【コミカライズ】蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服
武蔵野純平@蛮族転生!コミカライズ
第一章 土下座から始まる異世界人生!
第1話 プロローグ:童貞ちゃうわ!
「「まことに申し訳ない!」」
俺に頭を下げているのは、神様と天使だ。
俺は仕事中に、居眠り運転のトラックにひかれた。
それを見かけた新人の天使さんが、俺は死んだと勘違いした。
そして、俺の魂を死後の世界に連れて来てしまったらしい……。
俺は遠くを見つめた後、ため息を混じりに返事をした。
「ハァ……、誰でもミスはあります。仕方がないですよ。元の体に俺の魂を戻して下さい」
「そ……それが……!」
天使が真っ青になった。
隣に立つ神様が手を振ると、何もない空間に映像が映し出される。
「あっ!」
映像には、骨壺が映し出された!
「すまぬ。既に火葬されてしまったのじゃ……」
「ええええええ! じゃあ、日本に帰れないの!? どうするんですか!? 結婚もまだしてないのに!」
「本当に申し訳ない……。君は四十二才にも関わらず童貞なのに……。こちらの手違いで、死後の世界に連れてきてしまったのじゃ……」
「ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
余計な一言を発する神様の口を思わず手でふさいでしまった。
さりげなくディスるのは、やめて欲しい。
となりで天使さんが生温い視線を送ってくるが、『君のせいで、こんな事態に陥っているのだよ!』と反論したい。
俺がガックリと膝をつくと、神様が提案をしてきた。
「まあ、そう気を落とさないでくれ。救済措置があるのじゃ!」
「救済措置?」
「今回のようなケースは、時々発生するのじゃ。その場合は、違う世界に転生をさせてあげることになっておるのじゃ」
「違う世界に……。異世界転生でしょうか?」
「そうじゃ! お詫びとして特別に能力を付加してやろう。異世界で第二の人生を謳歌してくれ!」
異世界に転生……。
悪くない……。
悪くないかも……!
俺はいわゆるロスジェネ世代で、仕事はアルバイトのガードマンだった。
夜間工事の交通誘導中、事故に遭ったのだ。
正直、やりたくてやっている仕事じゃない。
雨の日、風の日、雪の日、真夏の酷暑日でも外でお仕事だ。
それならいっそ異世界で人生やり直すのも悪くない。
「どうじゃ? ヤル気になったかの?」
「ええ! ヤル気が出てきました! それで、『お詫びでもらえる特別な能力』って、どんな能力でしょうか?」
「ふむ。そうじゃのう……。事故に遭っても死なないような丈夫な体にしてやろう。どうじゃ?」
どうじゃと言われても、事故に遭って死んでないところを、天使が間違えたのだが。
ジロリと天使を見ると、目をそらしやがった。
「丈夫な体は、ありがたいです。他に何かもっと……、こう……、生きやすい能力が欲しいです。『魔法がスゴイ』とかダメですか?」
「魔法は、魂との相性があるからのう。オマエさんには、難しそうじゃ」
魔法はダメなのか……、がっかりだな……。
それなら……。
「鑑定能力とか! アイテムボックスとか! チートスキルを下さい!」
俺は異世界転生マンガで定番の能力をお願いしてみた。
しかし、神様は首をひねっている。
「鑑定……? アイなんとか……? よくわからんぞ?」
ダメだ。話が通じないな。
俺が説明に困っていると、天使さんが話に入ってきた。
「それは、アニメやマンガに出てくる能力ですよね?」
「そうです! 天使さんは、わかりますか?」
「チラッと見たことがあります。私が説明しましょうか?」
「お願いします!」
おっちょこちょいの天使さんだと思っていたが、頼もしい所もあるんだな。
天使さんが身振り手振りを交えて、神様に説明をする。
「神様! 最近は、人間の世界で『異世界転生をする話』が流行っているのです!」
「ほう! そうなのか!」
「それで、転生した者がスマホという四角い機械を異世界に持ち込んでですね――」
あれ?
何か違う?
天使さんが説明しているのは、鑑定やアイテムボックスじゃないぞ!
どうやら大ヒットした異世界転生アニメ『スマホ太郎』の説明をしているようだ。
「ふーむ。そのスマなんとかを、転生先の世界で使えるようにするのは、難しいのう……」
「神様でも難しいですか?」
「うむ。どうしたものかのう」
「でしたら、四角い画面が現れるようにしてですね――」
神様と天使さんで、勝手に話が進んでいる。
俺は慌てて話を訂正しようとした。
「いや! ちょっと違いますよ! 鑑定というのは、対象の情報を得る機能です!」
「情報が欲しいのか?」
「そうです! 情報です!」
ゴーン!
ゴーン!
ゴーン!
どこからか鐘が鳴った。
すると神様と天使さんの姿が薄れだした。
「おお! 今日の仕事は終わりじゃ!」
「えっ!?」
「あの鐘は、終業の鐘じゃ」
終業?
仕事終りってことか?
神様の世界でも、そんなのがあるのか!
「じゃあ、俺は?」
「安心せい。今、転生させるぞい。ほれ!」
神様が手を横に振ると、俺の体が足から消えだした。
「ちょっと待って!? 能力は!? お詫びは!?」
「任せておけ。適当にちょちょいのチョイじゃ!」
「そんな適当なんてヒドイ!」
俺は声をあげたが、神様と天使は笑顔で俺に手を振った。
「「お達者で~!」」
二人の声を最後に、俺は意識を失った。
■-------作者より-------■
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