【腰痛勇者】〜腰痛で剣すら振れなくなったので、リモートワークで魔王を討伐します〜
地獄少年
<第1話>勇者
勇者は『勇者』として生まれてくるわけでは無い。
・剣と魔法の才能
・何があっても諦めない強い心
・高い志
・誰からも慕われる人望
ただ強いだけでは『勇者』を名乗る事は出来ない。
志が高いだけでもダメ。
あらゆる素質を持ち合わせているからこそ、魔王を討伐できる『勇者』として認められる存在となる。
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田舎生まれの少年は、幼少期から剣と魔法の才能が飛び抜けていた。
少年のウワサは王都にも伝わり、王立学園への入学が認められる。
・王立剣術学園、首席で卒業(飛び級)
・王立魔法学園、首席で卒業(飛び級)
少年の“飛び抜けた才能“は、学園に通うことによって更に洗練され大きく成長させることができた。
剣術学園と魔法学園。
どちらか一方を卒業するだけでも一目置かれる存在であるのだが、少年は両方の学園を主席で卒業するという偉業を達成した。
両学園を主席で卒業できたのは、単に少年の才能が飛び抜けていたからではない。
少年は学園に通うようになった頃から【魔王討伐】を真剣に考えるようになる。
他の生徒は、ただ学園を卒業することだけを目標にしていた。
【魔王討伐】を目標にしていた少年は、他の追随を許さぬほどの実力を身に付けていく。
飛び抜けた才能と高い目標が相乗効果を生み、両学園を主席で卒業できるほどの実力を身に付けることができたのだった。
少年は剣と魔法の実力はもちろん【魔王討伐】の志も飛び抜けていたのだ。
そして、彼は誰よりも『人格者』であった。
弱い者への労り、周囲の人間への気遣い、汚れ仕事・雑用さえも進んで行う。
その姿勢は全ての生徒の模範だった。
いつの頃からか、少年は『勇者』と呼ばれるようになっていた。
もちろん、この世界における『勇者』とは魔王を討伐できる強き存在のこと。
18歳。
剣術学園と魔法学園を卒業すると同時に、少年は国王から正式に『勇者』の称号を与えられ魔王討伐の任務を与えられた。
少年は、名実ともに『勇者』となった。
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それから1年後。
19歳になった勇者は、魔王討伐のために剣と魔法の訓練に明け暮れていた。
ある日、勇者は新しい剣を用意してもらうことにした。
剣術学園入学時から愛用していた剣が老朽化してきたからだ。
新しい剣は今までの剣よりも少し長く、少し重い。
当然、魔王討伐のために威力を増すことを目的とした仕様変更だった。
素振りを繰り返し新しい剣を体に馴染ませる。
1ヶ月経ったところで、実践形式の訓練に移った。
「うっ……」
いつも通りに剣を振り切った時、勇者の腰に激痛が走った。
(なんだ、この痛みは!?)
今までに経験したことの無い痛みだった。
激しい痛みのあまり踏ん張ることが出来ず、そのまま床に倒れてしまった。
腰や背中に激痛が走る。
足腰に力が入らない。
自力で立ち上がることが出来ない……。
勇者は、重度の腰痛を患ってしまったのだった。
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