第16話 可愛いけど…実はそうですか
「お疲れで御座いましょう、お食事を用意しておりますぅ」
テルリアン叔父様の背後から、ウキウキした様子で声をかけてきたジョナ…だったが、私達の方を見ているテルリアン叔父様の顔がっっ!!!
可愛い顔(中身はおじさん)が物凄く歪んでいらっしゃいますね…
私の隣に立つラナイス様を仰ぎ見てしてしまった。ラナイス様は目配せを返してくる。
「食事は結構です…」
おっ…叔父様っ!?声、低い…こわ…
なるほどな…何故私が、追い出し作戦に加担してくれそうだと思われたのかが、分かってきたぞ。
テルリアン叔父様がジョナとの接触を嫌がってるのに、ジョナの方がグイグイ来ているんだな…こんな状態の叔父様を私に見せれば、カヒラに苛められた令嬢達を庇っている私なら作戦仲間になってくれると思ったんだな。
そう…個人的に、倫理観や道徳観を蔑ろにする人には嫌悪感を覚えるタイプだ。この世界に置いて、貴族の家で使用人として働いているならば守らなければいけないルールがあって、少なくとも私が調べた限りではテルリアン叔父様もラナイス様も、雇い主としては至極真っ当な方々であり、使用人に対する福利厚生も手厚く、雇い主としての対応に問題無いお二方だと思える。
だからこそ、そのルールを逸脱して踏み込んで来ようとしているジョナに対して私は今、苦々しい思いを抱き始めていた。
どうしてあからさまに好き好きな態度に出しちゃうかな…人を好きになるのに身分や生い立ちは関係無い!と言い切れてしまうほど私は甘い考えは持っていない。
好きでいるのは勝手だよ?でもそれをこんな風に出してはいけない。
「ふぅ……ラナイスとナノシアーナ殿下と話がありますので、離れには人を入れないように」
テルリアン叔父様はジョナの方を一切見ないで、執事長のチャベルにそう告げると足早に移動を始めた。
私もラナイス様も叔父様の後に続いた。
その時にちょっと好奇心に駆られて後ろを見てみたが…正直、振り返るんじゃなかったと後悔した。
メイド長っめっちゃ睨んででるよぉぉぉぉ!!!
因みに私に向かってではありません、ラナイス様を睨んでおります…念の為。
さて…離れに入ってカレンとジリアンがお茶の準備をして、ラナイス様とテルリアン叔父様と三人になった…
テルリアン叔父様はジョナがいなくなってことで、気持ちが落ち着いたのかキラキラの美少年スマイルに戻っている。(但しこの世界では…以下省略)
「ラナイス、殿下に例の件のこと…話しておいてくれた?」
テルリアン叔父様がラナイス様に尋ねて、ラナイス様が頷き返すと叔父様は私の方に向き直って姿勢を正した。
例の件…さあ、どんな作戦なんだろうか…
「正直な所、私はジョナとはここ数年くらいの面識しか無いのですが…ジョナは初対面の時からあのような感じです」
え?確かメイド長のジョナは曾祖父の代から公爵家に仕えてきた…って言ってよね?
「私は若い頃から事務官として城勤めをしておりまして、住まいは王城内の独身寮でした。ラナイスの母、義妹が亡くなった時に先代の公爵…私の兄からの公爵領運営を手伝って欲しいとの要請を受けてこちらに戻ってまいりました。それが三年前です」
なるほど…テルリアン叔父様は三年前に公爵家の方に戻ってきたと…
「ジョナは、私が家に戻ったすぐ後に公爵家にやって来ました。ジョナの母親は昔、公爵家に勤めていて若い頃に離縁してここを出て行ったそうです。執事長のチャベルは父親違いの兄妹にあたるとのことです。その時にジョナは夫君と息子二人を連れてきましたが、チャベルの妹ということで家族を使用人として雇い入れたはいいのですが、少々扱いづらい方々だったようで…しばらく様子を見ましたが、胡散臭い動きをし始めたので泳がせてから、懲らしめることにしました」
テルリアン叔父様はニッコリと可愛い笑顔で、怖い事をズバリと言った。
…一見、可愛い顔だけど怒らせたら怖い人なんだな…ということだけははっきりと分かった瞬間だった。
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