第14話  同じ穴の狢とはコレか?

なんだその、どこかの会社や政治のなんとか派みたいな名称は…!


唖然としてラナイス様を見詰めていると、ラナイス様は悪い笑顔のまま


「因みに、叔父上を支持する派閥はメイド長のジョナが先導しています。それに伴って部下のメイド達…庭師として働いているジョナの夫、侍従の息子2人はテルリアン派に所属というのかな?になっていて、その派閥に属していない使用人がなんとなく反対派閥…私を支持する派閥に入っているような感じになっているそうです」


と、公爵家の派閥?の詳細を教えてくれた。


いきなり色々な情報を与えられたので一度、頭の中で整理してみた。


え~と、メイド長のジョナにはご主人がいて、息子2人もここで働いていると…家族全員がこの屋敷で働いているという訳ね。


チラリとラナイス様を見ると、まだ悪い顔で微笑んでいる。


あれ?その悪い顔はなんかヤバイ気がするな…嫌な予感…


「メイド長のジョナは曾祖父の代からうちに仕えてきた一族ではあるのだが…最近おかしな動きがありましてね」


「おかしな動き?」


「どうやら外部の人間に指示を受けて、私と叔父上の対立を煽っているようなのです」


サラッと怖いことを言うね…それにしても叔父様とのラナイス様の対立か…対立させてどうしたんだろう。


私は暫く考えてから、口を開いた。


「そこまで分かっているなら、何故メイド長をそのまま働かせているのですか?」


そう…外部と接触して不穏な動きをしているのを知っているのなら、野放し?というか、現公爵にグイグイ言い募るあのような行き過ぎた言動を何故、許しているのだろうか?


「そうですね…疑問を感じるのも当然でしょう。理由は…先程も申しましたが長く公爵家に仕えてくれている一族なのです。何かあると、親戚筋から口出しされる状況にあるのです」


なるほど…ジョナ一家は親戚筋に太いパイプがおありと…ということは対立を煽ってきているのはその“親戚”じゃないのかな?


私がジッとラナイス様を見ると、ラナイス様は微笑み返してきた。


「どうされましたか?」


「その親戚を遠ざければ、憂いは断てるのでないのですか?」


ラナイス様は悪い顔のまま頷いている。


私は今の段階で疑問に思っていることを、思い切ってぶつけてみることにした。


「私に公爵家の内情をこれほどに話してしまってもよろしいのですか?」


ラナイス様はまた悪代官みたいなニヤリ笑いを見せた。


「ナノシアーナ殿下ほどではないですが、これでも私なりの情報網を持っているのですよ?」


「!?」


こ…これは…?私の情報網のイガモノのことを知っている?


緊張して唾を何度も飲み込んでしまった。睨みつけるようにラナイス様を見ていると


「ナノシアーナ殿下のお噂は、中々偏っておられますよね。聞こえてくるお噂は醜女、我儘、苛烈な性格…しかし、調べれば調べるほどおかしな点も分かってくる。しかもそんな醜悪な話は王城の中でしか聞こえて来ず、王城の外にでるとナノシアーナ殿下を悪く言う者はいなくなるどころか、そのお姿すらお見掛けした事が無いと言われている…フフフ、どうですか?」


と、言いながら益々悪っぽい笑みを深めてくるラナイス様。


「……どうとは?」


聞き返す声が震えてしまった。


「私婚姻相手のことを調べてみたのですよ?」


あ……ぁ……そうですか。考えることは皆一緒、私がイガモノに調べさせたようにラナイス様も公爵家のコウガモノ(勝手に命名)を使って調べたわけだね。


気が抜けてソファに凭れかかった。緊張して体に力が入っていたようだ。


「私が調べた限りではナノシアーナ殿下は、私に協力して下さるお人柄だと判断致しましたので」


「協力?」


また悪い顔した美形閣下から不穏ワードが飛び出して来たよ…なんだろ?怖い…


「ジュナ一家と不穏分子を纏めて叩こう作戦です」


で……でたっぁぁぁぁ~~~~~!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る