ゆめ

 ロートスジャムは至高の睡眠薬と呼ばれている。口にした者はただ眠るだけでなく、幸せな夢を見ることができるから。


 ロートスの夢の中で、エイコーンはお姫さまだった。

 悪いドラゴンにさらわれ、かっこいい騎士が助けに来てくれる、そんなお姫さま。


 まるで幼い頃に戻ったかのような、子供騙しの甘い夢。

 でも、それでいい。夢なのだから。


『姫、助けに参りました』


 悪いドラゴンを討ち果たし、かっこいい騎士がエイコーンの元に駆け寄る。

 逆光で顔はよく見えないけれど、間違いなくかっこいい。いや、なんだか少しだけ可愛らしいような気もする。


『まあ、そんなのどっちでもいいわ!』


 大事なのは騎士が姫を愛していることだ。


 騎士の顔が近づく。

 誓いのキスを前に、エイコーンは目を閉じた。

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