第15話 家政"夫"とコーヒーカップ
陽気に海斗が仕事部屋へ入ってきた。
「ハァーーー……どした?昨日の今日で」
京介は大きなため息をつく。
「そんな顔すんなって。いゃーすっかり昨日忘れててさ」
「いいところだったのに……で、なに?」
「年明けに同窓会をやらないかって話があってさ。京介、俺と一緒に幹事やらない?」
「は?幹事?この俺が?」
「そう、お前に言ってる」
「んなもんするわけないだろ!オレが。」
「やっぱり?どうしてもダメ?」
「絶対ムリ!俺が断るのわかってて言ってんだろ?おまえもさ。」
「ハハハッ、バレたか。幹事をしろとは、じゃ言わないからさ、
スポンサー頼めない?」
「そんなことだろうと思った……
わかった、金ならなんとかするからもういいか?」
「え?何即決でOKしてくれんの?珍しい」
少しでも早く帰ってもらって康太との2人きりの時間を堪能したい京介は、いつもなら渋るスポンサーの話を速攻でひきうける。
コンコンコン
康太がコーヒーとクッキーを持ってきた。
「いいよ、こいつの分は。すぐに帰るから」
「おいおい冷たくないか?そんなに帰って欲しいのかよ、なぁ家政夫さん、こいつひどくない?ていうか、俺を早く帰らせて何がしたいんだよ?お前には何も待ってないだろ」
「何が待ってるって……それは……」
京介はいやらしい顔をしながら康太を見る。
康太はさっきまであんなところを触られ、感じまくっていた自分が一気に恥ずかしくなり、動揺しながら海斗のコーヒーを机に置く
カチャカチャカチャカチャ
心の動揺でソーサーの音を立ててしまった。
その様子をみた海斗は、慌てて康太と京介を交互に見比べる
「え?なに?え?なに?
2人、なんかあったの?えーーー!なにがあったんだよー!」
海斗はもう気になるなんてものじゃない。
「し……失礼します!」
いつも以上に大きな声で康太は急ぎ出て行く。そんな康太を目で追う京介。
「さーて京介くん、全部話そうじゃないか。
ん?なにがあったんだい?観念して私に話すのだ。
お前の友人は俺しかいないんだからな!」
海斗は詰め寄った。
「話すって…お前が昨日言ったんだろ?
『お前の思ってるのは、本当にそれは家族としての感情か?』って。
だから俺は考えた、そしてわかったんだ。
“俺は、康太を好きなんだ" ってわかったんだ。
だから、だから、本気で口説くことにした。ダメか?」
京介は真剣な表情で言う。
「相手は男性で、家政夫だぞ、いいのか?」
「ずっと思ってた。
学生時代にはお前も知っての通り女の子と恋愛もしたけどどこか違ったんだよな…
交際がおわっても悲しいとか特に何も感情なんてなかった。
けどそれは本気の恋じゃなかったからだと思ってた。
それだけだって。
そのあともお見合いもたくさんしたけどさ、どの人にあっても心惹かれなかった。
帰宅したら顔すら思い出せない人なんてめちゃくちゃいたよ。
でも今、康太とはまだ3ヶ月の出会いなのに、もう失いたくないんだ。
ずっとそばに居てほしいんだ。
常に横にいてほしい。
常に俺を!俺だけを見てて欲しい。
失うなんて出来ない、そんなことになったら俺は死んでしまうんじゃないか?
そのくらいに感じる。
自分でも取り憑かれているんじゃないかって朝から考えてるよ。
笑えるだろ?
初めて本気だとわかった相手は男性でうちの家政夫なんてな
…………
……反対はしないで欲しい。
唯一の友人のお前にはわかって欲しい。申し訳ないとも思ってる。
ダメか?」
時々笑みを浮かべながら恥ずかしそうに。だけど決心をした表情で熱く京介は語った。
「なんで俺が反対するんだよ、ていうか家政夫さんをみた瞬間、あ!この人のこと京介は好きになるかも?て思ったから先週デートに行かせたんだろ」
海斗はニヤニヤしながらいう。
「え? わかってたのか?」
驚いた京介
「あぁ。康太さんの話をするお前は、楽しそうで、嬉しそうで幸せそうで……
家政夫さんはお前を見てる目がハートなんだもん。
こりゃ遅かれ早かれそうなるな。て誰が見てもわかるさ!
問題は、和子さんだぞ?わかってるのか?
好きな人が出来たのはわかるが、その人が傷つくことないように、慎重にな!」
「……… わかってる」
海斗は立ち上がり
「じゃ俺は帰るよ、またな。」
そう言って仕事部屋から出る。海斗が部屋から出てきたのを確認した康太は海斗の見送りにきた。
「家政夫さん、京介はいいやつなんだ。けど、あいつとの恋愛をするのは、決してはいいことばかりじゃないと思う。
だから辛かったらいつでも連絡ちょうだい。俺は2人の味方だから!ね!」
「味方……ですか?ありがとうございます…………あの……反対とか……」
恐る恐る康太は聞く
「反対?俺は反対なんてしないよ。なんで反対されると思うのさ。男同士だから?
そういうのは、今の時代ナンセンスでしょ!
大事なのはふたりの気持ちじゃない?OK?じゃね」
海斗はカッコよく言って帰っていった。
海斗は味方になってくれると言ってくれた。
京介の申し出を受けることはしてはいけないと思っている康太に少し希望が見えたのだった。
玄関扉を閉めた海斗は苦悶の表情を浮かべていた。
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