セントラル・ワールド
第一章 黒い流星
流星とはなんだろうか。流星とは空を駆ける一つの旅人。旅をする場所は違えど、人間と通ずる部分がある。ひとえに旅と言っても意味は少し違うのだが。
この世界もそうだ。ある意味で旅をしている。この世界は他の世界とつながる、【ゲート】によって構成されている。異世界がとても近い、そのために、いろんな文化が入り混じって世界自体が旅をしている。そうとも言えるのだ。この世界独特のものなど数えるほどしかない。
一つは俺や周りの人間。その身体に属性を宿した人間たち。まとめて属性使いと呼ばれる。普通の人間では出せないような力や、身体能力を持っていたりする。
もう一つは洞窟で2度見せたソードスキルなどのスキル・ジョブの存在である。ジョブと言ってもおそらく異世界にいる人々が想像するようなものではない。ジョブはその人物を縛るようなものではない。複数所持も可能で、ジョブそれぞれの専用スキルを習得するために必要なものだ。武器種によって技が違う、というのと同じ感覚でいいかもしれない。武器を持ち変えればまた別のスキルが使えるといった感じ。まぁ、ジョブには切り替えは必要ないが。
ヘトヘトになりながら歩いていると、目の前に斜光が射す。出口のようだ。腹が減った。家に帰る前にどこかで食事をとってもいいかもしれない。毎日自炊は疲れる。めんどくさい。やりたくない。嫌だ。嫌だ!!
特に何事もなく洞窟から出ると、自宅のある市街へと歩き…
「何やってんのお前」
そう、後ろからものすごい気配を感じるのである。しかも、その感覚は間違いなく知り合いである。
俺の後ろには仲間の銃使い、凪野氷河がナイフを引っかけたパチンコを真顔かつ無言で構えているのである。この男はただの銃使いではない。アルヴァーン王国の直属特殊部隊α7の隊長をしている。そんな腕を持つ男が俺の後ろほぼゼロ距離でナイフの発射を用意しているのである。
「え、スゴお前。街中でこれ、やだこれ。すごこれ。お前すごいな。」
後ろから氷河のふざけた構えを受けながら、いつものように脳死で会話する。
「ゼクル。お前、この間話したこと覚えてるか?」
「いやごめんお前の行動のせいで何も思い出せねぇわ」
「インビジブル東2区で起きた薬物の密売一斉検挙だよ。あのときに数人の属性使いを逃した。あいつらの動向が追えないってさ」
「いやだから、ひとの話聞いてる? お前がそのパチンコ構えてるから話入ってこねぇの」
「・・・昨日発見されたらしい」
その一言を聞いた瞬間に俺の背筋を何か冷たいものがなぞっていった。発見とは基本的に捜索対象が死亡した状態で見つかったときに用いられる。生きている状態なら、『救助』や『確保』が使われる。つまり。捜索を担当していた憲兵団よりも早く奴らを発見し、殺したものがいるということだ。
「明日時間あるか」
と氷河。その声はいつになく真剣な声音をしていた。
翌日。四月一三日。俺は、行きつけの喫茶店に顔を出していた。俺の家と同じく、インビジブル南2区にあるこの喫茶店では、隣に鍛冶屋が併設されており、この鍛冶屋ももれなく行きつけである。また、この喫茶店には名物がある。
「マスター、アイスラテ」
椅子に座りながら注文を済ますと、あたりを軽く見回す。まだあれは来てないようだ。
今日は俺の愛剣のメンテが終わる日である。俺の剣は少し特殊なため、メンテに時間がかかる。一週間前からのメンテだが、通常の剣でここまで長引くことはないはずだ。どれだけ混んでいても長くて2日ほどで終わるはずだ。
その時、ドアの鈴がなった。反射的にそちらを向いて、大きくため息をつく。
マスターにアイスコーヒーを頼んで俺の横に座った痩せ型のその男はカリバー。この国、アルヴァーン王国の国王である。なぜこんなところでコーヒーを飲んでいるのかは不明である。
「ゼクル、君に頼みがあるんだけど、いいかな」
「なんだ帰って仕事しろ」
「王宮の警備に来てほしいんだよね。一六日に」
手厳しいとかそういう問題ではないのである。
それと同時に、滑り込んできた資料を見ながら王宮の警備状況を頭の中で再現する。全体指揮を執っているのは近衛騎士。そこに協力するのが騎士団と憲兵団の団員達。騎士団団長のライトがいるなら警備はそれほど問題はないように思える。問題点があるとするならそれは…
「属性使いの数か…」
「さすが、そこに気付くんだね」
この国には前述した通り騎士団と憲兵団が存在する。同じような組織形態をしているが、彼らが取り締まる対象に違いがある。騎士団は『属性使いによる犯罪者』の確保を基本としている。それに対して憲兵団は、『通常の人間の犯罪者』の確保を行っている。この性質上、騎士団はほとんどの団員が属性使いで構成されているのに対して憲兵団は人間がほとんど全員だ。つまり、本来王宮の警備に向いているのは、どちらかといえば騎士団なのだ。
「憲兵のほうが人数が多いのはなんでだ?」
「人員、足りないらしい、単純に」
なんでそんなことになっているのかは知らないが、人員が足りないのであれば解決策は増やす以外にはない。俺のところに来たことも頷ける。しかし。
「他の奴らには声かけたのか?」
「氷河くんには声かけたよ」
「どうだった?」
カリバーは少し顔を曇らせる。だめだったのか、と思っていると、しばらくしてカリバーが再び口を開いた。
「かわいい子、紹介しろって…」
「…あいつすげぇな」
「どうしようかな…」
「いや紹介してやれよ。お前の命のためだぞ」
喉の乾きと氷河への呆れをラテとともに飲み込むと、口を開く。
「俺の時給は高いぞ」
その後、鍛冶屋から声がかかり、俺は煤けた扉をくぐる。埃っぽさと微かな焦げた匂いを漂わせるその空間。中央には大きなカウンター。その上に丁寧に置かれた一振りの剣。黒一色のその簡素なデザインの剣は俺の愛剣であり、世界の中でも強力な分類に入る〈レジェンド武器〉の一つ、電龍刀である。
レジェンド武器の特徴として、その武器特有の能力を有していたり、恐ろしいほどの攻撃性能を持っていたりなどが挙げられる。この電龍刀もそうである。この剣のメンテが一週間もかかるのはこいつの重さ故だ。片手剣でありながらも、200kgを少し超えるこの重さの剣であるが、俺は属性の力を開放している状態であれば片手で振り回すことができる。力の開放。つまり《完全武装》している状態でなければ、持つことすらできない。レジェンド武器との契約はしていてもこの状態である。
契約には二種類ある。一つが《相互契約》、もう一つが《一方契約》。《一方契約》ではこのように、完全に扱えているとは言えない状態なのである。
仕方なく武器格納スキルを使ってその中に収納する。
格納とは言っているが、異空間に格納しているわけではない。この世界の根幹をなす『ゲート』によって離れた空間に格納しているに過ぎない。確かに超高度な魔法使いであれば、異空間を作ってそこに物を格納することもあるらしいが、あいにく俺は大魔法使いでもなければそのへんの魔法使いにすら魔力は負ける。このゲートを使った格納であれば練習すれば誰でも使えるため、こんな俺でも重宝しているというわけだ。
俺は電龍刀を格納すると腰にかけていた剣を鍛冶師に渡す。この剣は一時的に預かっていた剣だ。この店の新作の試作品なんだそうだ。メンテに出している間、代わりにこのようなモニターのようなことをしている。この店の剣はいいものが多い。
「これもすごい剣だな」
「そうかい。何か気になったところはあるかい」
「うーん、やっぱりあれかな。鋭さを追求してるから、重さがあんまりしっくりこないところかな」
200kgの剣を振り回している俺が言うことではないかもしれないが、あくまで一般的な話をしているつもりだ。実際に非武装時に持ち上げてみたりもしたので間違いはない。
「んま、そうだろうなァ…ちょっと考えてみるわ!」
「あぁ」
料金は先払いしているため、そのまま扉をくぐって出ようかと考えていたが、そこで店主に呼び止められる。
「そういや、さっき天くんが来たよ。またすぐ戻るって言ってたけどなァ」
天と書いてそらと読む、俺の仲間であり弟子みたいなやつだ。弟子とは言っても弱いわけではない。この国では上位十位には入る刀の使い手である。俺の戦術を教えているため、刀としての本来の戦い方以外の動きもする。それも彼の強さの一つなのだろうと思っている。
「ん、まじか。ちょっくら待ってみる」
そう言い、近くのベンチに座ってスマホをいじる。最近はとあるRPGにめっぽうハマっている。特にこの警察的組織の副長がお気に入りだ。めちゃくちゃかわいい。推ししか勝たんな、やっぱり。
その時に扉がきしむ音が聞こえた。ふと見やるとこのむさ苦しい鍛冶屋では目立つ白い翼が見えた。
「むさ苦しいってなんだ!」
「心を読むな!」
「おま、まじで言ったのか!? まじで心の中で言ったのか!?」
と、店主と意味のない言葉の応酬をしていると、横から天本人が入ってきた。
「お久しぶりです。ゼクルさん。ずっと探してたんですよ」
「俺を? なんで?」
「東2区のことで。氷河さんから聞いてるとは思うんですけど」
「あぁ、あれな。え? 天も来るの?」
「はい。氷河さんに頼まれて」
氷河が自分が中心となって動くことは少ない。それほど危機感を感じているのだろうと思う。しかし、俺はその元になった戦闘を詳しくは知らない。ある程度の事情はあのあと聞いた。氷河曰く、問題の奴らは東四区の倉庫に隠れており、そこを俺たちで叩くつもりらしい。ちなみに人数は未定と言われたが、どのぐらい集まるのだろうか。正確な人数はわからないが、よもやα7もある程度の人数すら動員はされないだろう。これは氷河と俺達が勝手に決めた戦闘だ。多分。
その後、俺と天は、鍛冶屋を出て、東四区に向かった。東四区につくとすぐに氷河と合流した。したのだが。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「ん? どしたのお前ら」
「いや、それ…」
と天。やはり同じ感情だったらしい。
氷河の腰には三つの無線機が差さっている。それはいつものことなのだが、そのうち2台から片耳用のイヤホンが伸びており、それぞれの耳についている。二台とも起動状態であり、その無線機はα7の専用機だったと記憶している。つまり…
「氷河、お前α7動かしてんのか…」
「あぁ。政府から降りてきた仕事だし」
前提が違った。政府レベルの仕事だったとは。というか事前に言えよ。という言葉をすんでのとこで飲み込む。おそらく天に気を使ったのだろう。天はまだ自分に自信がない。事前に言っていれば天は今回の協力をしなかった可能性もあるし、参加させて自信をつけさせようとしているのだろう。
「…まぁ、やることは変わらないか」
「…ですね」
俺たちは、氷河の案内で倉庫へとたどり着いた。が、
「…静かすぎるな」
横で同じことを思ったらしい氷河がつぶやく。
「だよな…とりあえずぶち込んでみるか」
そう言いながら剣を出そうとしてから気づく。
「…なぁ、仲間は??」
「・・・・・・」
引きつった笑み。あぁ、これはまずいですよ!
俺は天と頷きあって走り出した。このぐらいの距離になれば、俺の索敵スキルで相手の位置と武装種類はみることができる。
《完全武装》した俺達は、走りながらスキルを発動する。俺が発動したのは《アサルトブレード》。斬撃攻撃力強化のスキルだ。対して天が発動したのは《光翼の加護》という、運動性能強化スキルだ。俺のスキルは自分用。天のスキルは味方全体。誰か俺を殺してくれ。
俺は空中に手を伸ばす。完全武装したことで黒一色のロングコートの袖を通った右腕に、収まるべく飛んで来たのは、黒い剣。俺の愛剣・電竜刀である。鞘に入ったままのその剣の柄を握る手に力を込める。走りながら索敵スキルで周囲を走査していると、左前の扉から飛び出ようとしている影を見つける。
その瞬間に俺は右足に力を込めて大きく前方へジャンプする。それと同時に扉が開き、四人の剣士と三人の銃使いが飛び出てくる。反射的に俺は剣を前に構えた状態で一番前の剣士に突進を仕掛ける。大剣でパリィをしようとしてくるが、この剣の連撃を防ぐことはその重い剣では不可能だ。体重をかけた連撃で相手を大剣ごと吹き飛ばすと、背筋に悪寒が走り、振り返りながら剣を縦に構えると、その刀身に三発の銃弾が命中し、一発の銃弾がコートの裾に穴を開けて後方に飛んでいく。天は逆方向にいるはずなので当たらないはずだ。と、思いきや…
「…シッ」
俺の後ろから右側を通って高速で通り抜ける白い影。その左腰から高速で振りあげられた長刀。天とその愛刀『天空刀』だ。その刀にまとわる朱色の光は刀用単発技・【仙華刃】と呼ばれるスキルのはずだ。天の使うスキルは少し特殊な系統なため、他の刀使いが同じ技を使うところを見たことがない。この技は何度見ても、
ーーーーーーー軌道が、見えない。
刀の切れ味を完全に活かしたその斬撃は斬り上げであるのに、なぜか2人の銃使いを吹き飛ばした。どんな軌道を描けばそんなことができるのか。何度見ても解明できない。軌道が見えてないのだから。しかし、天の技に関心している場合ではない。俺たちの目の前にはまだ三人が立っている。まぁ、それも一瞬だと思うのだが。
攻撃後の天の後ろに颯爽と割り込んだのはサブマシンガンを持った水色の髪。数発分の発射音と同時に相手の三人ともが倒れる。一瞬の出来事で、撃たれた本人達も状況がわかっていないだろう。氷河は指先で銃をくるくる回すと、腰のホルスターに収めた。俺も同じ癖がある。剣を指先でくるくる回して肩に担ぐと、周りを見回す。
「終わりか? んなわけないよな?」
「来るぞ。構えろ。」
と氷河。あいつの索敵スキルはそこまで高くないはず(言ってしまえば俺のほうが高い)だが、あいつには何かがわかるのだろうか。たまに俺よりも先に敵の存在に気付くことがある。今回も氷河が言った通り、この狭い道の両側から、大勢の剣士が迫ってきた。横では天が手を少し震わせている。武者震い・・ではない。怯えと迷いとが見える。呼吸もどこか荒い。天は自信がないとは言ったが、それには理由がある。それを説明するにはこの世界のことをもう少し詳しく説明しなくちゃいけない。
この世界にはゲートがある。ゲートがあるということは、異世界がすぐ近くにあるということだ。異世界がすべて友好なところではないことは誰でもわかるだろう。そう、侵略というものはどこにでもある話だ。
アルヴァーン首都インビジブルの郊外に突然現れたゲートは巨大だった。ゲートは自然発生することもあるが、その例は極端に少ない。その少ない一例はとても奇妙で、現在でも謎が多い。自然発生したゲートは基本的に少しの時間は開いたままだが、少し経てば閉じる。そのゲートはずっと開いたままだった。そこから異常事態を確認したアルヴァーン政府はそのゲート周辺を立ち入り禁止にし、調査を開始した。しかし、何度目の調査隊だったか。初めてゲートの向こう側を調査しようとした彼らは帰還しなかった。ゲートの向こう側で災害に巻き込まれた可能性があるとし、再び調査隊を派遣。帰還せず。
災害が続いているのか、向こう側が友好的ではないのか、どちらにせよ一度向こうに渡れば帰還できないものと見た政府は、当時の制度を利用する。それは死刑囚の中で戦闘能力が高い者を危険な任務につかせ、その結果や日頃の人格面を鑑みて刑を軽くする制度だ。その制度で四人の属性使いが送られた。その属性使い達が向かった先で見たのは、火を放たれた街と、略奪するために人間を探す人間。そして、
そして、小さな子供を守り、白い翼を返り血に染めながら戦い続ける一人の少年だった。それが天だ。
天はその後、救援に来た属性使いによって救助された。そのときの天の見ていた光景は想像できないが、大勢の敵を目の前にすると、手足が震えるようになってしまった。その時のトラウマは想像できないほどのものがあるだろう。だが、彼はあのときから今まで戦い続けて来たのだ。絶望的な状態でも戦い続けて来たのだ。どんなに傷ついても、守るための刀を降ろそうとしなかったのだ。そんな彼のポテンシャルを見た上で、克服できるかもしれないと思って来た俺が。そばについてきた俺が。いや、諦めるのは勝手だ。だが、それでも諦めたくはない。俺の勝手なエゴだ。
俺は静かに天の前に立つ。
「立て。後ろにも下にも道はないぞ」
「・・・・・」
「前を見ろ。振り向いても暗いだけだ。お前の後ろに見える景色なんてない」
「…はい」
「その刀、染めてみろ。赤くなる前に、先に染めろ」
「僕の色を見つければいいんですね」
「あぁ。行くぞ」
「はい」
天はいつの間にか俺の横にいて、刀を水平に構える。片手で刀を水平に持ち、半身になるこの独特な構えは天が使っている『輪廻剣術』の構えだ。その刀に濃い青の光が灯り、高音を放ち始める。輪廻剣術の上位技・【#神螺旋天道斬__しんらせんてんどうざん__#】だ。俺も天の横で剣を構える。ブーイングするような角度で剣を構えると、刀身に赤い光が点く。片手剣用ソードスキル・【フレアネイル】。
同時に飛び出した俺と天がソードスキルの待機状態を解除し、剣を握り直すと同時に後ろから耳を疑うような数の銃声が聞こえる。この銃声はすべて氷河のものだ。そのうち何発かが俺と天の間をぬって敵に命中する。何度見ても驚く恐ろしいほどの命中率である。しかし、驚いてばかりではいられない。
天が急加速に入り高速の連撃に移行したタイミングで俺も剣を振り始める。もはや光ではなく、赤く#滾__たぎ__#る炎を纏った剣を身体をひねりながら振り回し、回転斬りを放つと、その慣性を保ったまま、右からの斬りおろしを三発打ち込む。
俺のスキルが終わったときにはまだ天の連撃は続いている。右からの水平斬りから打ち上げ。そこから更に繋がる柄での打撃を当て、回転斬りを放つ。相変わらずの速度と精度はもはや美しさまで存在する。
その瞬間に俺と天の間に飛び入った氷河がライフルを乱射しながら前線へと突っ込んでいく。並の銃使いなら止めるところだが、やつにいたってはそうではない。ライフルを左手に預けると、右手で腰のホルスターからハンドガンを抜き撃ちする。親指の先と中指の腹で支えながら左手一本でライフルを撃つと、反動でライフルは後方へと飛んでいき、迫っていた剣士の腹に当たる。あそこまですべて計算通りなのだろうか。恐ろしい奴である。
そのタイミングで少し離れたところから戦闘音が聞こえ始める。おそらくα7の隊員だろう。氷河が連絡したのだと思われる。やはりこいつは化け物だ。
その時索敵スキルに反応があった。とても強い気配だ。
「天、ここは任せていいか?」
「はい。お願いします」
この返答は不自然かとも思えるが、天は俺がなぜここを離れるのかをわかっている。だからこんな返しができるのだ。
俺は無理やりに剣を振り、道を作ると、一人その場を脱出した。一瞬ヒヤッとはしたが、相手のレベル的に彼らがやられることはない。そう判断した。一つ離れた場所にある倉庫に問題の強力な力を感じる。おそらくここに、今回の核になった奴がいる。ゆっくりと倉庫の扉を押す。重い扉が開くと同時に視線が集中していることを感じる。迎えるつもりか。
扉を開けたその眼前には空に近い倉庫とその中心にいる主犯格であろう大剣を持つ男。そして
そして、俺の相棒がいた。
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