勉強を教えてください!
学校からの帰り道。
母さんは仕事に行ったので、歩いて帰った。
別に特別語るようなことは何もない。
ただてんちゃんと、手を繋いで帰ったくらいだ。
家に帰り着いて、昼ごはんを冷食で済ませた。
自分の部屋に入って、ベッドの上でゴロゴロしている。それが今だ。
学校のことについて色々考えている。
学校の楽しいイベント諸々についてとか。
体育大会とか文化祭とか修学旅行とか。
そういうのは、てんちゃんがいるから少し楽しみ。
だから今度は、どうすればてんちゃんと離れないで済むのか、考えてみる。
てんちゃんのあの様子からして、自ら私から離れるってことは無いだろう。
だから離れる可能性。
例えば、学校にはテストがある。
赤点とか取ったら補習とかがある。多分。
そしたら、てんちゃんと離れ離れになってしまう。
全然勉強してないから、このままだと私は赤点を取る。
「……どうしよ」
仰向けになって、ぽつりとそう零す。
勉強をしようかな?
……そもそも。教科書持ってたっけ。
それすらも分からないほどに、私は勉強をしてこなかった。
てんちゃんを赤点の道に引きずり込むっていう手法もあるにはあるけれど。
……そうするくらいなら、てんちゃんに勉強を教えてもらった方がいいよね。
うん。教えてもらおう。
と言ってもいつがいいかな?
明日……はもうすでに授業があるらしいし。
やっぱり今日か。
あまり乗り気ではないけど、一緒にいれる時間ができるならそれでもいいやと思える。
私はベッドからむくりと起き上がり、てんちゃんの部屋へと向かった。
※※※※※※
──ガチャリ。
「うおっ! お姉ちゃんどうしたの。急に。ビックリしたー」
「あ。ごめん」
床の上でゴロンとしながらスマホを眺めていた家着のてんちゃんは、肩をびくんと跳ねさせた。
あれ。
私いっつも、てんちゃんのこと驚かせてないか。
「どうしたの?」
「えっと。勉強教えてください!」
「あー。お姉ちゃんえらーい」
てんちゃんは棒読みで、手をパチパチと叩いた。
めちゃくちゃにてきとーな言い方だ。
「思ってる?」
「思ってる。私でよければ教える」
絶対思ってない!
って言いたいけど、教えてもらう立場が生意気言ってはいけないと思って、口をつぐむ。
「……でも。何を勉強したらいい?」
「えっと。数学か英語、かな? 国語とかは正直、頑張ればできる。はず」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「じゃあ、やろう」
「うんうん。よーし! では、楓先生が教えてあげましょう!」
てんちゃんは、「ふんす」といった風に意気込む。
可愛いなって思いながら眺めていたら、
机から勉強道具を持ってきて、部屋の真ん中の丸机えにバーっと広げた。
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