贖罪の刻

「あれ?ここは…」

末離が目を覚ますと真っ黒な空間にいた。

ただ目の前には白い空間が見える。そこには見覚えのある白い少女がいた。


白い少女はただ考えていた。自身の悪いところを。

「どうして?私はお兄ちゃんのために頑張ったよ…」

ただ一人、思考を巡らせていた。

「私が悪い子だから…悪い子でゴメンナサイ!」

ふと白い少女は顔を上げた。

「ハハ、そうだ。悪い私なんかどっかに消えちゃえ!」

そう叫ぶと白い少女から黒い煙が上がり、やがてそれは一つのヒトガタとなった。

それは…

末離を、同じ顔で、見つめていた。


これは紛れもなく。あの悪魔の記憶だと思った末離は考えた。以前、最初の女神が生まれた所以は聞いていた。妹を助けるために兄が妹を裏切るお話。あの悪魔は最初の女神から生まれた悪意って言っていた。でも、これって本当は…

今までの自分だからこそわかる。アレは悪意じゃない。

「あの悪魔は悪意じゃない。最初の女神が兄に対して思っていた罪悪感。それを悪意のせいにして全部投げ出しただけ。」


目が覚めるとあの廊下にいた。それほど時間は経っていないようだ。

「末離!大丈夫?!」

お姉ちゃんが問いかける。目の前ではお兄ちゃんと悪魔が戦っていた。私は立ち上がり、お兄ちゃんに言った。

「大丈夫。私はアレを受け入れる。」

「末離…」

「受け入れるダと…?はハハは、バカなのか?オマエの嫌いな悪者ダぞ。」

悪魔はそういうけど、私はもう確信している。

「貴方は“悪意”なんかじゃない。貴方は“罪悪感”よ。」

「罪悪感ダと…」

「そう。最初の女神が兄に裏切られた。彼女は最初に兄を疑うことはせずに自分が悪いからこうなったと思い込んだ。その思い込みから生まれたのがあなたなの。彼女が自分に無いはずの“創られた悪意”、そうでしょ?」

「…………」

悪魔は黙り込んだ。

「ソうなのか。ワタシは存在シないのか。」

「そう。でも、私は贖罪を背負うって決めたから、貴方の罪悪感も全部背負ってあげる。貴方がもう苦しまなくていいように…。」

「………“罪悪感“…、ソうだ、ワタシは悲シかった。何モ信じらレなくなった。ワタシはオニイチャンを信じタかった。」

その瞬間、悪魔の胸元が輝き、1枚の紙が現れた。そこに書かれていたのは、


「私の何が悪かったの?

 お兄ちゃんはどうして私を………


 知りたい知りたい知りたい

 私のどこが悪かったのですか?


 教えて教えて教えて

 お兄ちゃんは私が嫌いなの?



 私は………

 悪い子なの?


 反省するから、

 もう一度、私と暮らそう。

 何でもするから!

 お兄ちゃんの為なら!

 だから


 ごめんなさい 」


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