ファミコンの思い出
ジュン
第1話
「広井くんって子どもの頃ゲームとかした?」
三咲がきいた。
「ゲームって、テレビゲーム?」
「うん」
「したよ。僕が子どもだった頃はテレビゲームの黄金期だったからなあ」
「ファミコンとか?」
「そう。ファミコンと言えば……」
「ファミコンと言えば何なの?何か思い出があるの?」
「うん……」
「…………」
「チュンソフトってゲームソフトのメーカーが『弟切草』ってソフトを出したんだよ」
「『弟切草』……。なんか聞いたことあるような……」
「かもね。『サウンドノベル』ってジャンルを作った先駆けなんだ。社会現象にもなった。『弟切草』は、映像作品や舞台化もされたんだよ」
「へえ。どんな内容?」
「それが、『クリア』できなかったんだよ。あまりにも恐すぎて」
「そうなんだ……。広井くんが子どもの頃ってことは、二十年以上前……。『弟切草』ってレトロゲームになったんだ、今から見れば」
「いや、レトロゲームじゃないかもしれない。不朽の名作だと思うね、あの作品は」
「へえ」
「今でも憶えてる。あまりにも恐くて、夏なのにパーカー着てやってたよ」
「そうなんだ。よっぽどの作品なんだね」
「一人でやってると、恐くて続けられない。森のなかで迷子になってしまった子どもの心境だ」
「ははは」
三咲は苦笑したのだった。
ファミコンの思い出 ジュン @mizukubo
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