第18話 リヴァイアサンの水上ロデオ

――――ギャオオォォォォォォン!


 リヴァイアサンの水上ロデオの会場へと向かった俺たちは、まだ会場の外だというのにドラゴンの鳴き声があたりに響いていた。


 ここの闘技場はかなり広く、競技が行われる真ん中のエリアは全て水で埋め尽くされている。

 まるで大きな湖のようなエリアをぐるっと一周観客席で覆っていた。

 


「どひゃ~! めちゃめちゃ広いな。向こう側の観客席が見えないくらいだぞ」


「まるで海だね! 海!」


「天気も良くてなんだか気持ちいいですね~」


 まるで海水浴場にでも来たような気分になる俺たちだが、ここでは命を落とす者も少なからずいるギャンブルの会場だ。


「あれがリヴァイアサンか。なかなか狂暴そうだな」


 七体のリヴァイアサンが胸にそれぞれの番号札をつけたゼッケンを装着していた。

 リヴァイアサンは青いドラゴンの見た目で、ヒレは先に行くにつれて赤色になっており、まるで蛇のような見た目をしている。


 そのリヴァイアサンが水上で頭を出しながら、まるでダンスを踊っているかのように暴れ狂っていた。

 頭の上にはそれぞれ人が乗っており、振り落とされまいと必死だった。



「俺たちは今からこれに乗るのか……なんか怖くなってきたな」


「京谷のスキルがあれば大丈夫なんじゃない? ルールに邪魔してOKって書いてるし、京谷が動き読んであたしらが攻撃役に徹するよ!」


 自信満々で作戦を提案するカーヤだったが、彼女は大事なことを一つ忘れている。


「お前、何で攻撃するつもりだ?」


「……」


 図星だったのか、カーヤは肩を落としわかりやすく落ち込んでしまった。


「京谷さん、ひどいですよ」


「あ、あぁすまん。期待してるぞカーヤ」


 適当に励ましつつ、俺もルール表を読むことにした。



『リヴァイアサンの水上ロデオ』

 荒れ狂うドラゴンの上で最後までしがみついていられる者は誰だ!?

 相手チームを邪魔してももちろんOK! とにかく自分らだけが生き残ることを優先したまえ!

 ただし、落ちる時に不幸にも口の中に入ってしまったら、生きては帰れないかもしれないぞ?

 優勝者には10万ペリス! それ以外は大人しく家に帰れ!


 参加料5000ペリス 賭博参加随時開催中


 ※水上に落ちた者は救助されます



「チームで参加できるのか。ちょうどいいじゃないか」


 俺はこの三人でチャレンジ出来るということを知り、嬉しく思った。

 俺たちは参加するために受付に行き、前書いたような用紙に三人分のステータスとスキルを記入した。



――――


 『長谷川京谷はせがわきょうや

 レベル7 力21 持久力1 魔力41 運気1 スキル エンチャント付与"炎" 投擲


 『リリア』

 レベル11 力3 持久力5 魔力50 運気10 スキル 獣化


 『カーヤ・スカーレット』

 レベル20 力5 持久力30 魔力60 運気120 スキル 魔法消火フェイル 魔法障壁マジックシールド魔法反射マジックリフレクター


――――




「お前なんで持久力になんて振ってんだ?」


「魔法使いも意外と体力使うのよ?」


 記入しながら気づいたが、カーヤは運気にステータスを振りまくっている。

 きっとカーヤの事だからとりあえず運に振りまくっていたのだろう。



「よし、これで十分だな」


「京谷さん、投擲ってスキルいつ覚えたんですか?」


 リリアは知らないスキル名を見て疑問を持っていた。

 彼女はあの時寝ていたから俺が覚えていたことを知らないのだ。


「リリアが寝てるときに覚えた。俺は攻撃魔法をまだ覚えられないみたいだからな。生活スキルなら覚えられたからこれを有効活用しようと思う」


 ニヤリと笑う俺に、リリアは不思議そうな顔をしていた。

 そう、俺には作戦があった。攻撃魔法が使えないなら疑似的に攻撃魔法を作り出してやろうと考えたのだ。


「これで頼む」


 俺は受付のおっさんに用紙と参加料の5000ペリスを渡した。

 不愛想に受け取ると、機械の中へと通して俺らのエントリーを済ませた。


「じゃ、君たちは次の次の回ね。君たちは七番だから、あっちの道から書いてある番号の道に進んでね」


 おっさんが指さす方を見ると、参加者入り口と書かれた先に七つの別れ道があった。

 あそこからそれぞれのスタート位置へと移動するのだろう。

 俺は作戦を実行するために、一人で買い物に行くことにした。



「悪い、まだ時間あるみたいだから俺ちょっと買い物いってくるわ。二人はここで見物でもしといてくれ」


 リリアは着いてきたそうにしていたが、俺の考えた秘策は直前まで内緒にしておこうと思っていた。

 闘技場出口の方に向かう俺を追いかけようとするリリアを、カーヤは止めてくれていた。


「は~いリリアちゃ~ん。お姉ちゃんと一緒にドラゴンみまちょ~ね~」


「もう! このデカイの邪魔です!」


 赤ちゃん言葉になりながらリリアを抱っこするカーヤだったが、リリアはそのデカい胸を憎たらしそうに押しのけていた。


(さて、武器屋に行ってさっさと物資を調達しないとな)


 俺は残りの所持金を片手で確認しながら、急ぎで闘技場の外へと出ていった。

 

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