#21 八木はお風呂を覗かれたい





 この日の夕ご飯は、とーちゃんが急な出張で帰って来れなくなり、3人で食べた。


 八木が作った筑前煮と栗ごはんは普通に上手かった。



 八木とかーちゃんは、一緒に料理をしたお蔭か、会話も大分砕けた感じになっていて、八木も徐々に猫を被るのを止めている様だった。


「栗山くん栗山くん!栗ごはんのおかわりどうですか? 山だけに」


『いや、もうお腹いっぱい』


「え~、折角美味しくできたのに、もっと食べてくださいよ~」


『そう言って既に3回もおかわりさせられてるんですが』


「お母様の味と違うからって、わたしの作ったご飯食べないだなんて、そんなの酷いわ! わたしだって栗山家の嫁として頑張ってるんですよ!」


『コラ八木、勝手に栗山家を名乗るな!』


「あらいーじゃないの。カンナちゃん、いつでも栗山カンナって名乗っていいわよ?」


「本当ですかお母様! どうしましょ!? 栗山カンナ、略してクリカンですわね!」


『お前ら、フリーダムすぎるだろ!』





 食事後、フロ入るために一旦俺の自室に行って、八木に寝間着代わりの服を貸そうとしたら


「わたしコレ着ます! コレに決めました!」って言って、俺の中学ジャージをタンスから引っ張り出した。


「コレ見て下さい! 胸に”栗山”って書いてありますよ! コレ着たら名実ともに栗山カンナですよね! 今日からクリカンって呼んで下さいよ!」


『やだ』


「え~なんでですか~ つれないな~」


 コイツなんでこんなに楽しそうなんだろ


「ところでお風呂と言えばはやっぱり、お背中流しましょうか的なイベントをご所望ですか?」


 はぁぁ

 もう何も言い返す気が起きないんだけど・・・


『とりあえず、お風呂は八木が先に入れ』


「え~なんでですか~ 一緒に入りましょうよ~ つれないな~」


『もうマジで今日は疲れたから、さっさと風呂入って休ませてくれよ・・・』


「しょーがないなー あ!でも私がお風呂入ってる時ちょっとくらいなら覗いてもいいですよ? うふ」


『いいから風呂入れ!』


「ちぇー つまんないのー」





 ようやく八木はお風呂に行ってくれて、今日初めて一人になれた。

 一人になった途端、疲れがドっと出てきて、いつの間にかウトウトしていた。


 何分たったか分からなかったが、八木がドカドカやってきて扉ガバって開けて部屋入ってきたと思ったら


「なんで覗きに来ないんですか! ずっと待ってたんですよ! お蔭でのぼせちゃったじゃないですか!」


『行くわけねーだろ!』


 やっぱり八木はバカだった。




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