二番目のわたし。

ミナト

第1話

私が28歳の誕生日を迎えた8月のある日のこと。退屈を凌ぐために何となく見ていた出会い系アプリから全てが始まった———




 8月が始まってからまだ一週間と少し。連日厳しい暑さが続く中、私は冷房の効きすぎた部屋でゴロゴロしながらいつものようにスマホをいじっていた。仕事も休みだし特に予定も無い。こんな日は家に引き篭もってだらだらしながらスマホで遊ぶに限る、それが休日の決まった過ごし方だった。

 ああ、暇だ。そして今日も外は炎天で微風すら無い。こんな陽気では出掛ける気にもならないし、そもそも一緒に遊ぶような相手がいない。やっぱり家で好きなことをして時間を潰すのが一番だ。そうしよう。私は少し草臥れたソファーに横になって足を投げ出し、テーブルに冷えたお茶と小型のワイヤレススピーカーを置いた。スマホから流したお気に入りの音楽が小さなスピーカーを通して部屋中に響く。そしてつられるように流れる歌を口遊みながら、私はスマホの中のアプリを開いた。何処の誰が作ったかも不明な、全く信用性の無いもの。国内の出会いを求める男女が集まる掲示板アプリだ。ユーザーによる投稿を見ると、パパ活だったり援助交際だったり既婚者同士の不倫だったり…まともに恋人や友達を探しているユーザーはほんの一握りのように思える。ログインすれば男性ユーザーからのメッセージが怒涛のように届いて、スマホ画面はあっという間に未読メッセージで埋め尽くされた。私は届いたメッセージの中から良さそうな人を一人だけ選び、どうせまともな人では無いだろうと頭の中で考えつつも「こんにちは」と一言だけ返事をした。


彼を選んだ理由はユーザーアイコンに設定されていた顔写真と、その時の気分、そして何となくというアバウトな勘だけだった。


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二番目のわたし。 ミナト @nao0806

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