夕御飯を作る

 台所へとやってきた。

 理由はメールで『晩御飯作っておいてー』と頼まれたからだ。


 私は、調理器具を準備しながら先に起こったことについて頭を悩ます。


 ……まさかハグされて、ハグしてしまうだなんて。

 まぁ。普通なんだよ。ハグくらい。

 ……顔が熱かったのは……理由は分かるけど、考えない。

 考えたら、きっと危ないから。


 お姉ちゃんは、寂しかったんだろうな。

 昨日に比べて、あんま関わってないし。私のこと好きらしいし。

 でも、私も宿題にあんな集中してしまうなんて、優等生すぎる。


「まぁいっか」

「……? 何がいいの?」

「あ。いや、何でもない!」


 おぉ。危ない。

 つい、口から零していた。

 横にいるお姉ちゃんに聞こえてしまった。


「ねね。お姉ちゃんも何か作るの? 大体のものは揃っているっぽいけど」

「私は何も作れないから、見守っとく」

「あ。おけです。……無難にカレー作ろっかな。甘口のルーもあるし」

「……甘口」


 お姉ちゃんは、怪訝そうな顔で私の顔を見る。

 甘口をバカにしているのか、この姉。


「なに! 甘口こそ至高でしょ!」

「甘口と中辛を混ぜたくらいが丁度いい」

「晩御飯を作る権利は私にあるので! 甘口でいきまーす」


 てきとーに流す。

 お姉ちゃんも、それにてきとーに答える。


「わかったわかった。……まぁ、てんちゃんが料理できるってちょっと意外」

「私は家庭的な女なので。……そういえば気になったんだけど、お姉ちゃんの御飯って今までどうだったの?」

「父さんの作り置きかカップ麺かコンビニ弁当」

「作り置きは、いいけど、その他二つは結構体に悪そう」

「まぁ、いいじゃん」

「なるほど。では、私の手料理の味を嗜みたまえ!」


 よーーし。

 作るぞー。

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