異世界から帰還したらゾンビパニック化した世界になっていた・・・ここってホントに元いた世界??(仮)

ha-nico

第1話 邂逅

「ん・・・朝・・??いや、寝すぎたな・・・もう昼前くらいかな?」


眠りに就く前は月明かりが差し込んでいた高窓から、眩しい太陽の日差しが入り俺の顔を照らしてた。高窓は南西の方向に付いているため、太陽の位置から朝方ではないことは何となく分かった。


目をこすりマットから起き上がり静まり返った学校に首を傾げた俺だったが、


「それにしても静かだな?ああ、そうか夏休みだったっけか。」


異世界に転移したその日は夏休みの中でもお盆の真っ只中で、部活もなく教師もいない時期だったことと、『だから死にかけたんだった』って事を思い出した。


「ったく、ろくでもない奴らだよな。」


転移する3日前にある女子生徒に体育館に呼び出された俺は、顔出した途端に複数人の陽キャたちに取り押さえられ倉庫ここに閉じ込められていた。『出してくれ!』とドアを叩いて必死に叫んでも、ゲラゲラと下品な笑い声を上げて去って行った陽キャたちを思い出し沸々と怒りが沸き上がった・・・が『ぐぅうう。』とこのタイミングで腹の虫が鳴った。


「あぁ。腹減ったな・・・。」


収納魔法ストレージ内に何か食い物あったっけか・・・。


俺は魔法を展開し空間に映し出された『アイテム』『武器』『防具』などの項目が並んでいるメニュー画面から『アイテム』を選択したが、その中には食べ物の類が一切無かった。


「く・・・そう言えば王国に着くから大丈夫だろうと前日に残りを全部食べちゃったんだった。」


まぁいい。魔法を使って家に戻っ・・・・・て、魔法!!そうだ魔法だ!!!回復魔法で妹の病気を治してやれるかもしれない!!!


そう言えば説明が遅れたが、体育館倉庫に閉じ込められた俺を心配する両親はいない・・・・わけじゃないが、仕事で海外にいるため俺が閉じ込められているという事を知らないわけだ。また、唯一いる妹は病気(病名は伏せておく・・・ただ、今すぐどうこうなってしまうってものではない事だけは伝えておこう。)で長期入院をしているため両親と同じく俺がここに閉じ込められている事を知らない。


まぁ・・俺が週一しか見舞いに行かなかったのも悪いのだが・・・。


しかしそんな病気の娘を日本に置いて、どうして両親が海外で仕事をしているのかと言うと『金』のためだ。


妹の病は手術を受ければ100%良くなるというものではないのに、その手術を受けるためにはとんでもなくお金が掛かるらしい・・・が、手術を受けさせたい両親はそのために海外で仕事をしていた。その事への不満は一切無かった・・・が、こうなるとも一切想像をしていなかったな・・・・・まぁいい!そのおかげで今の俺には魔法がある。


以前アルトシアで病に伏せた王妃を完全回復パーフェクトヒールで治した事もあった。


「おし!!メシは亜紀を治してからだ!」


俺はさっそく亜紀の病室を思い浮かべ空間にゲートの魔法を展開した。目の前に現れた丸みを帯びた真っ黒な楕円の入り口は、何故か俺以外が入ろうとすると弾き返される代物だった。あとで解明しなくちゃな・・そんな事を考えながらゲートの中に入った。


**


「あれ?」


ちゃんと亜紀の病室に移動出来た・・・が、亜紀の姿はそこに無かった。


「何があったんだ?」


亜紀だけじゃなく寝ていたベッドも室内には無く、パーテーションや椅子は無造作に倒れ、綺麗な花が飾ってあった花瓶は無惨に割れて床に散らばっていた。


亜紀のお気に入りのクマのぬいぐるみが床に落ちている事に気づき、拾い上げてストレージにしまった俺は看護師に『亜紀をどこに移動させたのか?』と聞こうと一旦病室から廊下に出た。


「え・・・・??」


しかし、廊下もカルテなどの書類や薬品などが乱雑に散らばっていた。


「!?」


さらによく見ると壁や床にはあちこちに血が飛び散った痕がある。異常な状況に息を呑んだ俺はとりあえずこの先にあるナースステーションへと足を向けた。


「いったい・・・どうなってるんだよ。」


歩きながら所々で扉が開いている病室を覗いてみるが、どこも亜紀のいた病室と同じように物は倒れ・・・そして誰もいなかった。


だが、ナースステーションが見えてくるとそこで動いている人影が目に入った。


「誰かいる!看護師さんかな?」


早く詳しい事情を知りたかった俺は、早足でナースステーションに辿り着くと中にいた看護師に声を掛けた。


「すいません。ここで何があったんですか??」


「・・・あぁああああ・・・ああ・・・あ?」


どこか様子のおかしい女性の看護師が変な声を発しながらこちらに振り返ると、その看護師の左肩はガバッと大きく削り取られていて、そこから流れた思われる真っ赤な血で白衣を汚していた。


「ああ~あ・・あああ。」


引き継きおかしな声を上げながらヨタヨタと近づいて来た看護師の顔や体の皮膚は、ボコボコと血管が浮き出て色は青く、瞳の色は黄色に変色していた。その様相に一瞬ゾクッ!と背筋が凍るような感覚を覚えたが、異世界でそれなりにハードな経験してきた俺は慌てる事無くとりあえず看護師を『鑑定』してみることにした。


ここで『大丈夫ですか?』などと言って近づくような安易な行動はしない。


『鑑定』


**************************

氏名:unknown

称号:感染者・生ける屍

種別:ゾンビ

性別:女性

LV:3

HP:58/97

MP:9/9

魔 法:empty

状 態:飢餓

特 性:噛み付き・伝染・無痛

**************************



「は??・・・・・ゾンビ??・・・ここ・・本当に元いた世界にほんか?」



______________________________

2020/2/17 誤字報告いただきまして訂正致しましたm(_ _"m)

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