第9話 嫌われて当然だよ

どう言う訳だかカイフェザール閣下以下、後ろに控えているメイドや侍従の方々まで私のカヒラじゃなくてゴメンね発言を聞いて、何か動揺している気がする。


桃饅頭体型だが、この世界では絶世の美女のカヒラの話題はこれほどに皆を慌てさせるものなのか?


カイフェザール閣下はソファから驚異の飛び上がりを見せた後は、素早く座り直して、何かありましたか?みたいな笑みを浮かべている。


しかしメイド達はまだ私のカヒラ発言に動揺しているようだし、私と目を合わせないように遠くの方を見ている侍従もいる。


ああコレ、アレだ、やっと原因に思い至った。


私の醜女&我儘王女の噂を使用人達は知っているんだね?


城では使用人から少し距離は取られているが、嫌われてなんてなかったと思う。逆に、料理長は毎日お菓子の差し入れをしてくれていたし、侍従長やメイド長達は変わりはないかとよく様子を見に来てくれていた。


侍従長なんて事あるごとに堂々と


「カヒラ殿下がなんと仰られようとも、ナノシアーナ殿下は第一王女殿下として品格をお持ちでいらっしゃいますよ!」


と、不敬上等なことを言っちゃったりしていた。


そう…城勤めの使用人達は分かっていたのだと思うよ。いくら(ゴマフアザラシ体型の)絶世の美女であってもあんな性悪の性格じゃ、王族としての品位もあったもんじゃないものね。


という訳で、私を目の敵にして意地悪と言う名の緩い嫌がらせをしていたのは、実際はカヒラと現王妃殿下だけなのだが、カヒラは暇さえあれば


「そーんな不細工では皆から嫌われて当たり前よねぇ!」


と私に向かって叫んでいたが、どうやらカヒラからの暴言被害者?は私だけではなかったようなのだ。


私は現王妃殿下の緩い嫌がらせにより、王家主催の舞踏会以外は出席禁止にされている。欠席理由は私の我儘で癇癪を起して……という扱いなのだ。


まあ私が欠席扱いにされたのは、別に構わないのだが…どうやら私の参加していない舞踏会ではどうやらカヒラが大暴れしていたらしいのだ。


美醜逆転の価値観を持つこの世界で当たり前だが皆が皆、この世界基準の美形ばかりではない。カヒラは貴族令息、令嬢の中でも特に見目麗しくない(私的に美男美女だが)方々を苛めの標的にして、公衆の面前で不細工だと罵りまくり少年少女達に、パワハラ行為を繰り返しているそうだ。


頭空っぽの餡子の詰まってない桃饅頭めっ…


そんな中、カヒラに不細工だとなじられた令嬢方が私が出席していた実家の侯爵家主催の茶会に避難?してきていて、その現状を訴えてきたのだ。


その令嬢方は私基準で見て、とても美しいご令嬢方ばかりだった。もし…この世界と違う世界に産まれていたなら、蝶よ花よと育てられたに違いない…少なくともカヒラに苛められたりされないだけでも幸せな人生を歩めるはずだ。


私が泣きじゃくる令嬢を慰めつつ、どうしたらいいのか困っていると、ヨヒア叔父様が侯爵家の力が及ぶ範囲ならいくらでも頼ってもらって構わないと、ご令嬢方に申し出てくれた。


流石叔父様、身も心もイケオジだ(私基準)


と、いうようなことを私がぼんやり思い出している間、元?包帯閣下は真顔で私を見詰めていた。


「いえ…カヒラ殿下ではなくて、その…安心しました、ええ…安心しました」


「安心?」


閣下は何を安心したというのだろう?


ん?…………っ!?あっそうか!究極の?不細工な私の顔を見て、閣下は私に謎の安心感というか、仲間?同志?を見付けたと思ったんだね!そうでしょう?


「まあぁ〜安心されましたのね!そうでしょう〜そうでしょう~オホホッ!」


その時思わず…私も謎の安心感を感じてしまい、悪役令嬢ばりの高笑いをしてしまったのだった…


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