悪女様のお通りだ!~嫌われてるなら見えない所へ参ります~

浦 かすみ

第1話 押し付けられてるのね…お気の毒

魔物や魔獣が跋扈ばっこするこの世界…他の国より魔素が濃く発生する我が国の土地には強い魔物、魔獣が生息する。この世界の常識だ。


特に魔素の多い危険地域に各領主は軍備力を割いて、治安維持に力を注いでいる。そんな魔力と魔法の溢れるこの世界で、自然と魔の動向に武力に秀でた能力の高い一族が目を光らせるようになっていた。


そうしてそれは強いが故に、ある地方領主が不幸を招くことの切っ掛けになってしまった。


「数十年に一度おきるとされている、魔素大量発生の厄災を退けた領主への褒賞が、“私”とはねぇ〜その公爵閣下もとんだ災難ね」


国王陛下(父)から告げられた、私の公爵家への降嫁の話を聞いてげんなりしていた。


「姫様…」


私付きのメイドのジリアンが泣きそうな顔をしている。そのジリアンの隣で相変わらずの無表情の同じくメイドのカレン。


一応、第一王女の私についている使用人はこの二人しかいない。


まあ、二人でも私は全然困らないけどね?


兎に角、国王陛下…私の父親は娘の私を遠くへと追い払いたいみたいだ。


私を遠くへやったって妹が賢くなったり、急に淑女になったりはしないのにねぇ〜


そんなに第二王妃が怖いのかな?あ、今は繰り上がって第一王妃か…私の実母が7年前に亡くなったもんね。


第二王妃は第一王妃になった途端、旧第一王妃(侯爵家)の勢力を締め出し始めた。そして前から酷かったけど、更に私を目の敵にして王城の隅の部屋に私を押し込めた。


王妃的には、やってやった!とドヤってるつもりだろうけど、私から見ると、甘いっ!なんて甘い嫌がらせだ、と言わざるを得ない。


お局の域まではまだまだだねぇ〜まあ、まだ国王妃っていっても実年齢、アラサーくらいの女子だもんね。まだまだまだ、やることが青臭い!


部屋を移されたぐらいで堪えるかっての!メイドの数を減らされたぐらいで堪えるかっての!舞踏会に出ないように、とか言われてもメンドクセーことしなくていいなら、寧ろ楽だね〜と思ってるくらいだ、無駄だったな!


そりゃそうと


国王陛下も存在が薄っすいね〜確かに侯爵令嬢だった母より、ムトリアス王国の第二王女だったあの人の方が怖いんでしょうけどね。


それにしても腹違いの妹は、何故あんなに呑気でボンヤリしてるんだかね〜私と同じ王女教育を受けてる筈なのに、自由気ままと言うかね…頭のネジが緩んでるというか…


まあ今更どうでもいいけどね、でも噂じゃその南の公爵様(皆がこう呼ぶ)は私の降嫁を受取拒否したそうじゃない。


「ウケる……ぶっ」


めっちゃ気概のある公爵閣下だ。そりゃそうか、私に関する噂は国王妃と妹が意図的に流した…醜女、我儘、苛烈な性格…等々酷いものだからね。


そりゃ公爵領に来てもらっては困るでしょうよ。いや、私も行きたくもないけどさ。


ただね、このまま王城で燻ってて命の危険に晒されるよりは、辺境の公爵領でノビノビさせて欲しいと思っちゃう訳だ。


わたしだって生存確率の高い方を選びたい。


そんな降嫁でジラジラ、イライラしながら揉めに揉めていた王家と南の公爵閣下は王家から相当のお輿入れ費用を頂く形で落ち着いたらしい。


この情報は


「あなたなんてお金に物を言わせて、降嫁を受け入れてもらったのだからね!」


と、わざわざ…ホントわざわざ王城の端っこの私の部屋までやって来て、高笑いしていた腹違いの妹、第二王女カヒラから聞かされたのだ。


高笑いは良いから…お前は、ちったぁー痩せる努力をしやがれっ!


そう……人を醜女醜女と言うわりに、自分はゴマフアザラシ体型なのだよ。


いや、ゴマフアザラシに失礼か…異世界の丸くて可愛い生き物に似てるなんて、例えてあげるのもゴマちゃんにおこがましいってもんだ。


しかし私、なんでこんな異世界に転生しちゃったのかね〜変な小説の中とか、ゲームの中とかじゃないだけマシか?


確かに三大成人病での入院中はかなり辛かったから、早くお迎え来ないかな…とか考えちゃってたけど、誰が異世界から迎えに来いって頼んだ?遠くから出張し過ぎだっての!


もしかしたら…この世界って何かのゲームの中かもしれないけどな、今更だしな~

その筋?の主人公に出会って詰め寄られたら、知らないものは知らん、で通すつもりだ。


なんとなくだけど、私ってば悪役令嬢のポジションじゃないかと思っているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る