第3話:魔法をかけて

 それからしばらくして、王家のお城で舞踏会が開かれることとなりました。

 継母と姉達は煌びやかなドレスを着て舞踏会へ出かけましたが、エラは一人、家で留守番をすることに。


「はぁ……いいなぁ。舞踏会」


 綺麗なドレスを着て、素敵な男性と踊る。そんな妄想をしながら、エラは一人で踊ります。しかし、途中で虚しくなり、ため息を吐いて座り込みました。

 その時、ふと、エラは以前自称魔女の老婆からもらった杖のことを思い出しました。一度だけと言っていましたが、まだ一度も使っていません。


「……魔女さん、お願いします。私を舞踏会に連れて行ってください」


 エラが藁にもすがる思いで魔法の杖を振ると、目の前が煙に包まれました。そして、どこからともなく、黒いローブを着た老婆が現れました。あの時の老婆です。


「久しぶりじゃのう。お嬢さん」


「本当に魔女だったんですね」


「ほっほっほ。そうじゃよ。舞踏会に行きたいと言ったな?」


「はい。でも……持っているドレスはこれしかなくて」


 そういってエラが出してきたのはぼろぼろの水色のドレス。いじわるな姉にぼろぼろにされてしまいましたが、母から貰った大切なドレスなため、捨てられずにもっていたのです。


「これ、魔法で直せますか?私、どうしてもこれが良いんです」


「任せなさい。ほいっ」


 魔女がドレスに向かって杖を振ると、ぼろぼろだったドレスは一瞬にして新品のように綺麗になりました。エラは魔女にお礼を言って、ドレスに着替えます。再び魔女がエラに魔法をかけると、一瞬にしてメイクアップされました。


「どうじゃ?」


 魔女が見せてくれた姿見には、煌びやかなドレスに身を包み、メイクアップした自分の姿。


「これが……私……お化粧なんて初めてしました」


「元の顔が整ってるからあんまり変わり映えないがの」


「いえ、そんな」


「ふふ。綺麗じゃよ。エラ」


「えっ。どうして私の名前を……」


「魔女じゃからのう。さぁ、次は靴じゃな。ほい」


 魔女が魔法で出したのは、ガラスで出来た美しい靴。割れないという魔女の言葉を信じて恐る恐る足を入れます。靴はエラの足のサイズにぴったりハマりました。まるで毎日履いているかのような履き心地の良さでした。


「ヒールがあるのに歩きやすい」


「魔法の靴じゃからのう」


「凄いですね」


「ほっほっほ。わしの魔法はこんなものではないぞ。さあ、次は馬車を作ろうか」


 そう言って魔女は家の外に出ます。エラがついていくと、魔女は庭に大きなカボチャを置きました。


「かぼちゃ?」


 魔女がかぼちゃに魔法をかけると、かぼちゃはみるみるうちに大きくなり、かぼちゃの馬車になりました。しかし、馬がいません。どうするのだろうと思っていると、魔女はポケットからネズミを取り出して魔法をかけました。ネズミは一瞬にして馬に変わります。


「さぁ、エラ。お乗り」


「ありがとうございます」


 エラが魔女に手を引かれて馬車に乗ると、魔女は馬を走らせて城へと向かいました。

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