルで横に桟を入れ冠木門にした。

 驚くエドルマンを無視して屋敷建設予定地に行き、地面を平らに均し玄関の位置決めの後建物の外周を建てる。

 次は内壁を造り部屋毎に仕切りを入れる、大きさの調整をした後天井を張る。次々と部屋が出来天井を張り最後に緩やかな屋根を造って終わり。

 一度造っているので慣れもあるから早かった、地下の食料庫と酒蔵も抜かり無い。

 

 呆けているエドルマンに内装は業者を選定して希望の様に仕上げる様に命じる。

 明日業者を呼びますとの返答で明日に概算の予算を決めて貰って工事に掛かることにする。

 忘れていたフィーィ達の住む家を建てなきゃと直径8メートル高さ30メートルで上を6メートルと少し絞った円柱を建てる。

 

 「之はなんで御座いますか」

 

 「あぁ忘れていた紹介するよ」

 

 《フィーィ、フィーェ居るかい》

 

 《居るよアール何かな》

 

 《紹介したいので来て欲しいんだが》

 

 俺の横に突然現れたフィーィ達妖精族の面々に驚き退け反るエドルマン。

 

 「紹介するよ俺と友誼を結んでいて共に在る妖精族の一族だ。一族と言っても集団や集落の事だがね」

 

 妖精族との会話に必要な方法を教えエドルマンに目を閉じさせる。

 フィーィが額に手を当て暫くして離れる。

 

 《フィーィだよ判る》

 

 「はっは、はい判ります」

 

 「声に出しても彼等には理解出来ないよ。心の中で考え語り掛ければ良いよ」

 

 そうして驚愕の表情のエドルマンが疲れた顔で帰って行った。

 

 エドルマンは内装関係者を先ず俺に会わせ希望を伝えさせた。

 簡素で実用的な小金持ち程度の見栄えで良いが材料は吟味し、室内は全て板張りで暖炉風のストーブ以外剥き出しの壁の無い様にと伝えた。

 

 内装関係者の一人が大量に木材が必要になるが王都内から調達すると値上がりして高額になると言われた。

 建物の前に業者を連れて行き空間収納に保存している大小様々な木を大量に出して見せ、この程度有れば足りるかな。

 業者が目を剥いて取り出した巨木を見ているが

、もっと目を剥いて見ていたのがエドルマンで在る。

 エドルマンは震える足で近寄りマジマジと見つめ震える手で取り出したのは、漆黒に所々白い筋が入った固い木だ。

 太さはさほどないが長さ10メートル程の木3本の匂いを嗅いで頷くと、慎重に運んで別にの場所に置く。

 

 「アルバート様之は」

 

 オイオイ声まで震えているよ、この木はどうしたのかと尋ねてくる。

 

 「この漆黒に所々白い筋の付いた木は香木です。之は妖精木とか妖精香と呼ばれ、流木で極たまに見つかる珍品中の珍品です。見つかればオークションに掛けられ直ぐに消えていきます。

 今現在確実なのは王家の宝物殿に小枝か小片が保存されているだけです」

 

 またまた面倒な物が見つかったぞ。

 と言うか初見でそんな珍品を良く知っていたな。

 

 「之はフィーィ達妖精族が好む香りを持つ木でな時々彼等は燻らせて楽しんでいるぞ。たまたま森で見つけたので頼まれて三本程仕舞って置いたんだ。フィーィ達も短い木を持っていて時々削った物を燻らして楽しんでいるな」

 はぁーっと、エドルマン大きな溜め息を吐いている。

 

 そんな事より出した木を業者に確認すると、之ほどの巨木を多数見るのは初めてだと感心している。

 直径6~9メートル程度の巨木がゴロゴロと転がっているからな、本数は知らないが全て立ち枯れた物だから直ぐに使えるだろう。

 結局製材の為に俺が材木商の所に運び製材して貰うが、俺の処に必要分を出した後は高値で引き取る事で合意した。

 

 内装関係者に出させた見積りで二人の業者を選び、一階と二階を一人の業者に遣らせ三階をもう一人の業者に決め全ての階は同一素材で造ると決めた。

 必要になれば三階のメイド達の部屋を客間に改装出来る様にだそうだ。

 

 必要な使用人達はコック、メイド長、厩番や御者等主要者をエドルマンに任せることにした。

 メイドは慣れた者を数人エルクハイムから呼ぶのでメイド長か補佐に回し、その他のメイドや馬丁や庭師、警備員はベテランが現在集めて教育している者達を鍛える事にした。

 出来ればハイド子爵に斡旋する者も鍛える様にしたいと考えている。

 

 内装工事が始まる前にエドルマンを連れて商業ギルドに行き、エドルマンが管理出来る口座を開設して金貨5.000枚分五億ダーラを入金した。

 報告は俺が居る時には週一で収支報告書を見せれば後は任せると告げる。

 ふっふっふ、之で面倒事はエドルマンに丸投げだ。

 

 商業ギルドを出るとエドルマンが二つ程早急に決めて欲しい事が在ると言いだした。

 ひとつは苗字と今一は家紋を制定して欲しい、どちらも要らぬ揉め事を避ける為にも必要だと説得された。

 名前はショーゴ・アルバートだ鳴海翔梧からだが、万一転位者か転生者が居ればショーゴで気付くかも知れないから。

 家紋は円を四つ組み合わせた物で上下に二つの輪を接触させ、もう一つは左右に輪を接触させた物を重ね四つの輪が重なり合う家紋に決めた。

 勿論日本の我が家の家紋だ由来は知らない!興味が無かったのだ。

 之も日本の家紋を知る者が見ればヒントに、なるだろうと思うから。

 

 翌日エドルマンが王宮に出向き名前と家紋を登録してきた、之で正式にショーゴ・アルバートとなりアルバート伯爵と呼ばれる。

 家紋を見れば伯爵位に在ると一目で判るらしい。

 

 内装工事に来た三階を受け持つ御者に、フィーィ達の部屋で在る塔の内装工事を先にやって貰う。

 一階は土間で高さ2メートル程それからは各階の高さは床から天井まで60センチ時々高さ90センチの部屋を造り、壁際に1メートル四方の穴が二つ並んでいる物だ。

 穴は登りと下り専用の通路だ、妖精族に階段など不要で上下移動は穴に飛び込めば良し。

 天井には縦横に桟を張り巡らしハンモックを架けやすい様に工夫している。

 業者もフィーィ達妖精族を見て微笑んで工事に掛かった。 

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