ていぼう

「……お姉ちゃん。こんなところに遊びに来たの?」


 お姉ちゃんに身を委ねていたら、到着した場所は堤防だった。


 その広い空間を見渡す、が。

 ……何もない。

 強いて言うなら、小学生くらいの子何人かがわいわいサッカーで遊んでるくらいだ。


「……流石に違うよ」

「おぉー安心した。……え、じゃあなんで」

「えっとね」


 お姉ちゃんはきょろきょろと辺りを見渡す。

 お姉ちゃんの格好、どこか既視感あるなと思ったらあれだ。八尺様っぽい。

 いや、そんな不気味な感じじゃないけど。すごく美人なんだけど。

 最近怖いテレビ番組でそういうのやってたから、ついつい頭にそれが浮かんでしまった。


 それはさて置き、何かを探しているようなお姉ちゃんに「何探してるの」と聞こうとしたら、その言葉が喉を通る前に近くの電柱を指した。


 ……電柱。

 え? なんで電柱?


「……これがどうかしたの?」

「んーん。ほら、貼ってる紙みて」


 言われて貼り紙がある事に気付く。

 えっとなんだあれ……。

 ──あぁ。


「夏祭りのチラシね。これを見せるために、わざわざこんな場所に……。あれに行きたいの?」


 お姉ちゃんはぶんぶんと首を縦に振る。

 振りすぎて帽子が飛んで行きそう。

 可愛い八尺様。

 いや、八尺様ではないけれど。


「私も行きたいって思ってたよ。……えっと日付は……八月三日の土曜日。今日が七月の二十六日だから、一週間後くらいかな?」

「うんうん」

「別にネットとかで見せれば良かったんじゃないの? ここ暑いよー」


 パタパタと手であおぐ。

 暑いし、眩しい。

 私も八尺様ファッションにすればよかった。

 Tシャツはある程度には涼しいけど、この夏の日差しはキツい。

 お姉ちゃんは涼しげな表情しているけど、暑くないのかな?


 と、お姉ちゃんはそんな表情のまま、淡々と話を続けた。


「えっとね、お祭りはこの堤防のとこであるの。だから下見をしに来ました」

「ふむふむ。なるほど?」


 えっと。

 下見と言っても、あるのは平坦な地面だけなんだけど……。


「……でも、特に何もないということに今気付きました」

「なるほど」


「……だけど、あの橋からだったら、凄く綺麗に見えそうだよね。……花火」

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