異世界から帰還したらゾンビパニック化した世界になっていた・・・ここってホントに元いた世界??(仮)
ha-nico
プロローグ 帰還者
「何を言ってるんだ?」
『ですから、これからあなたを元の世界にお送りいたします。本当にありがとう、カイリ。ではお元気で。』
「は?おい!ちょっと、待っ!?!?」
**
異世界に転移してから5年・・・俺はやっとの思いで邪神を倒しアルトシアという名の世界を救った。
さっさとゲートの魔法を使って王国に戻りたかったのだが、お決まりのように信徒が攫っていたという王国の姫が禍々しい神殿の最奥の部屋に軟禁されていた。
面倒なのは俺のゲートは行きたい場所(行った事がある場所に)に一瞬で移動することが出来る便利なものなのだが・・・自分以外には使用できないおひとり様用の魔法だった事だ。
ポ○イのオリー○といい、マ○オのピー○姫といい、なんでそんなに簡単に攫われるかね・・・・。
しかし愚痴を言っても解決しないのと、結局知らない振りをして1人で王国に戻っても『姫を助けに行って来てくれ。』と王に頼まれるのだろうと思い、囚われの姫を無事救い出した俺は、その後姫を気遣いながら一か月近くかけて漸く王国を守る城壁の前に辿り着いた・・・・・なのに・・・そうだというのに・・・門を守っている兵士に声をかけようとしたその瞬間、俺をアルトシアに呼び出した女神が姿を現し強制的に俺を元いた世界へと送り返しやがった。
俺は何とかその愚行を止めるべく必死に手を伸ばしたのだが・・・その手は女神には届かず気づけば虚しく宙を彷徨っていた。
そして・・・背中に感じるのは懐かしき高校の体育館倉庫の冷たい床の感触だった。
「おわっ!?」
目をパチパチさせているといきなり視界がぐにゃりと歪む感覚に襲われ驚いた・・・・が、その原因はかけている度の強いメガネである事に気づいた。
外して無造作に投げ捨ててやったが、驚いた拍子に上半身を起こしていた俺はあらためて周囲を見渡してみると、鉄製の籠に入ったバスケットボールやバレーボール、跳び箱にマット、そして折りたたまれた卓球台が目に入り独特な臭いが鼻を突いた。うん、元の世界だ。
「くそっ!!あの野郎!!!」
俺は女神の勝手な行為に怒りがこみ上がると思わず拳を床に叩きつけてしまった。
ドコォッ!!
「あ・・・。」
しまった・・・タイル敷の床が陥没している。そこまで力を込めたつもりはなかったのだが・・・・
『あなたの能力はそのままに、年齢だけ元に戻しておきますので。』
陥没した床を眺めながら送還前の女神の言葉を思い出した俺は、恐る恐る手を前に差し出し・・・
「・・・ステータスオープン・・・・。」
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氏名:碧海 海里(あおみ かいり)
称号:異界の勇者・救世主・帰還者・高校生
種別:人間(日本人)
年齢:16
性別:男
LV:286
HP:76248661/76248661
MP:96427989/96427989
力 :7975
体 力:8912
素早さ:7814
攻撃力:8821
守備力:9633
魔 力:9105
魔 法:火・水・土・雷・風・回復・時空
スキル:LV無限・創造・鑑定・収納
状 態:疲労
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目の前の空間に浮かび上がった見慣れた文字の羅列にため息を吐いた。
「ホントに出たし・・・・それにしても帰還者だと?ふざけやがって・・・ってか、キツイんだけど。」
強制送還しておいてどういう了見だ・・・と、また女神への怒りが沸いてきたがそれ以上に異世界で散々鍛えた体には窮屈な学ランの方が気になってしまった。
よく見ると前ボタンが律儀に全部閉められている。
「真面目か。」
以前の自分にツッコミを入れながら、片手でボタンを乱暴に全て外してやった。腕回りがまだちょっとキツイがさっきよりはだいぶラクになった。
元々異世界に転移する前の俺は、前髪は眉毛が隠れるほど長く、地味な度の強いメガネをかけ痩せ細っていた陰キャだった。向こうでは『カイリ』とステータス画面に表示されていた名前が本名に戻っていたので、陽キャたちから『ウミウミ(海という字が並んでいるから)』と呼ばれて馬鹿にされていたのを思い出し・・
「はぁ・・・そういやここに閉じ込められたんだっけか。」
さらに転移前に陽キャ達に騙されてここ(体育館倉庫)に閉じ込められて死にかけたところを女神に救われた・・・という嫌な事を思い出してしまった。
「まぁ・・命を救われたから許してやるか・・・。」
だが、強制送還されたとはいえ彼女に命を救われた事は確かだった。高窓から入って来る月明かりに目を向けその事を思いながらそう呟いた後、ステータス画面にもあったように長期移動で疲労困憊だった俺は
「丁度いいや・・・疲れたしここで休も・・・。」
跳び箱の隣りにある厚み30cmほどの体操用マットに飛び込み、ゴロゴロと寝転がっては大の字になると、睡魔に襲われた俺は逆らう事無く独特なカビ臭い空気を吸い込みゆっくりと瞼を閉じた。
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