ラスト プリンセス皇家の嗜み(皇国の守護者たち外伝)

天津 虹

第1話 プロローグ

 これは巷を騒がしている騒動にインスピレーションを得たフィクションです。大事なことなので2度言います。最後まで読んでいただければフィクションだと納得していただけます。

 誹謗中傷する意図はありませんので、転写等はご遠慮ください。よろしくお願いします。

 1万2千字ほどの短編?ですので、本日4話に分けて、1時間ごとに投稿します。

 また、作中に出てくる神魂一族(かもすいちぞく)の大和(やまと)と巫矢(みや)、それに敵対する石屋(フリーメーソン)のトップサーティーンの正体については、『太平洋戦争の裏側では、世界征服を企む秘密結社とそれを阻む一族がアルマゲドンを繰り広げていた』を大和や巫矢のアパレルワールドの各時代の活躍を知りたい方は「皇国の守護者たち」をお読みください。

 それでは物語の始まりです。楽しんで頂けると幸いです。


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 平和を謳歌していた天空歴二〇二一年。皇室の結婚に端を発したクデーターでN国都心は火の海となっていた。

突然降って沸いたA宮家のプリンスⅯの婚姻話。祝福ムードに水を差したのは、ある週刊誌のプリンスMの交際相手Kの母親の借金問題を取り上げた記事だった。

 これが単なるお金の貸し借り、貸した貰ったの食い違いなら、どこにでもあるただのスキャンダルとN国の国民も気にせずスルーしたことだろう。

 しかし、その経緯がはっきりしてくると、Kの母親のうさん臭さが明らかになってくる。Kの母親の借金の相手は再再婚予定の婚約者だと言うだけでもまれなのに、最初のKの父親の自殺。さらに相続争いに反社をバックに大立ち回り、Kから見ておじいさんも自殺、おばあさんも心労で死に追いやったようなのだ。

 さらに、反社と思われる者との同棲を経て、再々婚約者とのメールのやり取りが明らかになると、保険金の増額と受取り人の自分への変更要求に、遺族年金の不正受給の隠蔽依頼。

  

 次から次へと出てくる疑惑に、N国民は疑惑の究明とプリンスへの婚約の白紙を求める声が多くになっていく。

 だが、A宮家は固くなにKを守ろうとしているように見えた。

不可解な都銀、有名国立大学院就学、大手法律事務所への就職のなど、何がやりたいの?という経歴だ。しかもKの性格の問題か、どれも長続きせず、とうとうA国への留学を決め、N国から逃れるようにKはA国へ旅立ったのだ。

 この一連の行動は、母子家庭というだけでなく、一般家庭の財力と常識でも不可解で、そこに皇室の力が働いているとしか考えられないのだ。

 当然、疑惑報道はエスカレートする一方で、ほとぼりが冷めれば、忘れっぽい国民性、この程度のスキャンダルはすぐに忘れされてしまうと考えたA宮家の思惑が外れてしまう。

 

 まあ、この間アメリカでも、プリンセスMのフィアンセという切り札、ロイヤルカードを切り、まるでロイヤルファミリーのようなふるまいが、本来味方にするべき皇室崇拝者の反感を買い、敵に回っていくのは当然だ。


 KがA国に来てから増えたそれらA国からの報道。これらはA国の中枢に巣くう石屋(フリーメーソン)のプロパガンダである。実力主義のA国で、Kが振り回す皇室の威厳だけで都合の良いように転がっていくのは、石屋(フリーメーソン)からおだててN国から金を巻き上げよという指示が出ているのだ。

 ロイヤル忖度とヨイショは根本的に違う。ヨイショには尊敬など微塵もない。ただ、自分の懐を潤すための欲しかない。そして、石屋の思惑通り、やロイヤルマネーがKの権威の維持のために湯水のようにA国に注がれているのだ。

 いよいよ、A国にはバブル崩壊以来、N国民にはすこぶる評判の悪いハコモノ付きで、プリンスMがやってくることになった。

 ただ、遠く離れたN国民はKが皇室の権威を振り回したとしか見えないだろう。皇室親派と敵対するということは、日本に帰る選択がなくなるということだ。

 このまま、KがMをA国に呼び寄せてくれれば……、皇室を人質に取ったも同然だ。

 さて、中国の脅威を餌に日本列島を浮沈空母にして、兵器を売りまくろうと武器商人でもある石屋(フリーメーソン)は画策する。

「こんな表立って動けるのは明治維新の時のごり押しか、太平洋戦争以来である。最も太平洋戦争はコミンテルンに先手を取られ、煮え湯を飲まされた挙句、世界征服は大いに後退した。かろうじてN国の利権だけは、明治から続いている傀儡天皇家のおかげで何とか守ることができた。

 今は戦後の情勢も大きく変わり、S国は解体され、C国とあの独裁国家、それに中東のテロ国家ぐらいか。N国を武装化できれば、まさにC国の喉元に銃を突きつけたのと同じだ」

 こんどこそ、石屋の野望が完成を迎えるか……」

 石屋(フリーメーソン)のトップに立ち、影から世界を牛耳、思いのままに世界の富を動かすトップサーティンは世の中の動きを見ながら細く笑むのだ。


 そんなときについにKの帰国と、そしてMの結婚が発表される。

 それに伴いニュースが皇室批判から祝福ムード一色になっていく。さらに、ネットでは批判コメントに対して脅しともとれる警告文が表示される。

 あらゆるニュースが問題点のすり替えに走り、論点がずれていく。

 この情報統制ともいえるメディアの動きに違和感を感じる石屋(フリーメーソン)。あまりに強引であり、MとKへの擁護や援護のニュースやコメントの不自然さが、国民感情に益々火に油を注ぐのだ。うやむやにして駆け落ち婚こそがA国にとってベストである。

 ここまでやってしまうと、返ってMとKがA国に脱出しにくくなってしまう。

 N国に送り込んでいるエージェントたちにとって情報操作や世論操作はお手の物。マスコミのコントロールは石屋の十八番だったはずだ。

 隠そうとすればするほど、隠そうとしているものが明確になる。隠そうとするなら真実を虚像の中、嘘に真実を混ぜることで、どこまでが真実でどこまでが嘘かわからなくなり有耶無耶になる。

 法律専門家が、素人でも分かる憲法序文(国民主権)、憲法第1条(天皇の地位は国民の総意に基づく)、憲法第8条(皇室の財産授受の制限)、憲法第88条(皇室の財産は国に属する)、に一切触れず、皇室を弁護し、批判は法律に違反すると一方的な理論を展開する。

 さらに、宮内庁の国家公務員は「私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います」と就職したときに宣誓しているのだ。

 今の宮内庁の職員は当然、宮家の下僕ではない。国民全体の奉仕者なのだ。国民に対する裏切り行為は諫める立場であるはずだ。でも今の状態は、勤勉なN国人にしては考えることを放棄したような仕事っぷりなのだ。


 石屋は嫌な予感がする。

 この感覚は、太平洋戦争の時のN国の軍部やマスコミに似ている。今の時代にそぐわないだろう。こんなことが、堂々とまかり通るのはC国だけだ。

 そこまで考えて気が付いた。あの時も、まんまとコミンテルンに出し抜かれたのだ。

 今でこそS連が消滅したが、戦後、世界地図の半分が赤に塗り替わっていた。戦争には勝ったが、資本主義と社会主義との勢力争いでは完敗だった。

 綱引きを引き戻し、N国を支配下にできたのは、それこそ、天皇が実は石屋の息がかかった傀儡政府だったおかげだ。

 そう、天皇は明治維新の時にすり替えさせてもらった。天皇を残したのは巷で言われているような、戦後支配や治安維持のためじゃない。今後ともA国しいては石屋(フリーメーソン)に便宜を図らせるためなのだ。

 だからこそ、民主主義では考えられない制度の落ち度、憲法で皇室廃止の方法を示さず、永久支配をもくろみ、裏から権力を使いN国を支配させ、決して表に出ないようにさせてきたはずなのに……、この状況はあまりに露骨だ。誰が見ても、天皇がN国最大にして永遠の権力者と信じて疑わないだろう……。

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