妹神が来た理由 エピローグ

 ヒイラギが来てからしばらくが経ちました。


 夜明けとともにすずめがちゅんちゅん鳴き始めた頃……


 ヒイラギは鳥居の下で大きく両腕を上げて伸びをします。


「うーん……今日も良い天気になりそうですね」


 すると眠い目を擦りながら神様が起きてきます。


「ふああ……ヒイラギちゃん、こんな朝早くからどうしたの?」


「ありゃ、起こしちゃいましたか。ヒイラギ、そろそろ帰ることにしました」


「そうなの? じゃあまたね」


「えー、姉様なんか素っ気なーい。可愛い妹が帰るって言ってるのに」


「それはお互い様でしょう。あなただって書置き一つで帰ろうとしてたんだから」


「うーん……確かにそうですね。今度は姉様が遊びに来てくださいよ」


「気が向いたらね」


 小さく手を振る神様を背に、ヒイラギは歩き始めました。……でも、ふと何かを思い出したらしく振り向き様に言います。


「あ! そうだ姉様――


 ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン!!


 ――ですよ!」


「え? 何だって?」


 近くを通り掛かったバイクの音にかき消されてしまい、思わず聞き返す神様。


 ヒイラギは声を張り上げます。


「だから! 姉様――


 ヴォンヴォンヴォン! パラリラパラリラ! ヒャーッハー!!


 ――ですよ!」


「え? 何だって?」


 またもや肝心な所が聞き取れません。


「あ、じゃあもう今度でいいです。大した話じゃないので……」


「いやいやいや、ちょっと待ってよ! そんなお別れの仕方されちゃあ、なんだかモヤモヤするじゃない」


「じゃあ、もう一度だけ言いますよ。姉様……牛乳をたくさん飲むと背が伸びるらしいですよ」


「やかましい! さっさと帰れ!!」


「うわあ! 姉様が怒った! 逃げろー!!」


 天真爛漫な妹神様は元気に走り去っていきました。


 そして神様は大きなあくびを一つすると……


「寝よ」


 再び床に就くのでした。




 やっぱり神様は負けず嫌い おしまい。

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