ザナドゥ
戸画美角
狩りをする一族
「またやられたか……」
一族の長はそうつぶやいた。
一族の中でも若い少年であるヨシムは、その悲惨な現場を目の当たりにして、怒りや悲しさよりもむしろ圧倒的な虚無感に包まれて呆然と立ち尽くしていた。
その日は朝から一族で狩りに出かけていた。
幼いヨシムにとって「狩り」は好きなものではなかった。生きていくためには仕方のないこととはいえ、他の生物を傷つけて命を奪うという行為は、まるで自分自身を傷つけているようで心が傷んだのだ。
「私も小さい頃はそう感じていたこともあった。しかし、そのうち慣れていくから心配することはないんだ」
ありきたりな言葉ではあるが、彼の両親はそう言ってヨシムを諭した。
ヨシム自身も理性的には十分に理解していた。自分が生きていくためには他の生命を食す必要があること、そしてそれは自分たちだけではなく世界全体がそのような仕組みで動いていること。ただ、幼い心がそのことを必然と受け止めて流せるほどには育っていないというだけのことであった。
その日は晴天で、絶好の狩り日和であった。狩りの成果は上々で、一族は順調に獲物を見つけては仕留め、家への帰路につく頃には10匹近い獲物を収穫として手に入れていた。
しかし、家が近づくにつれてヨシムは妙な不安感をいだきはじめていた。それは一族の他の者たちも同様のようで、皆険しい表情を浮かべていた。
彼らの住処は、ほとんど跡形もなく消え去っていた。
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