私の義姉

「は、初めまして! よろしくお願いします! お、お姉ちゃん!」


 ……よ、よし! 挨拶できたけど。

 これで良かったんだよね?

 でも、お姉ちゃんっていきなり呼んで良かったのかな?

 瑞樹みずきさんって呼んだ方が良かったのかな?

 テンパりすぎてないかな?


 勢いで挨拶したはいいものの、様々な色をした後悔の波が私に押し寄せる。

 前が向けなかった。

 お姉ちゃんの長い黒髪が視界の端で揺れている。

 そして数秒の沈黙の後、少し息を吸う音が聞こえた。


「うん。よろしく。……えっと、妹ちゃん?」

「は、はい! ……かえでです!」

「そう」


 お姉ちゃんは、変わらない調子で話した。

 明るい人ではないようだ。

 母さんの言うところによると、学校には行ってないらしいし。


「じゃあ、瑞樹ちゃん。私からもよろしくね!」

「は、はい」


 次に、母さんが笑顔で挨拶して、お姉ちゃんはうつむきがちに返事をした。 

 この日、これ以上の会話は無かった。


 その後、新しく与えられた部屋へと入り、もう夜の12時だったのでベッドに倒れこんだ。


 お姉ちゃんが出来た。

 ……何というか。美人だったな。

 これから上手くやっていけるといいけど。


 仲良くなるのに、一体どのくらいの時間がかかるのだろう。

 それを考えるのも、少し楽しくて。

 明日からどうしようかと少し胸を高鳴らせた。

 この胸の高鳴りは、ひょっとしたら、この新しい生活に緊張しているだけなのかもしれないけれど。


 今日はほとんど眠れなかった。

 ベッドの端から端へと、何度もゴロゴロと往復をした。


「……やっぱり。覚えてないよね……」


 独り言を呟く。

 事も無げに。

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