第1話
16歳の誕生日の朝に酷い頭痛で目を覚まし《一度目》の人生を全て思い出した私、須藤愛美は唐突に理解した。
これはニ回目の人生なんだと。
一度目の人生の時に流行っていた異世界転生ものの小説を思い出し、秘かに憧れていた私は、異世界転生出来たんだ!!とテンションを上げて小躍りしていた時に気づいた。
名前や姿形、それどころか両親や回りの人々さえも前の人生の時と全く同じだった事を。
異世界転生ではなく、タイムリープしたのかなぁ??と身体のあちこちを観察している時に手のひらを前に付き出したときに何かが放たれた。
「愛美~!?大丈夫!?」
その声と同時に私の部屋の扉が開け放たれた。
目の前には記憶よりも大分若くてキレイな母がいた。
「お母さん……??」
「何で幽霊でも見てるみたいな顔してるの?…っあ!!!能力覚醒したのね!?」
「能力…??」
母の言っている事が何か分からずにオウム返ししてしまう。
「愛美は魔術の才能が有りそうだって前々から感じてたんだけど、中々開花しないなぁって思ってたのよ!その分じゃぁ、自分の能力に気付いてないなぁ!?」
「えっ!?」
母が指差す方向を見ると、私が手のひらを向けていた辺り一帯がドロドロに溶けていた。
「ナニコレ!?」
「愛美は物を溶かす魔術の使い手に覚醒したのね~!おめでとう!!これで進路困らないわね!!」
「どう言うこと!?このドロドロ、私がやっちゃったの??それに困らないって…??今の所私の部屋の壁が溶けて外見えてて困ったことになってるけど…??」
「将来困らないって言うのはね、魔術の使い手は色々な会社から引く手数多って事よ。それにこんなちょっとの穴は………。《壁よ、蘇れ!!》」
母がドロドロに手を向けるとあっという間に巻き戻しでもしているかの様に蘇った。
「忘れてた??お母さんはね、蘇りの魔術の使い手なのよ」
と言いながらウインクをしてきた。
「お母さん……??この世界に魔術なんて有ったっけ…??」
「何言ってるのよ、この世界は魔術で満ちているじゃない。魔術師無しでどうやって生きていくの??魔術が無い人向けの学校でも少し勉強してるハズだけど…。それに家は魔術師を乱立させる血筋でお父さんも1級魔術師じゃない。魔術に覚醒する代わりに記憶喪失かしら……??」
そう言うと私の近くまで来て顔を覗き込んできた。
…凄く若々しい。20代と言っても通用しそう…。
「お母さん……??何か凄く綺麗…。」
「そりゃ~蘇りの魔術の応用で外見も内蔵も若返らせてるからね!…やっぱり何か変よ。何時も見てるじゃない。」
「…実は朝起きる時に酷い頭痛がしたの。そのせいで頭がまだクラクラしてるんだ」
慌てて誤魔化す。
何か一度目の人生を思い出してから記憶がごちゃごちゃしているんだよね
「それは大変!!覚醒時に力が大きすぎて力に飲み込まれちゃう人も居たらしいからすぐに病院行きましょ!学校には休む連絡いれとくから!着替えてご飯食べたらすぐに出発よ!」
そう言うとバタバタと私の部屋を後にした。
一人になると少し落ち着いてきて記憶を整理できた。
一度目の人生とダブついて何が何だか解らなくなっている部分も有るけど、段々と今の「私」と今の「世界」を思い出して来た。
一度目の人生の世界ととてもよく似ているけれど、この世界には魔術が有る。
そして科学も有って融合している。
そんな世界で私は…。
魔術師を数多く輩出している家系で有りながら魔力なしとして…。
ーーーー酷いイジメを受けていた。
前日に《何か》をしようとして、《誰か》に会おうとして街中フラフラしながらあれこれ考えててーーーどうしたんだっけ??
どうしても思い出せない。
《何か》も《誰か》も思い出せない。
思い出そうとするとまた酷い頭痛が襲ってきた。
フラフラするーーーー。
そしてまた意識を失ってしまった。
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