4話.コンフェイト

 「ねぇ、あたし……監視役なのに!」


 「清香さん、私に言われても……」


 清香さんは、終始、不機嫌そうで二階に上がってきてから照望さんの椅子に座ってクルクルと周ります。



 照望さんは、授業参観の宣言通りに出かけて行きました。清香さんにそのことについて一言も言わなかったらしく、清香さんの機嫌を損ねたみたいです。いつも、遠出する時はどんな仕事なのだろうかと思っても、私は追求できませんでした。遠出する必要のある仕事は大抵、照望さんの過去に関係する事柄だからです。

 私が照望さんと出会って、初めての照望さんが遠くに行く必要のある仕事の時に、総一郎さんが私を預かることになりました。その時に、「日和ちゃん。照望が、人として生きていく為にするべきことだ。奴の過去に関係することだが、いつか、教えてくれるさ」と言われたことを今でもハッキリと思い出せます。だから、照望さんが話してくれるまで追求せずに、待とうと思いました。


 「あっ、電話だ」


 二階の固定電話が鳴り響き、勢いよく清香さんが受話器を取りました。


 「はお!あっ、宮下さん!」


 清香さんにとっては、意外な相手だったらしく面を食らったような表情で応答しました。


 「はい。分かりました」


 真面目な表情に変化する清香さんを、私は朝食を配膳しながら微笑ましく見守りました。


 「日和ちゃん!涼川さんは結構遠くにいるみたい。結構、帰ってくるまでかかるらしいよ。だから、数日間は あたしと二人だけみたいだけど大丈夫?」


 清香さんは心配そうに聞いてくれたけど、私は清香さんと仲良くなりたかったので少し嬉しく思いました。私がどうやって仲良くなろうか、考えていると清香さんから明るく話しかけてくれました。


 「……清香おねーちゃんだよぉ!」


 満面の笑みで、清香さんは私の頬を手の平でプニプニと押します。


 「……じゃあああ、きよねー……とか?」


 清香さんは照れながら私と仲良しさんになってくれるみたいで、楽しくおしゃべりをしながら、その後、私たちは朝食を食べました。


 「涼川さんの監視もお仕事だけど、日和ちゃんと仲良くもなりたいから」と清香さんは優しく笑ってくれました。


 その日の夜。私と清香さんはショッピングから帰ってきてました。二階の冷蔵庫に買った食料品を入れたり、新しい服を畳んでいると、清香さんは以前から疑問だったことを私に質問しました。


 「涼川さんのデスクの横に置いてある。中ぐらいのダンボールってあるじゃない?」


 「あぁ、金平糖の入ったダンボールのことですか?」


 「そうそう。最近、また一個郵送されてきたんだけど、涼川さんって甘党なの?」


 「確か……涼川さんが言っていたんですけど、昔の京都に住んでいる知り合いの方のお実家が老舗の金平糖屋さんらしくって」


 「昔って……、一体どれだけ昔なんでしょうね?」


 「……確かに」


 私は、清香さんと一緒に照望さんへの突撃取材を敢行しようと決めました。


 きっと二人なら、一人で訊けなかった事も。清香さんと一緒なら照望さんに訊けると思いました。

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