ごめんなさい!
「お姉ちゃん! ごめんなさい!」
数分間、ハグを続けた私たちは、なんとなく後ろめたさを感じながら教室に戻った。
が、途端にてんちゃんが大声でそんなことを言ってきた。
「なにが?」
思ったことをそのまま口に出す。
「いや、さっき。なんか変なこと口走っちゃったし。強く抱きしめちゃったし……」
申し訳なさそうに、指をつんつんさせながら頭を下げられる。
「なるほど。え、じゃあどうしてやったの?」
「……なんでだろ。私、自分で思っている以上にお姉ちゃんのことが好きなのかも。でも! こういうの控えるようにする。頑張る!」
意気込むように、元気よく謎の宣言をする。
別に、控えないでいいと思うけど。
というか控えないで。
「私的には大丈夫だよ。……まぁ、さっきのハグはちょっと怖かったけど」
「……だよね。うん。あれは嫉妬だよ。認める。……他の女の子と話されてるのが嫌だっただけ」
「ごめん。本当に案内して貰ってただけだよ」
なんで謝ってるんだろうと思いつつ、私は軽く頭を下げる。
「うん。そうだと思う。でも、昨日まで私にハグしてくれたり、キスしてくれたお姉ちゃんが他の女子話してて、もやもやしちゃっただけなの」
「……てんちゃんって、意外と嫉妬深い?」
「違う! 違うぞー!」
嫉妬深そう。……偏見かな。
まぁでも、私もてんちゃんが女子と話していたら嫉妬する。男は論外。
嫉妬よりもそれ以上の感情を抱くかもしれない。
例えばなんだろ。
憎しみとか? 落胆とか?
……好きな人が他の人と話していたからってそう思うのは、それは本当に「好き」なのだろうか。……違う気もする。
というより、それは一方的な「好き」だ。
恋人になれたらきっといいんだろうけど。
家族同士という障壁を、てんちゃんは気にしているから。
それはまだ叶わない。
私はそんなの関係ないとは思うけど。
「てんちゃんも、これからは私だけね。……じゃないとまた不登校になってあげる」
「私の責任、重くない? 別にいいけど。苦じゃないから。……いや。普通に一緒にいたいって私も思う」
「うん。ありがとう」
私が言ったら、少し沈黙した。
時計を見たらもう11時半くらいで、
意外と時間を消費していたということに気が付いた。
「帰ろっか」そう言って、「うん」と、てんちゃんが頷く。
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