THE WAR
絶対に怯ませたいトゲキッス
第1話水戸真司
実年齢より3歳ほど若く見える童顔と、細く見える体のライン。だが、それら全てを台無しにするほどの子供っぽい立ち振る舞い。彼の名は、水戸真司。のちに世界に大旋風を巻き起こす男である。
「君の任務は、第4位と一緒に戦いーキーストーンを保護し、、、、本部へ」
小さい部屋に書類が散乱している机が一つと、安っぽいプラスチック椅子が二つ。ここはある特別な軍隊学校の面談室であった。
当の水戸真司はその話をろくすっぽ聞いてはいない。彼は目の前に置いてあるゲームに夢中である。
「はー。聞いてるか?水戸。」
頭を書類で軽くたたくが、一切といっていいほど反応がない。いま、水戸の目の前にいる教官は、スーツが似合わない筋骨隆々の体をしている40歳ぐらいの中年の男であった。が、水戸の前にあるたまごっちを容赦なく取り上げた。
「ちょ、!!!!!!!!あとちょっとでVIPだったのに負けちゃうじゃないですか!!!」
すぐに取り返そうとする水戸の手を華麗によけながら、長官は言う。
「任務の内容聞いてくれたらゲームやらせてやるから、な。そこに座れ。」
「レートは戻らないですけどね。」
凄まじく不服そうな顔をして、彼は椅子にドカッと座った。いつものような彼の振る舞いに教官はため息をつくが、すぐに業務へと戻る。
「ああ。本当だ。それで、初任務の内容だが、、、」
「わかってますよー。敵と戦えばいいんでしょう?」
その何もわかっていない能天気な言葉を聞いて、教官はいつものように頭を抱えた。本当にこいつは18なのだろうか。始めてあった時と本当に何も変わっていない。
「訓練の時と本当に変わってないじゃないか!!!!人の話を聞けと何回言えば分かるんだ!!!!!」
水戸はそのお小言を華麗に聞き流している。悪びれるそぶりすらない。こいつは、初任務だから緊張するだとか、そういうことがまったくないのだろう。
「じゃあ、再度説明するぞ。お前の任務は第4位と一緒に戦い、キーストーンをこの基地に持って帰ってくることだ。」
そういって、少し凡庸な美人と灰色の四角い石の写真を水戸に見せた。美人の写真には大きく第四位と書かれていたし、石の写真にはキーストーンと真っ赤なマーカーで書かれていた。
「わかったか?とりあえずこの写真の人の指示に従えよ。」
指で写真の顔をさしながら言っている。
「多分わかりました!!!!」
多分あまりわかっていないだろうが、後は多分第4位がなんとかしてくれるだろう。第4位は多分そういうのが得意だ。
「ほら、防寒具その他諸々だ。任務に必要なものも入ってる。」
説明するのは諦めて、早急に行かせることにした。あらかじめ準備していたリュックを渡した。かなり危ない状況だと聞いている。戦力はすぐに欲しいだろう。
「飛行機への乗り方は覚えてるな?離陸と着陸の時はシートベルトをつけて、暴れないんだぞ。」
その言葉に彼は強く頷いた。
「では、行ってまいります!!!」
彼が訓練で一つだけ完璧に覚えることができた敬礼の姿勢をみて、教官は猛烈な不安を覚えた。彼は、戦地でうまくやれるだろうか。死ぬことはないと思うのだが、、、
飛行機で見た映画面白かったなー、と思いながら水戸は自転車で戦地へと向かっていた。車を使うかといわれたが、高そうな車で壊すのは悪いのでやめておくことにした。
速くつかないだろうか。
「ナビだと最前線の砦がここら辺にあったはずなんだけど、、、」
見渡す限りの氷塊、氷河、氷、水、ホッキョクグマ、エビ。人工物の砦なんてものはない。
いや、それよりも前に。
彼はすぐに自転車をとめた。
「こいよ、多分お前ら敵だろ。」
およそ、100m先の草むらにいた生き物はびくっと、身震いをした。
「俺らのことだと思う?」
「いや。まさかまさか。」
聞こえてるんだけどな。
「そこの君たちに言ってるんだよ?」
その方向をしっかりと指さした。
「あ、俺たちだったな。」
「眼良すぎだろ。」
出てきたのは、二十代ぐらいの若い男二人であった。しゃべりながらも、隙がない姿勢を保っている。
「一応、国連軍ではないんだよね?」
確認は重要だ。同士討ちはしたくない。
「国連軍ではない、、、、敵だと思ってもらっていいよ。」
二人の男のうちの一人がそういったのを聞いて、彼は腕をまくった。なら、精一杯戦える。
彼の戦闘スタイルは肉弾戦。というか、彼にはそれしかない。銃はそもそも持ち方がわからなかった。ナイフは間違えて自分の体を切りそうになった。手榴弾なんぞ使えるわけもない。そのほかの複雑な機器も同等である。
「ふん!!!!!!!」
彼は自分の足元にある氷の断片をひっぺがした。少し冷たい。
「お、おう。凄い剛力だな。」
「いやな予感がしてきたぞ。もしかして、あいつは、、、」
彼らはまだ何かを言っているが気にしない。敵と一回判定したのだから、耳はあまり貸さないようにしている。
「おらあーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
推定150㎏はありそうな巨大な氷を彼は投げつけた。氷ははきれいな円を描いて一人の足に当たり、シャンデリアが落ちる時のような音を立てて砕け散る。
「大丈夫か?」
氷が足に接触してない方が心配をしている。
「右足はちょっと危ないかもしれない。そんなあてにしないでくれ。」
彼らはそういいながらナイフを取り出した。なるほど、ナイフを使い、コンビネーションで敵を倒すタイプなのかもしれない。
「そういう戦いは俺も望むところだけど。」
大きい手を力いっぱい彼は敵へと一目散に走りだした。
「はえー。新10位、強いねえ。肉弾戦だけなら国連軍最上位だ。」
彼女、第4位は長い髪をなびかせて氷の下で、第十位の戦いを見ていた。彼の横には第三十五位と第三十七位の身体が死屍累々と横たわっていた。死んではないが。調子に乗っていた彼らにはいいお灸になっただろう。全治3か月ならいカ月で治る。大体、足が資本の彼らが氷に当てられるなんてあってはならないのはずだ。油断しなければそんなこと起こりうるはずもない。
「では、第十位様を入れてよろしいでしょうか。」
「うん、彼の性格と戦闘スタイルはたっぷり見えたから入れていいよ。」
第四位。彼女は職員に向かってそういった。
「あれ、結局基地ってどっちなんだ?」
さっきの人に道をきけばよかったなと思いながら、彼は先に歩き続けていた。国連基地らしきものは本当に見渡せない。
「ゴゴゴゴゴゴゴ、、、、、、」
横で音を立てて氷が崩れる音がする。
「え?」
下の氷がぽかっと、空いて。彼は氷の穴の中へと落ちていった。
縦上にあいており、どこまでも落ちていくのかと思われた穴は予想に反して、内部はさながら滑り台のようであった。
「いーやっほーう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
氷のジェットコースターを彼は滑り落ちていく。
滑り台の方から動物のような叫び声が聞こえてきた。うーん、やっぱりそういうタイプか。もう国連軍にはたくさんいるから大丈夫なんだが。
段々と近づいて大きくなってくるその声の音源。時速120㎞は出ているはずなのにものすごく楽しそうだ。
「もうすぐ彼、来るから。一応クッションおいて、はなれといてね。」
と、それを言い周りが離れたとたん、ものすごい速さで突っ込んできたその物体は、無事クッションへと頭から着弾した。
「あー、一応大丈夫?10位の水戸くん。」
一応、第四位はその生物に声を掛ける。
「短かった・・・・・」
「は?」
「ジェットコースター短かったよー!!!!!!!!!!!もっと長かったら面白かったのに!!!」
はあ。
「まあ、・・・・・・・・・とりあえず、ようこそ国連南極基地へ。」
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