赤ずきん8
━━━放課後になった教室━━━
「よっ、もう帰るのか?奥さんを待たなくて良いのか?」
だから、奥さんじゃないって━━━
「杏璃は生徒会に行ったよ。俺はこれからバイトだよ」
「そうか。でも、よく趣味に合ったバイト先見つけたよな。東京ぐらいだと思ってたよ」
「それじゃー行くよ。バイトに遅刻しちゃうからな」
「あぁ、また明日な」
━━━━童話喫茶・子ウサギの隠れ家━━━━
チリンチリンとドアのベルが鳴る。
「おはようございます」
今入ったお店がバイトをやってる『童話喫茶・子ウサギの隠れ家』である。
ここは童話に出てくるようなファンタジーの内装で80%が女性のお客様だ。
たまに俺が通う学校や他の学校の女子生徒も来る。
それに限ってほぼ100%の確率で俺が名指しで呼ばれる。店長マスターによると「名前と顔が良いからだろう」と言われてしまった。
ついでに高校卒業してからも働いてくれないかと
俺がバイトに入ってから売上がおよそ3割上がったらしい。
「おはよう、早く着替えて入ってくれ」
いつもは平日の夕方は空いてるのだが、今日はお客が入ってる。
「おっ、やっと来たな。王子様よ」
「だから、何度も読み方が違うと言ったら分かるんですか?三浦先輩」
「本来だと合ってるだろう?」
「確かにそれを言われると弱いですが━━━━ですが、止めてください。それより、今日は生徒会があるのでは?」
「むぅ~、じゃあ妥協して天童で良いだろう。生徒会はあいつらに任せてきたぞ。わっはははは」
今、俺と話してる彼女は三浦沙織、俺の学校の三年で生徒会長だ。この童話喫茶・子ウサギの隠れ家の
三浦先輩のモットーは楽しそうな事とお金になりそうな事を積極的に挑戦する事だ。
生徒会に入ったのも楽しそうだからというのが、理由らしい。
三浦先輩を一言で表すなら天真爛漫・猪突猛進であろう。
「わははははっ、私の紹介ありがとう。最後の一言は余計だな」
「痛い痛いですよ。何するんですか」
「いや、ただムカついただけだ。気にするな。それより、着替えなくて良いのか?」
「あ、いっけね」
「わっはははは、ホールで待ってるからな」
更衣室に入り、ロッカーを開けると新たな衣装が入っていた。その衣装を手に取り慣れた手つきで着替えていく。
今月の衣装は不思議の国のアリスで俺は帽子屋みたいだ。
ここでは、毎月毎に童話のキャラのコスプレをする事になっている。
「お待たせしました」
「やっと来たか。早く接客してこい。さっきからお前さんを名指しで呼んでるぞ」
「お待たせ致しました。お呼び頂きあり━━━」
「きゃぁぁー、王子様が本当にいたー」
「なっ、本当に居ただろう。よっ、久しぶりだな。
「あ、握手してください」
「あっ、はい」
幼馴染の正面に座る女性と握手する。
「きゃぁぁー、王子様と握手しちゃった。夢のよう」
握手しただけなのに目がとろんと蕩けてる。そんなに嬉しいのか?
「ぶっくくく、
鼻の下伸びてねぇし。
「はぁ、何でここにいるんだ?渚の学校は隣町で寮暮らしのはずだろう」
「オレの学校は創設記念日とかで一週間休みなんだよ。それで実家に今戻ってる。それで、たまにはオレの家に来ないか?杏璃や杏も来ても良いぞ」
この偉そうな彼女は幼馴染の一人で名前は小鳥遊渚、今は隣町の高校で寮暮らしをしている。昔は俗に言うガキ大将で良く遊んだものだ。ガキ大将と言っても俺達幼馴染には優しいかっただけどな。
まぁ、小鳥遊渚を一言で表すなら、がさつで不器用だけど優しい。
「最後は余計だが紹介ありがとよ」
ん、もしかして、照れてる?
「照れてねぇーし、それにただの独り言だ。さっさとメニューを聞きやがれ」
「それで何を頼む?」
「オレはチョコレートケーキとカフェラテで雫は何頼む?」
「はっ、わ、私はアップルパイとカプチーノを頼みます」
「繰り返します。チョコレートケーキ一つ、カフェラテ一つ、アップルパイ一つ、カプチーノ一つでお間違いないでしょうか?」
「あぁ、早く持って来てくれ」
「あっ、はい大丈夫です」
「今お持ち致しますので、少々お待ち下さい」
厨房に行きカプチーノとカフェラテをカップに注ぎ、そこにラテアートを描く。それをデザートと一緒に運ぶ。
「お待たせしました。カフェラテとチョコレートケーキでございます」
「おぅ、サンキューな」
「カプチーノとアップルパイになります」
「あ、ありがとうございます。このラテアート可愛いですね」
「今月は不思議の国のアリスということで、ウサギと猫にしてみました」
カフェラテを猫、カプチーノをウサギのラテアートを描いてある。
「料理に関しては本当に器用だな。本当に変わらないな」
「お褒め頂き光栄です。どうぞ、ごゆっく━━━」
チリンチリン━━━
「いらっしゃいませ。おっ、杏璃ちゃん」
「マスター、こんにちわ。タカちゃんはいますか?」
杏璃が店長マスターに聞くと、こちらを指した。
「えっ!何でここにいるの?渚」
「よっ、久しぶりだな。杏璃」
渚がいる理由を簡潔にかくかくしかじかで杏璃に説明した。
「ふーん、びっくりしたけど、会えて嬉しいよ。杏も喜ぶんじゃないかな?なんせ昔はあんなに━━━」
「それ以上あの事は話すな!」
渚が席を立ち、杏璃の背後に回り口を塞ぐ。
「モゴモゴ━━━」
トントン━━杏璃が渚の腕をギブギブと叩く。
「ぷっはぁー、死ぬかと思ったー」
「あっ、悪い」
「それで、俺がバイト終わるまで待ってるんだろ?」
「ん、最初からそうするつもりだよ」
そう聞くと
「な、渚、王子様とあの彼女はどういう関係なの?」
雫はライバルが増えると焦り渚に質問する。
「オレと同じ幼馴染だよ。ただし、家族ぐるみの付き合いだがな」
そう聞いた雫は確率は低いが、まだチャンスはあると思いテーブル下で小さくガッツポーズした。
この後、
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