大好きな悪役令嬢の侍女になったのでお嬢様は私が幸せにします!

藤宮ナイカ

第一章

第1話

「はぁ、やっぱりイザベラちゃん可愛すぎる……」


一人ベッドで仰向けになりながら、ゲーム機を掲げる。


一人暮らしと仕事にも少しずつ慣れてきて、ようやく自分の好きな事に使える時間が出来たので、早速御用達のアニメショップに行き、推している声優とパッケージの綺麗なビジュアルにホイホイされて始めた乙女ゲーム。


最初のうちは美麗なイケメン達と可愛いヒロインとのやりとりを、決して誰にも見せられないような、だらしなくニヤニヤとした表情で愛でながらプレイしていたのだが、途中で変化が起きた。


ヒロインを陥れようとするイザベラという存在が現れたのだ。


腰まで真っすぐに伸びる冷たいプラチナブロンドの髪と、深淵にも思えるようなミッドナイトブルーの瞳を持ち、周囲が息をすることを忘れてしまう程の美しさを持つ彼女は、王家にも匹敵する広大な領地と財産、軍隊を有する公爵の娘であり、王位第一継承者の王子の許嫁という高貴な立場で、敬意と畏怖を込めて『氷の姫』と呼ばれていた。


いやもうその氷の姫ことイザベラちゃんが可愛いのなんのって!

まずストレートヘアのプラチナブロンドにミッドナイトブルーの瞳なんてビジュアルが好み過ぎるし、衣装のドレスや制服も似合い過ぎ!女神か??この世の奇跡か??

あと、全てを凍てつかせるような冷たく威圧的な声色!ありがとうございます!!


ヒロインの攻略対象にはイザベラちゃんの許嫁でもある王子も含まれている。というかメインのキャラクターの位置にいる。


王子は飾らない明るいヒロインに惹かれていくが、それを知ったイザベラちゃんは嫉妬に狂い、ヒロインを陥れようとするが失敗し、ついには破滅という運命を辿る。


しかもよほど制作側に悪意ある人間がいるのか、イザベラちゃんはどのキャラのルートでも破滅から逃れられない。なんで??イザベラちゃんが何したっていうの??


そんな苦悩を抱えつつ、今日もイザベラちゃんを見たいがために、もう何度も回ったストーリーを繰り返す。


「どっかに隠しルートとかコマンドないのか!?せめてヒロインちゃんとの友情エンドとかさぁ!!もう私がイザベラちゃんを幸せにしてあげたいよぉ!!」


足をバタバタとさせて、叫んでみても虚しくなるだけで、画面の中にいる氷のように冷酷な表情の彼女に、私の声が、存在が届くことはない。


突然ザザ……というノイズが聞こえ、画面はイザベラちゃんを映したままフリーズする。


「えっ、何?急に壊れ……っ!!」


焦って起きあがろうとすると、強い光で目が眩む。


ベッドにはゲーム機だけが残り、『 NEW GAME 』の文字が点滅していた……。


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る