もうそう
お姉ちゃんによると、今はショッピングモールに向かってるらしい。
服屋とか映画館とかレストランだとかがある、あのショッピングモールだ。
といっても、そこには何度も訪れたことがある。
以前はここから少し離れた所に住んでいた私であっても、そこそこ田舎のこの場所で人々が集まる場所というのは、このショッピングモールなのだ。
何気、引っ越してからここに来るのは初めて。
しかも、お姉ちゃんと。
お姉ちゃんのことは好き。すごく。
だから結構楽しみ。
期待に胸を膨らませながら、先程の堤防沿いを歩いて、他愛もないお話をしながら目的地へ向かう。
「お姉ちゃんは夏祭り。なにしたいの?」
ふと気になって、さっきのことについて問うてみる。
「私? 私はね、えっとね。……てんちゃんと一緒にいれたらそれで充分なんだけど。えっと、
……戯れか。
それって、いつも家でやってるハグとかのことかな。
前みたいな乳繰り合い?
どっちにしろそれは、
「それ、家でもできる気が……」
「風情の問題。家で、イチャイチャをするか、花火とかがどーんどーんって響いてる時に、イチャイチャをするか。どっちがいいかなんて明白」
ふむふむ。
イチャイチャって言い方はちょっと抵抗感があるけど、たしかに後者の方がロマンチック度は増すかも。
私たちがかき氷を食べながら、ベンチに座って肩を寄せ合いながら、花火を眺めてる光景が簡単に目に浮かぶ。
そして、色とりどりに輝く花火に惹かれるお姉ちゃんの姿を見て、私自身はお姉ちゃんに惹かれるという。
しまいには、私がお姉ちゃんへ──。
──って、だめだめ。妄想しすぎ。
なんか最近、お姉ちゃんと仲直りしたからって浮かれ過ぎな気がする。
夏休みという相乗効果によって、こんなことを考えてしまっているのかもしれないけど。
まぁともかく。
これはなんとも、なるほどという感じで。
「素晴らしい」
「でしょ。楽しみだね。晴れるといいけど……」
「うん。晴れるよ。きっと」
※※※※※※
だべっていたら、いつの間にかモールに着いていた。
お姉ちゃんと話す時間は楽しい。
だから、こんな暑い外を歩いている時間も一瞬で終わってしまう。
改修工事をしたらしいこのモールを、でっかくなったなーって思いながらお姉ちゃんに連れられるまま歩く。
数分歩き続け、やっと立ち止まったと思えば、こんな場所に連れてこられていた。
「えっと。ここは服屋? お姉ちゃん、なにか買いたい服でもあるの?」
この店はピンクピンクな感じで、女性専門の服屋さんなのかな。
若い子が沢山いる。
夏休み初日なのにこんなところに遊びに来るだなんて、最近の子供は浮かれてるなー。
……うん。
「私が、てんちゃんに似合う服を選んであげる」
「おぉ。それは嬉しいねー」
お姉ちゃんが服を選んでくれるのか。
と、意外な発言になんかびっくりする。
それでもわくわく。
お姉ちゃんの服選びのセンスはいいと思う。
今着ている服だって、八尺様だけどめっちゃ可愛いし。
いや、お姉ちゃんが可愛いからなんでも似合うだけ?
ともかく、どんな服を選んでくれるのか楽しみだ。
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