灰被りの少女と王女様

三郎

第1話:灰被りの少女

 昔々あるところに、エラという少女がおりました。幼い頃に母を亡くしたエラは、父と二人で暮らしていました。

 そんなある日、父が再婚し、エラには二人の姉が出来ました。しかし、再婚してすぐに事故で亡くなってしまいました。

 エラは継母と義理の姉二人と上手く打ち解けられず、いじめられる日々でした。掃除や家事を押し付けられ、灰被りのエラシンデレラとあだ名をつけられ、蔑まれ、エラはいつも泣いていました。

 そんなある日のこと、エラがお使いをしている時でした。座り込んで俯く老婆が視界に入りました。「大丈夫ですか?」とエラが声をかけようとすると、同じように老婆に声をかけた女性と声が重なりました。エラは女性と顔を見合わせます。老婆は言葉の代わりに、ぐうう……と腹の音で返事をしました。


「あら、お腹が空いていらっしゃるのね」


「あの、よければりんごを一つどうぞ」


 エラは迷わず、老婆にりんごを一つ渡しました。同じく声を掛けた女性も、ほぼ同時にりんごを一つ差し出しました。エラは思わず女性と顔を見合わせ、どちらからともなく笑い合いました。


「ありがとう。親切なお嬢さん達。お礼に魔法の杖をあげよう」


「魔法の杖?」


「うむ。実はわしは魔女なんじゃ」


 そう言って老婆は杖を取り出しました。


「っと……すまん。一本しかなかったわい……」


「それなら、こちらのお嬢さんに差し上げてくださいな」


「良いのですか?」


「ええ」


「では、お嬢さんに。困った時に振ってごらんなさい。一度だけ、お嬢さんを魔法で助けてあげよう」


「はぁ……ありがとうございます」


 エラと女性は半信半疑でお礼を言い、杖をポケットにしまいました。


「見つけましたよ。ステ——スピカお嬢様」


「あら。見つかってしまいましたか」


「勝手に私のそばを離れないでいただきたい」


「はぁい。ごめんなさいお嬢さん、わたくし、もう行かなくちゃ」


 またね。と、手を振り、スピカと呼ばれた女性は従者の男性に連れられ、エラと別れました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る