強襲
「みんな急いで逃げるんだっ!」
寝床に入って眠っていたヨシムを起こしたのは、族長の悲鳴にも似た怒声だった。
ただならぬ事態が起こっているのはヨシムにもすぐ理解できた。彼は一瞬のうちに寝床から抜け出し、夜の森を駆け巡った。何から逃げているのかを理解する余裕など無かった。ヨシムに出来ることはただひたすら駆け続けることだけであった。
一族と離れ離れになって二度と会えない可能性もあったが、それを気にしている状況ではなかった。
どれくらいのあいだ走り続けたのであろうか。ヨシムの息は完全に上がっており、これ以上走ることは困難を極めた。しかし、これだけ離れればさすがに大丈夫だろう。そう思った瞬間、轟音とともにヨシムの体に鋭いものが突き刺さった。
ヨシムは鋭い痛みを感じながら意識を失った。
まぶたに当たる朝日の明るさにヨシムは目を覚ました。てっきり自分は死んだものだとばかり思っていたが、どうやら眠ってしまっただけらしい。しかし、視界が開けてくると同時に、ヨシムは恐怖心に包まれることになった。目の前にはヨシムがいまだ見たことの無い種族が大勢いた。
(これが、異邦のモノたちなのか?)
どうやら自分は異邦のモノたちに拉致されたのだと察した。周りを見渡してみるが、どうやら一族のものは一人も居ないようだ。犠牲になったのが自分一人で良かったという安堵感、そして一族の中で自分だけが不幸な目にあってしまったという悲壮感、そうした相反する感情がヨシムの心を深く傷つけた。
(僕はこれから酷い目にあうのだろう……)
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