第35話 遠路遥々…ようこそ?

吠えながら退散したマスメット一行に入れ替わるようにして、の~んびりと帰って来たラナイス様は高貴な方々を伴っていた。


私の従妹のオデリアナ=ルーベルスカイ公爵令嬢とリスガレリア帝国のリヴェイル殿下のお二方だ。


この二人がラナイス様がマスメットジジイの足止め係をしていた関所に現れた為、ラナイス様が気を取られている隙に、マスメットジジイが公爵家に侵入して来たという訳だった。


そして、リスガレリア帝国の皇子殿下のご容姿というと…がっちりとした体型の武闘派!みたいなワイルドな美形殿下だった。割とがっちりしているラナイス様と並んでもラナイス様が貧弱に見えてくるほどのワイルドマッチョだった。


一方…連れて来られた感満載の従妹のオデリアナといえば、緊張しているような雰囲気だった。しかし私の姿を見付けると破顔していて神々しいほど美しかった。


そうして美男美女を屋敷に招いて、何故訪ねて来たのかをお聞きすると…リヴェイル殿下が


「あのカヒラ王女の姉上がどのような方なのかお会いしたくて!」


との割と平凡な理由を述べてくれた。


そして、見た目に反してリヴェイル殿下はよく喋る殿下だった。


「突然、カヒラ殿下から婚姻の打診がきて驚いたね。私の兄は既に婚姻しているし、私の方に話がきて困ったよ、え?こちらはカヒラ殿下のお噂はよく存じているよ~ナノシアーナ殿下が婚姻されたのに触発されてご自身も婚姻を急がれたのでは?あ、そうでしょう?それで各国の未婚の王族に打診してるけど、どうかなぁ?他の王族も色々と情報を握ってると思うけどね」


なるほどね、リヴェイル殿下はカヒラのアレコレをご存じだったのか。


近隣諸国の政治の中枢部には各国のスパイが入り込んでいて、それぞれ情報を交換していると聞く。


良くも悪くも、持ちつ持たれつ…そこは暗黙の了解でスパイは各国の情報を探り続けているのだが、他の国々の方にカヒラのおデブ諸々情報を知られていましたか…


「評判の良くない王女殿下のようだし…私も出来るだけ避けたい。そうして相手を探して…こうして私は運命の出会いを得たというわけだ」


とか何とか言って、隣に座っているオデリアナの手を取りチュッチュと手に口付けをしているワイルドマッチョ殿下。


リヴェイル殿下って悪い人ではないとは思うけど…王族だしなぁ~王族という人にどうも嫌悪感を感じるわ…(自分は棚上げ)しかも、リスガレリア帝国って大陸一の軍事力と経済力を誇る国だもんね。そこの第二皇子殿下か…ラブリーより腹黒そう…


「ナノシアーナ…あの…」


今まで黙って話を聞いていたオデリアナが、私に声をかけてきた。


オデリアナは口を開きかけては止めて…そして隣のリヴェイル殿下を見上げて見て、リヴェイル殿下に微笑みかけられて真っ赤になって…やっと口を開いた。


「私…リヴェイル殿下と共にリスガレリア帝国に参りますわ。私も望まれるお相手と巡り合えて…その、とても嬉しいのです。それに…この国ではもう良縁に恵まれないでしょうし…きゃあ!?」


いきなりリヴェイル殿下がオデリアナに抱き付いた。


小さく悲鳴を上げて固まったオデリアナを抱き締めたまま、リヴェイル殿下は高笑いをしている。傍から見ていると怖いわ…


しかし、オデリアナに言われてハッとした。良縁…そうか、王族筋のオデリアナの婚姻相手となる子息(王子含む)は限られてくる。まずはカヒラが優先されるはずだものね…


あ、もしかしてオデリアナは私が知らないところで、婚姻の邪魔をされていたのかもしれない。そうだとしたら…


許せんなっドスコイめっ!

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