第2話 ステータスとか存在しちゃう?
ひとまず門を通ることに成功した俺は街の異様さに唾を飲むこととなる。
街中の至る所でギャンブルが行われているのだ。見た事のあるカード系や、端っこの方ではみすぼらしい格好の二人が殴り合いをさせられ、それを大勢の人が取り囲み金を投げあっている。
街の奥からはゴングの音や、この世のものとは思えないドラゴンの咆哮のような音も聞こえてくる。
「すっげぇな……ここには法律ってもんはないのか?」
やりたい放題やっている街の様子や見たことのない生き物を見て驚いていると、後ろからドスの効いた低い声が聞こえた。
「よぉ、見ねえ格好だなぁ。お前も闘技場に参加しに来たのか?」
驚いた。とてつもない体格の大男がそこにはいた。現世なら間違いなく変質者で職務質問されていそうな格好だ。ワイルドとでも言っておこうか。
(なんだこの体格!? どうやったらこんなに腕が太くなれるんだよ!)
俺は驚きながらも、いたって冷静に答えた。
「あ、あぁそうだ。かなり外れの方から来た」
「そうか、まぁがんばれよ~!」
随分と気さくな人間がいたもんだ。
俺の住んでた日本ではなかなか見られる光景ではなかった。
周りの様子からしても、ここか明らかに日本ではない。
いたるところで当たり前のようにギャンブルが行われている様子はなかなかに異常だった。
「もしかして、これって異世界転生ってやつなのか……? なんで俺なんかが!?」
なぜ俺が異世界に飛ばされたのかはわからない。
しかし今はこうして異世界にいる。
俺はそんな状況を受け入れ、この街を散策することにした。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
しかし、改めて街をよく見てみると、頭に耳が生えている人や尻尾が生えていたりする人間がいる。獣人ってやつだろうか。その獣人達が昔懐かしい商店のような、その場でお会計をするような八百屋で赤い果実を買っていたりする。
「これでもう驚かない自分が嫌になるぜ」
段々とこの世界に慣れてきてしまっている自分が怖い。
「ひとまずはこの街の情報屋みたいな所に行ってみるか」
異世界といえば情報を提供してくれる場所があるはずだからな。俺はゲームでそういう類のものもやったことがある。
俺は観光気分で街を散策しつつ、情報を仕入れられそうな酒場らしき場所へと到着した。
――カランカラン……
中に入ると周りには老若男女いろんな人がいる。
ムンムンとした活気のある酒場の中では至る所でギャンブルが行われている。酒場ということもあり、ビールのような物を飲みながらやっている物も多い。
(そんなに酔ってちゃイカサマされ放題じゃないのか?)
俺はギャンブルに詳しくはないが、一応ゲームでそれなりにやっている。
イカサマなんてものはネットの動画で見たくらいの知識しかないがな。
そんな風に周りを見ていると、横から女性の声が聞こえた。
「いらっしゃいませー!」
かなり胸のデカい、俺のいた世界だったら間違いなく引っ張りダコになりそうなスタイルの受付嬢が笑顔で俺に話しかけてきた。
「見ないお顔と恰好ですねー? 闘技場トーナメントの参加者ですか?」
「あ、あぁ。そうです。でも今はひとまずは観光かな」
「そうなんですね!ゆっくりしていってください!」
俺は焦りのあまり適当に答えてしまった。
まぁ問題はないだろう。
俺の返答を聞くと受付嬢はそそくさと仕事に戻っていった。
(そうだ、もしここが本当に異世界なら、ステータスなんてものがあるんじゃないか?)
もし、この世界が俺の居た世界と違うのならば、ステータスなどのパラメーターが存在するかもしれない。
そう思った俺はスタイルの良い受付嬢に再び話しかけることにした。
「すみません、この世界ってステータスとかあったりしないかな~なんて……」
俺は頭を掻きながらそう言った。
明らかに不審者である。
もしステータスが存在するのならば、知らないはずがない。
そんなよくわからない質問を受付嬢は嫌な顔一つせず、笑顔で答えてくれた。
「ステータス……ですか? それでしたらあちらの水晶に手をかざしていただけると見れますよ。もしかして初めて登録されるんですか?」
「あはは、そうなんですよー! いやぁ参ったなぁ」
俺はひとまず新米冒険家だということにしておいた。
受付嬢が指の刺す方向には煌々と輝く水色の水晶が見える。違う受付では他の冒険者らしき人がその水晶の上に手をかざそうとしていた。
こんな水晶めちゃめちゃ高値で売れるんじゃないか? そう考えてしまう俺はまだ価値観が現実離れできていないことに気がついていなかった。
「では、俺も失礼します」
俺は少しへっぴり腰になりながら手をかざすと、水晶は光り輝き俺の体の周りを光で取り囲んだ。
「おぉ……」
すると水晶の中に文字が浮かび上がった。
ーーステータス鑑定が完了しましたーー
レベル1 力1 持久力1 魔力1 運気1 スキル 未来予知
「ありゃ~……今までギャンブルとかやってこなかったんですか?」
受付嬢は口元を手で押さえ、やっちゃいましたねというような表情で水晶を覗き込む。
ゲームで例えると、オープニングが始まってすぐの状態のようなステータスだった。
(うおおおおおいなんだこりゃああ! せっかく異世界転生したってのに俺こんなに弱いの!? 転生っていったらめっちゃ強くて無双するんじゃないの!? ってか未来予知って何!)
俺はあまりのステータスの低さに頭を抱え落胆した。
俺の知ってる異世界転生とは全く違う、あまりにも弱弱しいものだ。
「あ、あぁそうなんですよ。……なんか周りで皆ギャンブルやってますけど、流行ってるんですか?」
俺は今一番気になっていることを聞いてみた。
すると受付嬢はまた笑顔で俺に一から説明してくれた。
この人は女神だろうか。
「本当に何も知らないんですね。面白い方ですね。こほん、この国ではギャンブルが日常で当然のように行われていますよ。例えば値引交渉や、お金を稼ぐのもギャンブルで解決できたりしちゃいます。レベルを上げる時は、ギャンブルで勝ったり肉体労働や狩りで上げられるので、頑張ってくださいね」
「ほうほう……」
受付嬢は身振り手振り丁寧に説明してくれながら、ポケットからよくわからない茶色い紙を俺に差し出してきた。
「わかりました。ありがとうございます」
受付嬢に礼を済ませて仕事に戻るのを確認した後、俺はその場を動き出した。
(なるほどな、もうこれは完全に異世界転生だ。もしかしたらハーレムとか築けちゃったりすんのかな!? うっひょ~楽しみ~!)
俺は一人でガッツポーズをしていると、周りが俺を不審者を見る目で見ていたので、俺はひとまず酒場の隅っこへと移動した。
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